なぜ子どもは親のいうことをきかないのか?
ニュージーランドでは、小学校に上がる前くらいの年齢の子どもが誰かに何かをしてもらったとき、「なんて言うの?」と親がうながす。
そうすると子どもは「Thank you」と言う。おそらく日本でもそのようなことを多くの親はしているだろう。
子どもにThank you を言う習慣をつけさせる以外にも、同じようなことをして、親は子どもをしつける。
いろんな状況で親が子どもをうながしたり、叱ったり、ほめたりすることで、同じような状況のときにどうすればいいのか、子どもは親の言葉から学んでいく。
でも、親として子どもを育てていくうちに、それだけではうまくいかないことに気がつく。いくら親が子どもに「こうしなさい」とか「そんなことをしてはいけません」と言っても、子どもがいうことをきかなくなってくる。
どうしてだろう。
子どもは最初は親に言われた通りのことをする。Thank you と言うべきときにはThank you と言い、謝らなければいけないときにはSorryと言う。誰かに優しくするべきときには優しくするし、じっと待っていなければならないときには待っている。
でも、子どもはある日「あれっ?」と思うのだ。
こうしなさいとか、こうしてはいけませんとか自分に言う、その親自身の行動に対して疑問を持つ。
「自分には言うのに、親はしていないだろう」と。
親の行動を後ろから見ていて、「ここではThank you と言うべきではないのか?」とか「ここでは親が悪かったのだからSorry と謝るべきではないのか?」と素直に感じるのだ。
そして、そんな経験を何度もしているうちに、「親は自分にそう言うけれど、そんなことはしなくてもいいのだ」と判断する。
どうすればいいのだろうか。
やはり、親が子どもにこうしなさいとか、こうしてはいけませんというのなら、親もきちんと子どもに言うように行動すべきなのだ。
もっと言えば、子どもにこうしなさいとか、こうしてはいけませんなどと言葉で言わなくても、親がそのように行動していれば、子どもは後ろからそれを見ていて、同じようにする。
親が子どもに、こんな人間になってほしいと思っているのなら、まずは親自身がそのような人間として行動すればいい。何も言わなくても、子どもは親がやっていることを見て、いずれ同じように行動する。
もちろん、親がやったようにすぐに次の日にまねをするわけではないし、反抗期には逆のことをする子どももいるかもしれない。また、親がただ見せているだけで問題が何もかも解決するわけでもない。
でも、子どもは親の毎日の行動を必ず見ている。そして何年も一緒に暮らしていると、あるいは遠く離れていても、親がやっているように子どもも行動するようになる。親の毎日の無意識の行動基準に、子どもも合わせるのだ。
だから、言葉でうながしたり、叱ったり、ほめたりすることも大切だけれど、それ以上に、親自身が毎日何を考え、どう行動しているのかが大切なのだと思う。
子どもを育ててきた親として、自戒を込めて今そう思う。