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列車に揺られて三重巡り(近鉄フリパ旅 その2)

一日目はこちら


そういえば、今回使っている企画乗車券「近鉄全線3日間フリーきっぷ」の話をしていなかった。これは、近鉄全線が3日間乗り放題となる企画乗車券である。ただ、同じようなもの(近鉄週末フリーパス)が、それ以前から販売されている。では、それとは何が違うのか。相違点は以下のとおりである。
・3000円(週末フリーパスは4200円)
・いつでも利用できる(週末フリーパスは土日を含む3日間)
・期間限定(3月末まで、現在は発売終了)
つまり、1日あたり1000円と更に安くなり、そして平日にも使えるようになったというものである。
では、本編に戻ろう。


3月29日、旅の二日目は松阪駅前の東横インから始まる。
朝食をとり身支度を整え、7時過ぎに宿を発つ。駅前ロータリーには通勤通学の人たちがバス待ちの列をなし、人気のなかった昨晩とまた違った様子をみせる。

松阪駅からは近鉄線に乗車して、西へ来た道を戻る。伊勢中川を経由し、大阪線の川合高岡駅で下車する。

駅を降りて南へ5分ほど歩くと、JR東海の一志駅が見えてくる。ここからは名松線というローカル線に乗車する。
この路線は、名張と松阪を結ぶことを目的として建設が始まった。しかし、途中で参宮急行電鉄が同区間を結んでしまったため名張まで結ばれず、途中の伊勢奥津駅までとなった。

ラッシュ時の増結運用

列車は田園風景の中を軽快に走る。ボックスシートに座り、流れる車窓を眺めながら、ボーッとする。雑念を忘れて無心になれる、至福のひとときである。

一志駅から列車に揺られること約20分、この列車の終点である家城駅に着く。そして、ここからは伊勢奥津行きの列車に乗り継ぐ。

家城駅から先、より山間部を走るようになる。実際、名松線は2009年の台風で影響を大きく受け、家城―伊勢奥津間は長らく不通となっていた。その際、バス転換の話も出たようだが、地元住民や自治体の要望もあり、2016年に復旧した。

列車が進むにつれ勾配も大きくなっていき、エンジンを唸らしながら、山間を縫うように走っていく。

途中、警笛を鳴らして速度を落とすので何事かと思ったら、鹿とすれ違った。どうやら鹿が線路に立ち入ったようだ。そういうところなのである。
そして時刻は9時になろうとする頃、列車は終点の伊勢奥津駅に到着する。

伊勢奥津を観光する

この地区にはレンタサイクルポートがいくつかあり、そこでは電動自転車を借りることができる。しかも、その料金は無料(!)。
伊勢奥津駅そばの観光案内所がその一つで、列車を降りて、まずはそこへ向かう。
案内所の方によると、「ミツマタ群生地」というところが見頃で良いらしい。特に目的地を決めていなかったので、そこへ向かうことにした。

教えてもらった駐車場を目的地に、西へ貸してもらった自転車を走らせる。山間部なので上り坂が続くところもあるが、電動自転車なので楽に走ることができる。そして、道に迷いつつも、駐車場に到着する。
ここからは「ミツマタ群生地」まで、徒歩で向かう。

進むにつれ民家もなくなり、木々に囲まれた道に入る。
そして、群生地を一望できるスポットに到着する。

ミツマタとはこのような花。これが辺り一面に、無数に広がっており、まるで異世界のようである。時間を忘れて楽しめた。

まだバッテリーも残っているので、もう少し観光することにした。
ここからはさらに西へ走らせる。三多気の桜という桜がきれいらしいスポットを訪れたが、まだ開花していなかった。そしてここまで来ると、奈良県はもうすぐである。

この日は曇り空で少し寒かったが、電動自転車による快適なサイクリングを楽しめた。また、観光案内所で販売していた手作りのご飯も美味しかった。

13時の列車で松坂行きの列車で去る。4時間の滞在だったが、大いに楽しめた。また別の季節に訪れたい。

伊勢神宮参拝

そして来た道を戻るようにして東へ進み、松阪を超え、今度は五十鈴川で降りる。

ここからは伊勢神宮の内宮を目指す。時刻は15時台、おかげ横町は観光客も多い。特に赤福の本店?は長い列ができていた。
人の流れに任せるように内宮へ向かう。しかし、小雨が降ってきたので、来た記念にお守りだけ買って、途中で引き返すことにした。

途中、立ち寄った酒屋で甘酒をいただいた。最後の一杯だったらしい。小寒い中で飲む温かい甘酒は、体に染み渡るようで、なかなか美味しかった。

そして駅に戻り、こう思う。このまま終わるのもやるせないなと。そこで、あることを思いつく。

△再履修

宇治山田発名古屋行きの急行に乗車し、帰宅する方向と真逆に進む。

ところで、この列車(=近鉄5200系)は、自分の好きな車両ベスト3に入る。座り心地がよく、音も良い。名古屋までは2時間弱を要するが、これなら長時間の乗車も苦にならない。

そして到着したのは米野駅。昨日に続き、やはり黄金跨線橋を訪れる。

この時間では、暗闇に輝く名駅のビル群を背景に名古屋車両区を観察することができ、日中とはまた違った楽しみ方をすることができる。十数分の滞在だったが、来てよかったと思えた。

例のビジュアルを再現するなら、やっぱり日没後
構内を移動するキハ85
今朝乗ったキハ11と都会のビル群

帰路

再び名古屋駅に戻りると、ここからは特急に乗車し、いよいよ帰路につく。乗車するのは、名阪特急「ひのとり」。宇治山田駅で特急券を購入しておいたのである。

「ひのとり」には初めて乗車する。この車両はレギュラーシートでも格別に快適だと聞いていたが、これが本当に快適。日が暮れて車窓も見えないからこそ、この快適さをより味わうことができる。

座席を倒したく最後尾の席を押さたが、バックシェルがあるので、その必要はなかったかもしれない
夕食は赤福。これも宇治山田駅で買った。

いつまでも乗っていたいが帰れなくなるので、大和八木駅で下車する。

そして京都行の特急に乗り継ぎ、22時40分に終点の京都駅に到着し、2日間の旅は終わりを迎える。

おわりに

とあるYoutuberが「旅の楽しみは最後にとっておけ」的なことを言っていたが、実際に最後に楽しみをいれることで、気持ちよく旅を終わらせることができたと思う。「終わりよければ全てよし」とも言うように。

他方で、名松線は松阪まで乗れば、時間を短縮できたというような反省点もある。旅において、限られた時間の中でどう行動できるかは計画と準備次第であるならば、それは入念しておくべきだろう。こうした反省は、次回に生かしたい。

いずれにせよ、2日間の小旅行だったが、得られるものも多く、有意義なものにできた。

以上