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池の氷が透明なのはゆっくり凍ったから。

ゆっくりと時間をかけて凍った少女の周りの氷は、池の氷みたいに透明でした。

そこは光が屈折して見たいものがよく見えなかったり、
あらゆる音がよく聞こえなかったりするものの、不思議と息はできるようでした。

少女はその中で
寒いと感じる自分の心に嘘をつき、
ぼやぼやと聞こえる罵声やことほぎに聞こえているふりをするうちに、
本当のことをうまく言葉にすることができなくなっていました。

時々冷たさを感じて震えてるふりをしたりするけれど
むかし氷の外で感じていたような感覚は、もうとっくに凍ってしまっていました。

そんな少女の周りには不思議と人が集まり、
寄り添い、キスをしてくれる人もいましたが、
それは少女には届いていませんでした。

それでも心の大事な部分まで凍ってしまわないように。

もう戻ることのない温かであった過去を心のよすがにし、
氷の中に差し込む陽の暖かさを想像しながら日々を過ごしていました。

そんなある日、同じような格好でこちらに近づいてくる男の子が見えました。

はじめ少女は、
今までの人たちと一緒。
きっとこの人も近づいては離れていくの。
と、思っていました。

ところが男の子はいつまで経っても離れることはなく。
いつだって男の子からは意味のこもった音が聞こえるのでした。

少女は言葉でキスをするということを知りました。

少女は男の子のことをもっとよく見てみたい、触れたいと思いました。

すると、ゆっくり。

本当にゆっくりと氷が傾き、

一瞬

眩しくなった後、

男の子の顔がはっきりと見え、
さっきまで男の子のことを隠していた真っ白で眩しい光は私たちの未来のようにも見えました。

ぴちょんっっ。

二つ分の氷の水が滴り落ちる音が聞こえた気がするのでした。

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