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おみくじのルーツを探しに:エピソード3

こんにちは、吉むすびです。
良介と海のおみくじのルーツを探す旅におみくじの妖精ミクと平安時代にやってきました。そこで出会ったのは延暦寺のイケメンでおみくじの祖と言われる良源上人でした。さて今回はどのようなことになるのでしょう?

「いつもながら、上人がいらっしゃると宮中の女人が騒ぎますな。悪い気はしないでしょう?」藤原師輔(ふじわらのもろすけ)は笑いながら問いかけた。

「いえ、藤原様。私は女人に容姿で好意を持たれることに困っております。立場が違いますので…」良源上人は困った顔を浮かべた。

「まあ、その端正な顔立ちでは、女人たちが夢中になるのも無理はないですな。そこに飾ってある般若の面でも被りますか?ハッハッハ!」師輔は冗談のつもりで言った。

「そうしましょう。その面をいただけますか?」良源上人は真剣な顔で答え、師輔にお願いした。

「上人様がそうおっしゃるなら、どうぞ遠慮なくお持ちください」師輔は笑顔で、般若の面を良源上人に手渡した。

「ところで、今日お伺いしたのは、延暦寺(えんりゃくじ)で承平五年の火災で失ったお堂や塔を再建したいと考えているのです。その際には、ぜひ藤原様のお力をお借りしたく存じます」

「我が国において、仏の教えは民を治める上で欠かせぬもの。もちろんお手伝いさせていただきます。その代わりと言っては何ですが、娘の安子(やすこ)が子宝に恵まれるよう、どうか安産祈願をお願いできればと存じます」

隣の部屋でこの会話を聞いていた安子は、自分のことが話題に上がっていると気づいていたが、婚姻したばかりでまだ実感が湧かず、少し不思議な気持ちでいた。その後、良源上人が般若の面を付けて部屋を出たところで、安子とミクたち三人と出くわした。

「きゃー!」安子たちは驚き、思わず叫び声を上げた。

「これは失礼、失礼。安子様、驚かすつもりはございませんでした」

「ああ、本当にびっくりしました!せっかくの凛々しいお顔を、そんな怖い面で隠してしまうなんて…」安子は残念そうな顔をした。

「失礼しました。ところで今日は私に何かご用でしょうか?それに、ご友人もご一緒とは珍しいですね」良源上人は、皇后となるであろう安子を驚かせてしまったことに恐縮して、丁寧に話しかけた。

「ええ、良源上人様が作られた民を救うおみくじについて、この者たちが興味を持っているようで、上人様にお会いしたかったらしいのです」安子はミクたちに視線を向けた。

「おみくじですか。それは良い心がけです。あのおみくじを引き、御託宣のとおりに日々過ごせば、毎日をつつがなく過ごすことができます。そなたたちも寺に来ればおみくじを引かせて差し上げますよ。よろしければ、これから安子様と一緒に寺へいらっしゃいませんか。ちょうど藤原様から安子様の安産祈願を頼まれておりますので」良源上人は優しく話しかけた。

「はい!ぜひお願いします!」今まで良源上人の顔をぼんやりと眺めていた海が、突然大きな声で返事をした。皆はその勢いに一瞬驚いたが、次第に笑いが込み上げてきて、「ワッハッハ!」と笑い出した。海は顔を赤らめ、恥ずかしそうにしていた。

「いや、それくらいおみくじに熱心に考えてくれるなら、うれしい限りです」良源上人は、海が大きな声を出した理由を勘違いして、さらに優しく微笑んだ。だが、他の三人は、海が良源上人の顔に見とれていたことに気づいていたので、みんな心の中で笑いを堪えていた。

「それでは、一足先に寺に戻ってお待ちしております」と言い残し、良源上人は延暦寺へと帰っていった。

「良源上人様って、かっこいい!」良源上人が去った後、海はぽつりとつぶやいた。

「何言ってんだよ。海ちゃんは何しに来たんだよ!」良介は、良源上人の優しさに好感を抱いていたものの、海が上人に夢中なことに複雑な気持ちを抱いていた。

「別にいいじゃない。かっこいい人はかっこいいの!私がどう思おうと、私の自由よ!」

「二人ともケンカしないで。でも、お上人様は確かに素敵ね」とミクが静かに言った。「そうよ、そうよ。良源上人様はわらわたち宮中の女人みんなの憧れなのよ」安子も楽しそうに言った。

「ミクに安子様までそんなこと言って…」良介は呆れたが、この状況では勝ち目がないと諦めた。

「でも、お上人様も大変ね。あんなに綺麗なお顔なのに、それを怖い鬼のお面で隠さなければならないなんて…」海は、良源上人がどんな気持ちで鬼の面を付けているのか、考えずにはいられなかった。

「そうだな。イケメンもつらいな」良介は笑いながら答えた。

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