怪談No.03 大人の腕の数
自分の体験する怖い出来事は当時は何も感じることはなく、今考えると怖く感じるものが多い。
今回はそんな話の一つ。
保育園に通ってた頃の話。
保育園では先生が数遊びを教えていた。
数遊びの内容は先生が自分の身体の一部を指差して、その名前と数を園児全員に答えさせるというもの。
例えば先生が目を指すと
先生「ここは?」
園児「目!」
先生「いくつある?」
園児「2つ!」
というやりとりを何回も繰り返す単純な遊び。単純でも園児みんなが楽しんで答えていた。
この遊びをしているときにある園児(名前は忘れた)が、大声を出してよく間違えていた。
そいつは目の数を4つと答えていた。
当然みんなはそいつを笑った。
先生もそいつに「〇〇くん、目があるところ全部教えて?」と質問すると、そいつは右目、左目と順に指を指していく。するとそのまま左にスライドし、空中で指を指して3つ、4つと数えた。
クラスのみんなは大爆笑。そんなわけがないと。
その日からおそらく数日後くらいに、そいつは眼鏡をしてきた。
先生がそいつの親に目が悪いのではと連絡したからだと思う。いや眼鏡をかけているということは実際悪かったんだろう。
しかしそいつは眼鏡をかけても、例の数え遊びでトンチンカンなことを答えていた。
数え遊びで先生が腕を指したときに、みんなが2つと答えていたのにそいつは3つと答えていた。
はじめはそいつが間違って答えてもみんな笑っていたが、もうみんなは数もろくに覚えられないそいつに呆れて怒るようになった。
園児全員がそいつに「いい加減にして!」とか「ちゃんとして!」と怒っていると、そいつは泣き出した。
「本当やもん!腕は3つあるもん!先生もお母さんもお父さんも。大人は3つあるもん!」
と泣き叫んだ。
しかしそんな叫びも虚しく、みんなはそいつを責め続けた。結局先生がみんなを怒ることでその場をおさめた。
腕が3つ。目が4つ。
今思うと先生の肩には顔を出し片腕を掛けた何かがいて、そいつはそれを見ていたのでは無いかと想像する。
そいつは大人には腕が3つあると泣き叫んでいた。
今でもこれを思い出す度に、何もなくても念のため肩を払う動作をしてしまう。