コロナ時間にeBayでよみがえる音楽その3:ドリカムの『うれしい!たのしい!大好き!』
2004年にドリカムがリリースした『やさしいキスをして』のシングル版CD。そのB面にあったことからこの曲の存在を知った。
でも今回書くまでこのような大作が、アメリカへ移住した1989年にもうリリースされていたとは不覚にも気づいていなかった私。
アジアでの長旅を終え一旦日本へ一時帰国したのもその頃。実家で観ていたテレビ番組に登場し、熱唱した吉田女史を観て動かされた。その後に購入に至った記憶があり、覚えた曲は一時期、カラオケでのオハコともなっていた。
2000年代に入ってから体感したあのスクリーン越しのステージで、80年代最後の名曲を歌い上げた後に全く時代を感じさせなかったのは、原曲と違うアレンジで演奏し、歌っていたからなのかもしれない。イヤそれ以前に、常に新しいことに挑戦している人達を観ていると、「勇気」を与えられるから「超えられる」のではないか。
話を我が物販に移し、最近になって2019年の1月からebayで販売した商品を実際に売れた値段と当時の送料を含めてピンタレストのアカウントにアーカイブし始めた。そこで改めて気付いたのは、過去に3人のリピーターのお客さんが居てくれたコト。
一度目は『ステューシー』の90年代ビンテージ・ベースボール・キャップを狙い撃ち、型違い・色違いを立て続けに二度購入してくれた大阪在住の男性。
二度目は私のebay師匠となり、奇跡の出逢いを果たしたビビアン・ウェストウッド前身ブランド『ワールズ・エンド』ぞっこん東京在住の男性で、ご夫婦揃ってパイレーツやサベージ・コレクション熱再浮上中とは話に花が咲いた際、既に聞いていた。二度目は偶然に彼の奥様が購入してくれ、発送時の住所にあった氏名の苗字が同一だった事からもしやと彼女に尋ねてみたらやはりそう。おふたりの好みは明らかに一緒だと納得してしまうスクイグル柄のパンツとはピンポイントのお買い上げだった。
そして三度目の正直は、ブルックリンに住むアサムという名の女性客の購入で、彼女との取引後にメッセージをやり取りしていた合間、浴びたシャワーの中でその曲の歌詞が浮かんできて口ずさんでいたサビ。今となっても心弾む思い出だ。
彼女には先週木曜の午後3時頃にショルダーバッグにも早変わりするゴールドのミニクラッチを購入してもらった。これはハーレムに住んでいた2001年初頭に、目抜き通りである125丁目沿いに当時あった韓国人経営のお店で購入し、学友の結婚披露宴に参加した際、一度のみ使用という美品だった。
アサムが一回目の購入をしてくれた商品説明欄には、「送料を削減する為にプチプチに包んで袋で発送」との内容を説明書きしてあったのだが、破損を防ぐため臨機応変に、前もって適当なサイズの箱を手に入れてあったので、梱包用のパッキング・ピーナッツも緩衝材として詰めて箱をクリアテープで強化して閉じた。
先週迄なら閉まっていたハズの局もまだ営業中。もう一度局へ戻れる時間もあるし、プライオリティーメールでブルックリンへ発送なら、今日中に送り出せれば明日には届けられる。迷わずその日三回目のポストオフィスへ小包を預けに早足で向かった。
ウチの近所の郵便局は新型コロナウイルスの一件から客が激減したことから午後3時で閉めていた。ニューヨーク州は規制しつつも、何とか復興の一歩を踏み出そうとする中、ようやく先週月曜から夕方5時までの通常営業時間に戻っているとは局員のロビンから聞いていた。
でもニューヨーク州のステイホーム条例に関しては結局のところ、6月15日まで引き伸ばされている。国の科学者達にこの7月と予想されている感染の第二波を阻止する為。残念ながらそれを苦作と、この場に及んでも経済的打撃を一番に心配している悲しい人達がいるのも事実なのだが、私個人的には人が死んでいくのを防げられるものならば、7月や8月迄、又はそれ以降であっても自宅待機する心積りはとうにでき上がった。このタイミングで49歳になって初めて芽生えた『協調性』が喜ばしい。
一時期の死亡数が700人越えしていたことで、完全に感覚が麻痺し、本来ならば「尊い100名もの命」となるところが、ようやく1日に100名台に減ったというこの日常。それがニューヨークの『新しいリアリティー』。そして100という数字を切ってコロナに命を奪われた数が80名台まで下がった直後、このメモリアルデーの祝日三連休に先駆けて再び93名にまで増えた。その週末に関しては、一度に10名迄の集まりを市は許可していたが、最近になってまた救急車のサイレンが頻繁に響き渡るようになった。実際にはまだ油断出来ない状況が続く我が街。
透明の防弾ガラス越しに背の高いロビンは窓口への列に並んだ私をみつけ、顔の大半をマスクで覆い窓口業務する傍ら『また帰ってきたンか〜』と言わんばかりにこちらを向き、まん丸に目を見開いて驚いた表情を作ってみせた。面白くなった私はマスクのなかで吹いてしまった。
彼もこの二ヶ月近くほぼ毎日顔を合わせているひとり。彼らと私は一気に生命共同体となった。来る日も来る日も誰も訪れない窓口に立ち、私が置きに来たメールに対応してくれた。こんなご時世に、もし本当に近所の郵便局が閉まっていたら、私が日々やっている事はまず成立していないので、彼らへは特別な感謝の念がある。
発送の知らせをアサムに伝えたその翌日の夕方に正方形の箱を受け取った彼女は、昨日中に発送を間に合わせる努力をしてくれたのが速く届いた郵便で分かり、梱包の丁寧さにも感心したという内容で、わざわざお礼のメッセージをくれた。「私には良い口コミを書くくらいしか、あなたへしてあげられないけれど、信用できる売り手だから、またあなたから購入するからネ。」と書いてくれてあった。
「親切な言葉をかけてくれてありがとうございます。とても励みになります。しかし配達に関してはエッセンシャルワーカーである郵便局員達のおかげです。ですからこれは私ではなく局員達の成果です。」と返答したら、その数時間内にまた2回目の購入をしてくれていた。今度はリボンがモチーフになった太めのゴールドチェーン。嬉しながらも信じられない展開に、少々困惑してしまった。
というのもコロナ時間内にこのタイミングで一気に火が付いてしまった私のebay物販。毎日忙しくこなしながら、いつも気になっている事のひとつ、やはり彼女も一人暮らしなのではないか。話し相手を探そうと、見ず知らずの人へ一方的なメールを送っても返事をもらえる確率とはまず少ないかもしれない。彼女が購入してくれたことをきっかけに、お客さんと私に関係性が生まれ、そこで初めてアサムという人を知る機会を与えられている私。
彼女が家にこもっている間に疎外感を味わって、ネットショッピングを初めた人のひとりなのではないか。実際にこれまでの私のお客さん達の中には、初購入者も少なくないかった。その初心者のebay層が圧倒的に今増えている。やけにゴールド好きと伺えたが、ノスタルジーにふける彼女とは、もしや初老ではないだろうか。そう考えれば、正装して教会へ着けていくアサムを想像できるが、それ以前にまず外出もままならない現状だ。余計なお世話と言われてしまいそうだが、そんな時間下、前回はまんざら妄想でなかった私の予感が、また心のなかを瞬時に駆け巡ってしまった。
誰かとコミュニケーションを取ることの大切さとは、実際に今のニューヨーク市でもメンタル・ヘルスの一環として唱われていることのひとつ。身勝手な個人の利益追求よりも、まずは相手をねぎらい、前向きな言葉を交わし、他人と分かり合う努力を自ら推進するよう心がけるようになった。かなり間接的なアプローチかもしれないが、こんな私でも人助けのような何かをバーチャルに接している相手に施せているのかもと感じ始めている。
それが最初はまったく自分が手放すつもりもなかったミュージックCDに置き換えると顕著な例であり、音楽に興味を持って、ネット上で手に取った人々のことを、「音」を共通項にして出会う仲間ととらえた時、ある意味、私がこれまで実際の現場で出会い様々な交流を展開したのに近い発展がある、そんな可能性も湧いてきている。
私自身、これまで音楽にはかなり助けられてきた。それで「聴くこと」を人々に奨励してきた。こうして私の思い入れのある音楽たちも買い手へと受け継がれ、新たな人の耳に触れるチャンスが誕生する。私自身を変えたような音楽体験が、もし聴いた人々の心にも起こり希望を与えられるのならば、それこそがプライスレス。私自身の充足感へと確実に繋がる源となりうる。
なにはともあれ、こうしたリピーターのお客さん達に恵まれているコトは、非常にありがたいことで、地道で地味な日々の作業に輝きを与えてくれている。
5月15日発で予約済みのフライトがキャンセルになったとANAから連絡が入った。現在ニューヨークへは週一便しか飛ばなくなったからだと聞かされた。ニューヨーク州も同じ時期に5月15日までのステイホームを命じていたし、今年の一時帰国という名の『パーティー遠征』をあっさりと断念した私。
それで新たに「年内に達成する目標」と掲げた約一ヶ月半後のこの5月20日に、『トップ・レイティッド・セラー』という名の「一貫して優れたサービスを提供すると採点された販売者」と気づいたら格上げされていた。
ここに書き残しておきたいと思う内容の様々なドラマは同時展開していながらも、それ以来、物販の方はより忙しくなってしまい今日に至った。
そんな今の気分も
まさに
CDケースはオリジナルのモノではないのですが
私の店にも一枚のみ置いてあります。
よかったら覗いてみてください。
サンラおばさんのeBayストア
探していた逸品や好きなモノもみつかるかも。
『まだ今なら行ける』とその日は三度目の発送だったが、迷いもせず、商品の内容欄には「送料を節約する為に箱に入れずプチプチに巻いて袋に入れ発送」と書いてあったが、丁度良いサイズの箱も手元にあり緩衝材も事前に用意しておいたので、迷わずに梱包を済ませて届けると、窓口で接客中の背の高いロビンが列に並んでいる私を見つけ、彼の顔の大半はマスクをしていて見えないが、やや大袈裟に目をまん丸に開けて驚く表情を作りながら『また帰ってきたか』と言わんばかりだった。