慈悲なきアイオニアの二次創作都市「学術都市ニューリア」構想

慈悲なきアイオニアとは、フシギ製作所のイチさんが作成されたTRPGのシステムで、ハイファンタジーな世界観と、文字通り慈悲のないゲームデザインが特徴となっています。

また、ゲーム以外の特徴として、二次創作を強く推奨していることが挙げられます。

『慈悲なきアイオニア』(以下、本作)は、ファンタジー世界を愛する人たちに、自由な表現の場として利用してもらうことを目指している。創作者たちの想像力によって、新たな物語やクリーチャー、アーティファクト、世界設定が創造されることを、開発者は大いに期待している。本作は、禁止事項に抵触しない限り、同人・商業を 問わずあらゆる二次創作物を許可する。 二次創作者のオリジナリティによって創り出された要素、利益について、開発者は一切権利を主張しな い。ただし、二次創作物に関するトラブルは、二次創作者が各々の責任で対処すること。

慈悲なきアイオニアルールブックp173より引用

というわけで私もシナリオを作成しているのですが、その中で思いついたにも関わらず、シナリオ中に中々反映できない要素がいくつもあるので、備忘録、あるいは設定集として残しておきたいと思います。

アイオニア世界で学問が中心となった都市を考えたい、という考えを発端として構想を始めました。
いつか非公式サプリみたいなものができたらいいですね。

学術都市「ニューリア」

学術都市とは本来の意味では大学や研究機関などが中心となった都市のことを指すが、ここでは少し異なり都市全体が一つの大学のようになっているといっていい。具体的には、この都市にあるパン屋では、パンを売っているだけでなく、酵母や発酵の実験をしているし、筋骨隆々な大男とすれ違ったなら、その人は筋肉やトレーニングの専門家である可能性が高い。

この都市にいる誰もが何らかの専門性を有していて、日夜研究に勤しんでいるのだ。時に競争しながら、時に協力しながら、まだ見ぬ新事実を求めて邁進することに、彼らは疑いを持たない。

そしてニューリアは学術都市と呼ばれているが、この都市を治めている国はどこにも存在せず、実質的には都市国家として独立しているが、正式な政府を持たず、積極的な外交も行っていない。

政治学で10本の指に入る研究者の内、20人はニューリアにいるっていうのに
ニューリアが政府を持っていないというのは皮肉な話にもほどがある。

とある国の外交官が溢した愚痴

学問について

この世界の学問は多岐に渡る。科学、文学、法学、天文学、宗教学、人類学、歴史学、魔法学 etc…
学問同士の交流も活発に行われている。科学と魔法の境界線は?神は宇宙から来たのか?幸せとは何か?一人では答えが出せない問題も、二人では解決できるかもしれない、それでも駄目ならもっと人数を増やしてみよう。この都市では石を投げれば研究者に当たるのだ。

変な研究をしている変人も沢山いる。魔法を使わずに空を飛ぶには?この世界の「外側」には何がある?鶏の頭に羊の胴体はくっつかないか?他の国では村八分に会うようなイカれた研究も、この都市では敬意をもって迎えられる。学問に貴賤はない、この考えが根底になければ、この都市はここまで発展しなかっただろう。いつだって歴史に名を残すのはこういう奴らだった。

研究に詰まったら酒場に行き、隣の客に話してみなさい、
2週間後には共著者になっているから。

ニューリアに伝わる諺

師弟制度について

ニューリアの住民には他の都市にはない特徴があるそれが年齢の分布だ。

最も多い年齢層が子供であることに変わりはないが、続いて多いのが60を超える年齢のものだ。もちろん種族によって違いはあるが、若者と老人が多く働き盛りの壮年が少ないことに変わりはない。
この一見不可解な分布の原因はニューリア特有の師弟制度にある。

この都市ではある程度文字の読み書きができるようになった段階、人間でいえば4~5歳の段階で寮に入り、そこで同世代の人たちと寝食を共にしながら、様々な研究者の見習いとして雑用をこなしながら将来研究者になるための準備をする。

例えば都市の中心にある大図書館に資料を探してくるように命じられたら、8000万冊の蔵書の中から目当ての本を探さないといけないし、そこから複写をするのも慣れていなければ一苦労である。人によっては魔法の練習もするだろう。

そして基本的な知識と自分の興味が体に染みついた、人間でい12~15歳くらいになると自分にとっての師匠を決め、より専門的な知識を深めていくのだ。

ちなみに、ニューリアでは師匠のことを「フゴート」弟子のことを「エタッド」また、エタッドの中でもまだフゴートの決まっていない見習いを「ミルクエタッド」または単に「ミルク」と呼ぶこともある。

さらにちなむと、見習いをミルクと呼ぶのはフゴートたちがご褒美として彼らにホットミルクを作ってあげる風習が理由とされている。

なんで頑固者のワーニャおじさんがミルクエタッドたちに人気なのかって?
知らないのかい?あの人の専門はサトウキビの効率的な栽培法だよ!

ある日の酒場で聞こえた会話

成人の儀式について

では、子供と老人が多いことは解るが、それ以外の年齢の人たちはどこにいるのかという問題がある。
エタッドたちが十分に研究者としての矜持を身につけたら、その多くはフィールドワークに出かけるのだ。学問は机の上だけでは完結しない。このフィールドワークに出かけた住民のことを「ドファーブ」と呼んだりする。

エタッドが力をつけて独り立ちできると判断したフゴートは、餞の印として白紙の魔導書を送るのが慣例だ。師匠によっては意匠を凝らしたり、自分が使っているものと同じモデルを送ったりする。いずれにせよ、ドファーブはこの時送られた魔導書を自分の研究で一杯にして帰ってくるのを目標にニューリアを後にする。

しかし、全員がこの目標を達成できるわけではない。道中で命を落とすこともあるがそれよりも多いのは、行き先に定住すること。例えば医学の専門家がその土地の医者となったり、その土地の生態系の分析に一生を捧げると心に誓ったり。

そして当然、ドファーブにならないという選択をするものも少なくない。特にニューリアから動かなくとも研究ができる分野で多く、農学や数学、心理学などを専門にする住民に多い。この場合はエタッドからドファーブを経ずにフゴートになって研究を始める。

他にもニューリアの外から移住して研究をするものは、しばらくエタッドとして1~2年働いた後にフゴートとして研究を始める。

最後に、ツリーフォークは彼ら独自の研究方法をとることがある。その理由は20年という彼らの寿命にある。成長の速度は速いかもしれないが、それによって研究の速度も上がるということはない。そのため、ツリーフォークの師弟関係は親子関係と同値であることが多い。つまり、その一族で同じ研究内容を共有し、数世代にわたって一つの結論を導き出すのだ。そのためドファーブの期間を持つことができないが、換わりに兄弟の内の1人が代表してフィールドワークに出かけて、その子供が帰ってきてフィールドワークの内容を伝えるという行動も多く見られる。種族によって学問の門が閉ざされていることはなく、ただ道が少し違うだけだ。

ニューリアで最も発達した学問は何か?その答えの一つは畜産学かな。
なぜなら羊皮紙の枯渇は研究の停止を意味するからね。

とあるドファーブのラウステン王国でのインタビューより

首長について

星歴60年にニューリアの前進とも言えるニューリア教会が設立されて以来、ニューリアの主張は代々エルフ・ドワーフ・竜人に代表される、所謂長命種だった。これは長く生きたことによる知識の蓄積と、それらの研鑽に対する無自覚な敬意の現れだろう。

いつしか100歳を超えることがニューリアの首長の条件となっており、現在では学長と呼ばれるその座に居るのは、101歳の竜人の女性「サンロン」魔法に関する革新的な研究が評価され、選ばれた。

といっても学長の座についたからと言って何か大きな仕事があるわけではない、先述の通り外交を断っているため、国同士の会議に参加することもないし、もし他国の要人が訪れても自分の研究が優先されることがほとんどである。大切な用事でも優秀なエタッドが代わりに応対するし、学長のエタッドともなれば他国の外交官とも対等に意見交換ができるため、ニューリアは外交をしていない上に、外交で困ったことは滅多に起きない。

サンロンの研究テーマは「魔法発動時に生じる精神的負荷を魔法によって回復する方法」この研究が進めば、いずれは精神の摩耗を気にせずに魔法を好きなだけ打てるようになる。
サンロンは食事、特に個人の好物や質の高い食事を摂った場合にこの精神的負荷が回復することに着目した。

サンロンが開発した魔法は、固いパンを焼きたての状態に戻す魔法、通称「タトス」これによってドファーヴを中心に魔法の出力を安定させることに成功させた。現在はこの魔法を応用してさらに効率的に精神的負荷を回復させる方法を研究している。

サンロンが美食家だからタトスを開発したのか、タトスを開発したから美食家になったのかは、卵が先か鶏が先か問うているものだ、どちらもサンロンが食べてしまったから誰にもわからないのさ。

ニューリアではお馴染みの冗談

大図書館について

ニューリアの中心にあるのは大図書館だ。2000年の歴史の中で蓄積された書籍の数は実に8000万冊を超えている。アイオニア世界でもこれほどの知識の集積場はないだろう。多くの研究者が研究をまとめた書籍や、他国から購入した書籍などが集められている。情報はみんなで共有しようという思想が敷衍されているため、個人で多くの書籍を独占している人は少ない。

この膨大な蔵書を管理しているのは、図書館学を研究している者たちが中心だが、それを束ねる「司書長」が存在する。慣例として「館長」という役職は存在しない、あくまで書籍はニューリアのもので図書館のものではないからだ。

現在の司書長は「キブノ」という男性の人間で、エタッド時代に特定の師匠としてのフゴートを持たず色々な研究を見学しながら図書館で本を読みふけり、ドファーブにならずに図書館で働き始め、あっという間に司書長になったという異色の経歴を有している。

様々な研究の知識を有していることと、空間認知能力の高さから、利用者が求めている本を探す能力が非常に高い、おかげで彼の元には毎日行列ができているが、3時間かけて本を探すより、2時間待ってキブノに聞いた方が速いと言われている。

「ダンタル先生の数学の教科書は南側エリアの一番奥から57番目の本棚、エルフとドワーフの心理学的相似点に関する資料は北側エリアの緑色22番の本棚にあるはず、あ!ユウナ、久しぶり!はいこれ、頼まれていたワーニャおじさん秘蔵のレシピブック!また旅に連れて行ってね!

……『シャロム儀典』の写本?そんなものないよ、
      あったとして君には読ませないけどね。」

大図書館中央カウンターでの日常

おわり

最後まで読んでいただきありがとうございました。私と同じ名前のNPCが出てきたのは「私がアイオニア世界に生きるなら何をしているか?」という問いがニューリア構想の発端だったからですね。

現在執筆中のシナリオではフゴートの竜人がNPCとして登場します。なんでも未知のアーティファクトに関する情報を手に入れて、数年ぶりにフィールドワークに出かけるらしいです。

しばらく自分で回してから公開する予定なので、遊びたい方はDMいただければ喜んで回したいと思います。アイオニア初心者の方も大歓迎です!


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