納豆を仕込む~池波正太郎風AIレシピ探求記~
冬の朝は、身の引き締まる寒さである。湯気の立つ味噌汁をすすり、炊きたての飯を頬張る。そこへ、一掬いの納豆を添える。箸を入れれば、粘りが糸を引き、ふわりとした香りが鼻をくすぐる。この納豆が自家製であったなら、さらに旨いに違いない。
ふと、思い立った。納豆を、自らの手で仕込んでみようと。
納豆といえば、近年はパック詰めのものがどこでも手に入るが、かつては各家で作るものだった。さらに遡れば、山の民が藁に包んで発酵させたのが始まりだという。藁に棲む納豆菌が、大豆を滋味豊かに変える。なるほど、実に理にかなっている。
さて、納豆を作るには、良質な大豆が必要である。これを一昼夜、水に浸す。すると、大豆は水を吸い込み、ふっくらと膨らむ。ここで焦ってはいけない。豆はしっかりと吸水させねば、煮たときに芯が残る。じっくり待つのが肝要だ。
翌日、膨らんだ大豆を、丁寧に蒸す。これもまた急いてはならぬ。時間をかけ、豆の甘みを引き出す。やがて、指で軽く押すと、ほろりと崩れるほどの柔らかさになった。
ここからが本番である。蒸した大豆を、温かいうちに納豆菌と混ぜる。市販の納豆を種にする手もあるが、私は藁を使うことにした。これこそ、昔ながらの手法である。
適度な温度を保ちつつ、納豆を発酵させる。冬の寒さを逆手に取り、保温箱を工夫する。炬燵の中に仕込むもよし、湯たんぽを活用するもよし。夜を越え、二日目、三日目と時間が経つにつれ、独特の香りが立ち始める。
そして、ついに仕上がった納豆。箸で持ち上げると、粘りが細く長く伸びる。口に含めば、大豆の甘みと発酵の深みが絡み合う。これを熱々のご飯にのせ、醤油をひと垂らしすれば、もはや言葉はいらぬ。
こうして出来上がった納豆は、市販のものとは違う。手間をかけた分、格別の味わいがある。思えば、料理とは手をかけるほどに美味くなるもの。昔の人がそうしていたように、今日もまた、静かに納豆を仕込むのだった。
納豆の作り方
材料
大豆 … 200g
水 … 適量(大豆の3倍程度)
藁(または市販納豆 10g)
保温用の箱やタオル
作り方
大豆の下準備
大豆をよく洗い、一晩(約12時間)たっぷりの水に浸ける。
大豆を蒸す
大豆をざるに上げ、水を切る。
蒸し器で2〜3時間、指で潰せるくらい柔らかくなるまで蒸す。
納豆菌を加える
蒸した大豆を清潔な容器に移す。
40〜45℃程度に冷ましたら、藁を大豆の上にかぶせる(または、市販納豆を少量のぬるま湯で溶いてまぶす)。
発酵させる
40℃前後を保ちながら、24〜48時間発酵させる(炬燵や湯たんぽを利用すると良い)。
発酵が進むと、糸を引き、納豆独特の香りが出てくる。
熟成
冷蔵庫で1〜2日寝かせると、味が落ち着き、旨味が増す。
完成
ご飯にのせて、醤油やからしを添えていただく。
一度作れば、その奥深さに気づくことだろう。気まぐれにでも、また仕込んでみるのも悪くない。
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