パーパスモデルでみる環境への取り組み4事例
こんにちは👋きびです。
パーパスモデルの記事も4本目。場の4事例にはじまり、ソーシャルアクション4事例、読み方書き方とツールキットの公開ときて、今回のテーマは『環境』です。
この記事では共創を可視化する「パーパスモデル」という手法で図解した本人が『いい・・・!』と思った事例を紹介します。
・技術力と消費者の巻き込みで服を再資源化する事業
・博物館と一体になったファッション業界のイノベーション施設
・選手もスタジアムもサポーターも世界で最もグリーンなサッカークラブ
・アニミズムの精神で人の心をつなぐ日本発の環境国際会議
の4つの事例を取り上げました。
どれも語りきれない興味深さのある素敵な取り組みです。
ではさっそくいってみましょう!
1.Bring(日本環境設計)
服の回収からリサイクル、再生素材を使った洋服の販売までを行うブランド
画像出典:https://bring.org/
概要
Bringは日本環境設計が主導し、様々な企業や消費者と共に衣服のリサイクルを行う取り組み。
背景
世界では毎年9200万トン、日本でも年間およそ147万トンもの衣服・繊維くずが廃棄されており、これらの多くが焼却もしくは埋め立て処分されている。
衣服を作るためには、石油などの資源が必要になる。そうした地下資源は有限のものであり、このまま大量に作って処分されることが続くと、石油は枯渇していき、やがて資源を巡って国同士での争いが起きかねない。
そのため、衣服を大量廃棄するのではなく、古着を回収し化学分解して再生原料を生成。そこから再度服をつくるという資源循環の仕組みを作って、服に含まれるポリエステルの原料である石油の使用料削減に貢献しようとしている。
具体的に何をしたのか
資源循環を成立させるために、大きく2つのアプローチがある。
1つめは、多くの企業と連携するもの。
コンセプトに賛同した企業が、古着の回収拠点を提供。消費者から古着を回収し、日本環境設計に送られる。その中で、ポリエステル製品に関しては工場で再生ポリエステル樹脂に生まれ変わらせ、その他の素材はパートナー企業の元でリサイクルする
2つめは、日本環境設計単独で行うもの。
同社が運営するBringのサイトで、消費者が商品を注文すると、着なくなった服をリサイクルに送るための発送封筒も一緒に届く。その服をリサイクルしようと思ったタイミングで封筒に入れてポストに投函すると、同社の工場で服の原料にリサイクルされる
このプロジェクトは消費者参加型の仕組みを作ったことに特徴がある。
その仕組みとしては、回収箱の設置がある。良品計画や丸井などの大手も含む、多数の企業の協力のもと、回収箱を設置して消費者から古着を集める仕組みを作った。最初は協力してくれる企業は数社からスタートしたが、今では100社以上の企業と一緒に取り組んでいるとのこと。
また、回収する仕組みを整えるだけではなく、多くの人に参加してもらうためのエンターテインメントに力を入れている。例えば、ショッピングモールなどでデロリアンを持ち込んだイベントを開催し、環境意識が高いわけではない人でも、楽しいと思ってもらって巻き込めるようにした。
このように、生産者だけではなく、消費者も巻き込んだプラットフォームとして循環の輪を広げていく活動を続けている。
日本環境設計:https://www.jeplan.co.jp/service/bring/
2.Fashion for Good
ファッション産業のサステナビリティ向上を図る共創活動
画像出典:https://fashionforgood.com/
概要
Fasion for Goodは、「持続可能なファッション」を理念に掲げ2017年に設立された株式会社。同じ理念を持ったスタートアップ、ブランド、消費者、投資家をつなげ、企業によるイノベーションと消費者の意識改革によってファッション産業のサスティナビリティ向上に取り組んでいる。
アムステルダムに消費者の意識改革を目的とした体験型ミュージアムとイノベーション創出を目的としたコワーキングスペースの複合施設「Fashion for Good Experience」を場として持つ。
背景
ファッション産業は、人間の活動によって排出される二酸化炭素量の10%を排出、全産業中2番目に水を多く消費し、マイクロプラスチックや染料による海洋汚染も深刻な地球環境汚染産業として知られる。
また、世界で何百万もの雇用を生み出しているが、賃金の低さや職場の安全性に関する労働環境問題が多く指摘されている。
そのため、現状の産業構造の抜本的な改革が求められている。
具体的に何をしたのか
同社は持続可能なファッション産業を実現する「良いファッション」の条件として、Good Materials、Good Economy、Good Energy、Good water、Good Livesという5つのグッドを提示。
さらに、投資ファンド『Good Fashion Fund』を創設し、ファッション産業におけるイノベーション創出を志すスタートアップに向けてアクセラレータプログラムとスケーリングプログラムを提供。スタートアップへメンターや専門家によるアドバイス、資金、オフィス、実証実験のフィールド、大企業とのマッチング等を提供する。南アジアの工場は生産や労働の実証実験の場になっている。
アクセラレータプログラムでは、毎年有望なスタートアップを10〜15社選考。重点的に投資する分野は、「原材料」「処理方法」「製造方法」「透明性」「トレーサビリティー」「廃棄方法」「労働者のエンパワーメント」「パッケージング」等。アクセラレータプログラムを経てブラッシュアップされた事業や技術は、スケーリングプログラムにて大企業と共に市場でテストされ、拡大を目指す。
体験型ミュージアムでは、地下「歴史」、1階「現在」、2階「未来」というテーマでインタラクティブな体験を構築、学ぶだけではなく自分事としてファッション産業について考え、訪れた次の日からアクションに移せるような仕組みを提供している。
Fashion For Good:https://fashionforgood.com/
3.Forest Green Rovers (FGR)
世界で最も環境に配慮した真に持続可能なサッカークラブ
画像出典:https://www.zaha-hadid.com/architecture/forest-green-rovers-eco-park-stadium/
概要
Forest Green Rovers(通称FGR)は、世界で最も環境に配慮したサッカークラブ。
スポンサー企業・サポーター・地域の学校など、様々なステークホルダーと共に、スポーツを起点とした持続可能な社会を目指し、体現するための様々な取り組みを行う。
背景
1889年イギリスでの設立から、様々なリーグで活動してきたが、2010年にエコトリシティ(環境に配慮したエネルギー供給企業)所有者が主要株主となり会長を務めた際、クラブとして環境配慮への取り組みを始める。そこから、持続可能な社会に向け、ソリューションと代替案の提供に焦点を当てて活動を続けている。
具体的に何をしたのか
あらゆる選択において費用よりも環境を優先し、持続可能性・倫理的問題・社会的問題・生物多様性を考慮することを表明し、実行している。
たとえば、スポンサーと協力し、クラブで使用するすべてのもので環境に配慮。選手の食事や来場者への提供フードをビーガン化し、スタジアムでも100%のグリーンエネルギー活用(グリーン電力やガス、雨水によるピッチの灌漑)などを進め、革新的な取組として数々の受賞履歴がある。
また、地域の学校・組織・スポーツクラブと協力したコミュニティを運営も特徴。あらゆる年齢のメンバーが、社会的課題解決に取り組むための教育・動機付け・アイデアを得られる。イギリスの国技であり、強い文化として根ざす「サッカー」が媒体となっている。その他、社会的弱者への配慮、人種差別撤廃など、地球上のあらゆる課題への取り組みがサッカーを通して行われる。
スポンサーとの協力だけではなく、地域との結びつきが強いサッカークラブのパワーを最大限に利用し、コミュニティ参加者と持続可能社会を作っていく、スポーツチームの新しい在り方の一つである。
Forest Green Rovers:https://www.fgr.co.uk/
画像出典:https://www.gloucestershirelive.co.uk/news/gloucester-news/school-pupils-team-up-football-37739
4.宗像国際環境会議
世界文化遺産という国際的発信力を強みに官民学が共に取り組む海の環境保全活動コンソーシアム
画像出典:https://www.munakata-eco.jp/
概要
普段見えづらい”海の環境問題”を起点に、研究者・大学・企業・学生・NPOなど立場を超えた人々が年に一回集まり議論する、“環境版ダボス会議”である。海の環境保全の啓発のためのシンポジウム、講演会、交流会、フィールドワーク、子どもたちの育成プログラムを実施する。
背景
宗像市は福岡市と北九州市の間に位置する人口9万7,000人ほどの地方都市。2017年に「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群が、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。
世界遺産登録の機運が高まる2014年、地球の温暖化、磯焼け問題、プラスチック等の漂着ごみ問題などの影響で年々厳しい状況に置かれる漁業関係者の声を聴き、環境問題に長年携わる経験を持つ宗像大社の宮司を中心に、宗像市と共に「海の環境保全を進めていくべき」との思いで委員会が設立された。
具体的に何をしたのか
宗像というローカルなフィールドで大学や企業と地元の学生や漁協が組み、実証実験やエコツーリズムの事業化を試行しつつ、国際会議では県知事や環境省の方も出席し、国際的な研究者や経営者と共にグローバルな視点で考えるという「Think Global Act Local」を体現している貴重な国内事例である。
また、こういった環境活動はいろいろな人が集まれば集まるほど『地球環境を元に戻したい』という大きな目的は同じでも、解決手法で分断を生むこともあるが、この活動は宗像大社が中心にいることで、アニミズムの世界観で環境問題を”心の問題”として捉え、あらゆる立場の人が気持ちを重ねられるため、ゆるやかなまとまりをつくっている。
さらに、宗像の取り組みを元に、世界遺産の観光としての活用と、環境保全活動を同時に実践していくための広域ネットワークを構築する構想も興味深い。
宗像国際環境会議:https://www.munakata-eco.jp/
このように、この場所の歴史や文化から生まれる強いコンセプトとストーリー、地元から県外・国外の関係者を同じ場に巻き込み、実践と議論、さらには人の育成に横断的に取り組むパワフルな活動が日本発で起きていることにとても感動しました!
昨年初めてオンライン開催され、なんと全セッションYoutubeで公開されています。
個人的なオススメは3つあるんですが、この記事でもご紹介した日本環境設計の高尾さんが登壇されている
「社会貢献事業 エコロジーとエコノミーの融合」のセッション↓
あと2つは
「サスティナブル・ツーリズムとレジリエントな環境づくり」
星野佳路/星野リゾート代表取締役社長、高橋政司/ORIGINAL Inc.執行役員
「海の神殿「宗像」山の神殿「富士山」」
川勝平太/静岡県知事、小川洋/福岡県知事、葦津敬之/宗像大社宮司
が面白かったです。リモートワークのお共にぜひ・・
・・・
事例の紹介は以上です。
気づき
今回取り上げた4事例ですが、見返してみると、いずれも消費者や市民を巻き込んで共に環境課題に取り組んでいるものでした。
消費者や市民との接点を
・Bringは小売店の店頭
・Fashion For Goodは博物館
・FGRはサッカークラブ
・宗像国際環境会議は神社
を介して持っています。
企業だけが取り組んでも市場がない、市民の意識だけが高まっても選択肢がない。
この両方を繋ぎ、共に育てていくという共創の取り組みが、これからの社会をより持続可能なものにしていく、ひとつのあり方ではないでしょうか。
おわりに
たくさん調べて書いておりますが、もし情報に不足や誤りなどありましたら、できるだけすぐに直しますので、教えてください。
※宗像国際環境会議は宗像大社宮司/葦津さまと宗像国際環境会議運営委員会の事務局長/養父さまへのインタビューを元に作成いたしました。お二人をお繋ぎ頂いたFCAJ住田理事にもこの場をお借りしてお礼申し上げます。貴重な機会をありがとうございました・・・!
そして、今回はなんと!!!!
パーパスモデルを一緒に書いてくれる人が2人もふえました😭👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏
「嬉しすぎる・・・!!!!!」
それぞれ書いたものをレビューしあって、私のnoteで紹介させていただいております。
1.日本環境設計 きょん
2.Fashion for Good まき
3.Forest Green Rovers あすか
4.宗像国際環境会議 きび
図解作成と監修と多大なるサポートは安定のチャーリーです。
今回は個々人がこれやってみようかな!という事例を図解しましたが、候補に挙げていたエネルギーや治水事業など、まだまだ取り上げたい事例があったので、環境シリーズ第二弾も異なる切り口でやりたいなと思います!
現在パーパスモデルで事例をまとめる本の出版のために、いまは事例あつめをしながら、分析をしつつ、こうしてできたものから徐々に公開しています。
「これももしかしたらパーパスモデルでかくといいのでは?」という推し事例があれば、ぜひ教えてください!(今回もFGRは推し事例を共有してもらってしりました・・・☺️)
次は官民連携の事例を集めて書きたいなあ、なんて思っています。(できるかなあ・・・👀)
一緒に書いてみることに興味あるかた、推し事例があるかた、ぜひTwitterDMなどで気軽にお声がけいただければ幸いです。
以上です。