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焼酎

メンバー一同酒浸りの家族集団があり、僕はその一員である。叔父はタダで高級酒が飲めるからという理由で酒税専門の収税官吏になった人間だし、甥姪ガキ軍団すらも好物は甘酒と酒饅頭という始末で、婆さんは晩年まで飲み続け、多分酒の飲みすぎで死んだ。とにかく生まれてから死ぬまでやたらと酒が身近にある。僕は二十歳の頃とかは酒全般アンチだったが、今やそんなの関係ない。酒場に行けば同僚に引かれるくらい飲む。みんな頭がおかしくなって割り勘をしてくれるので申し訳なくなる。

とはいえ、飲むものにこだわりを持っているわけではなく、チューハイなどの市販酒で済ませることが多い。甘い苦い以外の味のバリエーションと、基本退屈な日常に酩酊を差し込んで楽しめればそれでいい。

……と思っていたのだが、最近市販の缶酒にもかなり既飲感(そんな日本語があるか?)を覚えるようになり、晩酌の満足度が下がってきた。レモンサワーってこんな味だよね、がかなり予測できるようになり、僕が酒に求める「甘い/苦い以外の味のバリエーション」の部分を担保できなくなってきたのた。

そこで次のフィールドとして、焼酎に手を出すことを考えた。理由は簡単で、安くてバリエーションが豊富であることに他ならない。焼酎といえば「地域の古臭い居酒屋にあるなんかくさいやつ(ちいくさ?)」というイメージが持たれており、安かろう悪かろうの推測が働く人も多いかもしれない。しかし、実際のところ焼酎が安い理由は地産地消品であるところが大きい。そのため、同じ値段を出すとしても輸入酒よりクオリティが高いものもたくさんあるのだ。そして日本全国で作っているので、味の違いにも期待できる。脳にぶち込める刺激の分散を最大化させるにはうってつけだ。

けどそもそも焼酎というのは何か、というのは少しでも酒を飲む人であればわざわざ書くまでもないのだが、日本の蒸留酒である。でんぷん質 or 糖質を含む原材料を麹菌・酵母菌で発酵させ蒸留して取り出した、アルコール分を含む液体だ。面白いところは、でんぷん質を含んでいればどんな原材料からでも作れるので、原材料や蒸留方式の違いがさまざまな風味の違いを生み出し、米からしか作らない日本酒と比べても圧倒的に多くのバリエーションが存在する点だ。

もう少し書くと、焼酎には甲類焼酎と本格焼酎(乙類焼酎)という分類がある。甲乙で並んでないことに違和感を抱くかもしれないが、それはそう。というのは、昔は普通に本格焼酎は乙類焼酎と呼ばれていたそうなのだが、見え方への気遣い(「乙類」だったら2番手っぽく見えるじゃない!という文句への対応)から、なんかかっこいい「本格焼酎」と呼称してよいと国が定めたのである。じゃあ翻って甲類は本格的な品質じゃないのかよと思われるかもしれない。もちろんそんなわけはない。

じらさずに書くと、これらの違いは蒸留方式の違いらしい。本格焼酎は、蒸留時の蒸留層が一つという、伝統的なやり方と同じ方法で作られる。その結果、諸々の成分の除去率は低くなり、原材料の性格を色濃く反映した味になる。焼酎は芋くさい、というふれこみは、だいたい本格焼酎のことを言っている。甲類焼酎は、近代になって登場した連結蒸留器による蒸留で作られる。この方法は蒸気を余すことなく蒸留させられるので効率的に生産ができるほか、原材料の成分はかなりフィルターされることになり、純アルコールに近いクリアな味わいになる。スーパーに売ってるホワイトリカーというのは、甲類焼酎のことだ。

とにかく、この安くて幅広い焼酎を生活に取り入れることで、晩酌品質を向上させることが今回の施策の狙いである。あと、なんかこういううんちく語れたらカッコよくない?

今回は風味のバリエーションを増やすのが目的なので、もちろん本格焼酎を攻めていく。個別の銘柄の話は別の記事でやりたいので、この記事は終わり。

おしり


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