「不非時食戒 〜仏教的プチ断食〜」2020年10月15日の投稿
※この記事は以前に書いていたブログのコピペ(一部訂正など有り)です。
仏教の戒律のなかには飲食に関する規定がいくつかあります。今回は私も実践している不非時食戒についての概要とメリット・デメリットなどを紹介いたします。
不非時食の概要
不非時食(ふひじじき)とは正午から翌朝の日の出まで固形物を食べないという決まりで、これは律(出家者の規律)、沙弥戒(見習い僧の規律)、八斎戒(在家者が特定の日に守るべき戒)などに規定されています。
なぜこのような規定があるのかについては諸説あり、欲望の抑制、食料の備蓄(≒蓄財)の禁止、日に何度も托鉢に行くのは布施者の負担になること、それによって僧団の外聞が悪くなる恐れがあること、などが挙げられます。断食すること自体は目的ではありません(タイトルにはわかりやすいように「プチ断食」と書いてしまっていますが…)
東南アジアやスリランカに多いテーラワーダ仏教の僧侶の多くはこれを遵守していて、戒律護持の象徴的な行為と見做されています。一方、チベット仏教では広く認知はされているものの実践しているひとはそれほど多くないのが現状です。その理由としてはインドとチベット本土の気候風土・元々の生活習慣の違い、律に規定された罰則が軽微であること、実害が少ないこと、栄養価の低い食事でも健康維持をするためなどと言われています。
日本の寺院では夕食のことを「薬石」と呼ぶことがありますが、これは食事ではなく薬であるという名目で摂取していたためです。体調不良を治すための薬はいつでも摂取することが許されています。
非時に口にしてよいものは地域や宗派、寺院・団体によってかなりの違いがありますが、一般的には水やお茶、果実を絞った果汁、清涼飲料水、砂糖、蜂蜜、油などの液体は摂取が許されていますが牛乳やヨーグルトは禁止されているところが多いです。厳しい寺院では加熱することが食事を作る行為とみなされるため、お湯や熱いお茶も不可とする場合があるとも聞きます。
不非時食のメリット
・時間に余裕ができる
自炊の場合には材料の買い出しから調理、食べて片付けまで合算すると2時間程度はかかってしまうと思います。外食にしても往復と食事時間で1時間弱。(仕事帰りにコンビニでお弁当を買ったり牛丼チェーンに寄る場合は食事時間のみで15分程度かもしれませんが…)これがそのまま空き時間になります。
・お金がかからない
単純に1食分の食費が浮きます。ひとによるとは思いますが昼食をに多めにしたり、少しいいものを食べたとしてもその費用はおそらく1食分には届かないでしょう。
・総摂取カロリーが(おそらく)減る
これもひとによりますが朝食・昼食を多めに食べても夕食1食分のカロリーを摂るのはなかなか難しいと思います。また食欲が自然に食欲が減ってくるという情報もあります。興味があれば不非時食に似た生活をする「16時間断食」や「リーンゲインズ」という健康法について調べてください。
ただし、非時に口にしてよいものだからといって清涼飲料水を大量に飲むなどするとこれらのメリットがあるどころが健康を害することは言うまでもありません。タイではこれが僧侶の健康問題になっていると聞きます。
・胃腸にやさしい
私は胃腸の調子を崩しやすい体質なのですが不非時食をはじめてからこれらの頻度が減りました。胃や腸も休む時間が必要だったということでしょうかね?
不非時食のデメリット
・お腹が空く
特に初めの10日間ほどは夕方以降かなり空腹感に襲われます。しかしこれは続けていると徐々に慣れて平気になってきます。私は続けていたら空腹感と食欲が直結しにくくなりました。以前は「お腹空いた!」→「何か食べたい!食べなきゃ!」だったのが最近は「お腹空いた!」→「まあいいか」で済んでいます。
・会食のとき困る
日本の世間一般では会食は大抵夜です。すべて断るのは仕事上・人間関係上難しいこともあるでしょう。また参加するにしても飲み物だけで過ごすというのも苦痛かもしれません。(多くの場合は飲み物だけでも同じ会費を支払いますし…)
・栄養・カロリーのバランスが難しい
必要な栄養やカロリーを2食+間食・非時にOKな飲食で賄おうとすると今までと3食と同じ献立というわけには行きません。とはいえ、これはそこまで難しく考えるなくてもよいと個人的には思っています。
私の場合
上記のように戒律に定められている以外にもメリットのほうが大きいと感じたので私は基本的には不非時食にしています。ただし私の所属宗派は不非時食の規定は特になく、制限する時間や飲食物などは個人に委ねられているため、私は以下のようなゆるいルールで行っています。
・昼食が正午を超えても気にしない。
多くの場合昼食が12時からなので現実的に午前中に完了するのは難しいため。
・どうしても昼食が食べられないときは夕食OK
普段はあまりないのですが日本でお盆の棚経のときなどは昼食を取る時間がないため。
・非時に牛乳・ヨーグルト・チョコレート・飴などOK
タイの僧侶の友人の宗派では上記がOKとのことなのでそれを参考に。
・非時でも少量のお茶菓子程度ならOK
私の戒和上(戒律を授けてくれた師匠)であるダライ・ラマ14世猊下が「基本は不非時食だが、たまにビスケットなどを食べることがある」と仰っていたため。
・会食の場合はOK
家族(特に祖父母)や友人など、私が食べないことによって相手が悲しんだり迷惑したりするような場合。もちろんこの場合でもお酒は飲みません。また理解が得られる会食では飲み物のみにしています。
甘い基準ではありますが元々お菓子類はあまり食べませんし、昼食が摂れないことや会食で夕食を摂るのは年に数回です。これが夕食は食べない代わりにお菓子をバクバク食べるとか、頻繁に会食と言って夕食を摂るなどにならないよう注意しています。
実践に当たっての注意点
食事は健康に直結するものです。もし不非時食をはじめる場合には慎重に自身の体調を観察し、決して無理をせず体調に異常を感じた場合は即座に中止してください。また健康な状態ではない方、特に食事に関する制限などがある方にはおすすめできません。
私は今の所、体感では体調良好なのですが、ギュメ寺の食事(菜食のおかず1品とパンかご飯)も相まって去年1年で体重が8キロ減っていました。健康診断もここ数年受けていませんので本当に健康なのかは不明な状態です。
不非時食でなくとも仏道修行はできますので、できない(しない)からといって気にする必要はまったくありません。(※不非時食が定められた宗派や寺院・団体で修行する場合でない限り)
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