映画「凪待ち」が震災後の石巻を通して描く、喪失と再生
どうしようもないクズな男の生き様を通して、見えてくる今の世の中を
リアルに香取慎吾が演じている?というより、郁男として生きている。
ギャンブル依存症、アル中、仕事が続かない、キレると感情を抑えられず、暴力を振るう、家族のお金を盗む、、、。
自分は、どうしようもないクズな人間で、生きてる価値がないと思っている。
人に必要とされたり、誰かからちゃんと愛されたりすることなんて、自分にはないと思っている。
というより、それを期待することを避けて逃げて、この人生からは抜け出せない、やり直すことなんてできないと諦めている。
郁男の恋人、亜弓は、DVの夫と離婚しシングルマザー。彼女の娘、美波は、不登校。石巻で漁師をしている亜弓の父親、勝男は奥さんを津波で失い、今は末期ガン。
全員が何かを抱えて、どうしたらいいかわからない自分の人生をなんとかやり過ごしている。
層のように重なり続けていく、抜け出せない現実が絡み合って、とんでもない事件が起きる。
その原因は、自分がダメな人間だったからじゃないか、自分さえいなければ良かったんじゃないか、そんな思いばかりが募り、その思いから人を傷つけてしまう。
この物語の中では、何人もの犯罪者と犯罪者ではない人の人生が描かれている。しかし、犯罪を犯すか犯さないかは、多分違いはない。
そして、震災後の石巻で、人も街も失った喪失感。元には戻らないその場所で、それでもこの場所しか生きる場所はないと思い日々働く人たち。
この映画を観終わった時、誰もが、色々な想いを持つと思う。
自分もこの石巻のように再生していくことはできるのか。
そしてある意味、この映画の一番の重要なシーンは、エンドロールだと思う。
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