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【アリスとテレスのまぼろし工場】変化を禁じられた世界を壊す「恋」とは。

みなさんこんにちは!キックファクトリースタッフのアズです!5月26日、日曜日の夜にテレビ朝日の「EIGHT-JAM」という番組で『アリスとテレスのまぼろし工場』というアニメの紹介がありました。以前サラッと鑑賞したことがあったのですが、この紹介を受け改めて視聴し、かなり深い作品だったと発覚したので今回はこちらを紹介します!(笑)
ちゃんと見ておけばよかった!!


1.恋の衝動が世界を壊す

INTRODUCTION

菊入正宗14歳。彼は仲間たちと、その日もいつものように過ごしていた。すると窓から見える製鉄所が突然爆発し、空にひび割れができ、しばらくすると何事もなかったように元に戻った。しかし、元通りではなかった。この町から外に出る道は全て塞がれ、さらに時までも止まり、永遠の冬に閉じ込められてしまったのだ。

町の住人たちは、「このまま何も変えなければいつか元に戻る」と信じ、今の自分を忘れないように<自分確認票>の提出を義務とする。そこには、住所、氏名、年齢だけでなく、髪型、趣味、好きな人、嫌いな人までもが明記されていた。

正宗は、将来の夢も捨て、恋する気持ちにも蓋をし、退屈な日常を過ごすようになる。
ある日、自分確認票の“嫌いな人”の欄に書き込んでいる同級生の佐上睦実から、「退屈、根こそぎふっ飛んでっちゃうようなの、見せてあげようか?」と持ちかけられる。

正宗が連れて行かれたのは、製鉄所の内部にある立ち入り禁止の第五高炉。そこにいたのは、言葉も話せず、感情剥き出しの野生の狼のような謎の少女。この少女は、時の止まったこの世界でただ一人だけ成長し、特別な存在として、長い間閉じ込められていた。

二人の少女とのこの出会いは、世界の均衡が崩れるはじまりだった。
止められない恋の衝動が行き着く未来とは?

※『アリスとテレスのまぼろし工場』公式サイトより

本作は2023年9月15日公開のアニメ映画です。第78回毎日映画コンクールのアニメーション映画賞、第2回新潟国際アニメーション映画祭の蕗谷虹児賞と長編部門傾奇賞を受賞しています。アニメーション制作はあのMAPPAが担当しており、本作がMAPPA初のオリジナル劇場版アニメ作品となります!そして監督・脚本は、「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」の原作・全話脚本や「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」シリーズ構成などを担当した岡田麿里が務めており、岡田監督独特の鮮やかでドロドロした人間関係や恋が表現されています。

映画関係者からの評価も高く、『君の名は』でお馴染みの新海誠監督は、自身のX(旧Twitter)アカウントにおいて高評価の感想を述べています!

作品の舞台は製鉄が盛んな架空の見伏という町です。その町が突然“変化を禁じられた”世界になりました。外部との接触はできず、時も止まり、みな年齢も変わらず、季節はずっと冬のままです。この突然の出来事には、製鉄所の第五高炉に閉じ込められて暮らす謎の少女・五実が関わっていたのです。主人公・菊入正宗は同級生・佐上睦実と五実との出会いを機に、周囲の少年少女を巻き込んだ不変の世界の崩壊をもたらしていきます。そのカギとなるのが、彼らの「恋」という心の中の変化なのです。

ストーリーとしてはなかなか難しい内容だと思います。ただ、上手く言い表せはしないのですが、この作品が伝えたいこと、テーマは物凄く心の奥まで突き刺さってくるような感覚がありました…。作品の魅力とともに、私が作品から感じたメッセージを紹介していきます!

2.変化の怖さと喜びを「恋」で伝えてくれる

本作のカテゴリーは青春恋愛アニメではありますが、その恋愛の描き方がなんというか、他とは違う感じがします!恋が生きる上での「変化」として表現されており、その変化が禁じられた世界という設定の矛盾が、より恋の甘酸っぱさ、ほろ苦さ、葛藤を感じさせます。そして人生の中で自分自身や環境が変化していくことへの恐怖、という人間らしい感情も非常に繊細に描かれていると思います。ただこの作品では、その誰もが持つ「変化への恐怖感」を否定せず受け入れて、包み込んでくれる感覚があります。変化は怖い、辛い、けれども変化することの喜びや希望があるんだ、ということを伝えてくれるんです。

そして「恋」がどれだけ大きな人を動かす力になるのか、神秘的な生命力を含んでいる美しいものなのかというメッセージ性も強く含まれています。まさに「恋の衝動が世界を壊す」という映画キャッチフレーズの「恋の衝動」をストーリーやキャラクターの言動で心に響かせてくる映画です!そして、キャラクターたちが発する恋についてのセリフも、ジーンとくるものが多いです。特報の動画にもあるのですが、「好きって、大嫌いって気持ちにすごく似てて、なんか痛くって、爆発しそうだ」という言葉もその一つです!

「恋」というテーマが強いですが、「愛」とは別物としています。岡田監督もKADOKAWA文芸オンライン『カドブン』におけるインタビューにおいて

よく「恋の先が愛」って言われますけど、私の感覚では「愛」と「恋」はまったくの別物なんです。私なりには、「愛」って、自分の心さえ解放すれば割と身近に感じることもできると思うんです

※カドブン『「映画と小説、それぞれの強みを感じてほしい」
「アリスとテレスのまぼろし工場」岡田麿里監督インタビュー』

と語っています。実際に作中のセリフでも「痛い!でも一緒にいたい!」というような言葉がありました。前半が恋で、後半が愛についてのことだと思います。ただ、このセリフを言ったキャラクターとその後の展開を知ると、そのキャラクターが抱いていたものは愛であり、やはり恋とは別物だったんだ…と納得します。ネタバレになってしまうため言えないのですが、作品のメッセージと物語の展開・結末の合致感が個人的にはものすごかったです!

3.リアルすぎる町の描写

この作品の魅力は、メッセージ性だけでなく作画・描写にもあります。舞台は製鉄所が町の中心となっている、いわゆる鉄の町です。その鉄の町や製鉄所の描写が非常に細かく、また入念な取材を感じさせる風景作画となっています。生活区域と製鉄所が近いため、住宅や商店街越しに重厚な雰囲気の製鉄所が見える景色や、原料を海から運ぶため沿岸の町になっていることがわかります。他にも田舎町特有の閉鎖的な人間関係、自治のあり方の描写など、舞台設定がリアルなため、ファンタジーアニメであっても没入感がすごいです。

そして、製鉄所の作画も書き込みが細かく、とっても綺麗です!夜も稼働し、オレンジ色の光と煙突からもくもくと出る煙が、工場夜景の美しさと不気味さを味わえます。そして、錆びた鉄骨や無機質な製鉄所は廃墟感があり、昼間でも少し薄暗い雰囲気が漂っています。この虚無感が、町の時を止めた謎の神気狼と空のひび割れの鮮やかさと対照的で、神秘的な雰囲気を感じさせます。他にも、生活音や細かな撮影処理、カメラワークも、さすがMAPPAさんだなというクオリティの高いアニメーションです。高い作画力もあってか、ますますストーリーにのめり込んでしまいます!

4.視聴後の余韻がものすごい作品

設定の解けない謎は多いのですが、この作品ではそれを解明したり、問題を解決していったりというのがメインではないと思います。この変化を禁じられた世界の中で、少年少女たちがどう変化し、どう心を動かされていったのか、そして生きることの葛藤と美しさという部分に焦点が当たっている物語です。また、主題歌はなんと中島みゆきさんが歌う楽曲で、これも視聴後に聞くと格段と感動します!『アリスとテレスのまぼろし工場』は現在Netflixで配信中です。心に残る、普通とはちょっと違った青春恋愛アニメ作品なので、ぜひ視聴してみてください!

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