本当は面白い物理の授業 011 空気抵抗と落下運動
ここまで、「自由落下」「水平投射」「斜方投射」を勉強しました。
それらの計算では、「空気抵抗」を無視しました。
今回は、「空気抵抗がはたらく中での落下」について説明します。
皆さんも日常生活で、以下のようなことを感じたことがあると思います。
「新聞紙のような表面積の大きいものは、ゆっくりと落下する」
「卓球のピン球のような軽いボールも、ゆっくりと落下する」
それが、「空気抵抗」の影響です。
通常、地球上で物体が移動する場合、空気をかき分けて進む必要があります。
下図は、「ボールが空気をかき分けながら進んでいる」イメージを表しています。
ボールが下向きに落下していると、ボールから見た空気の流れは上向きになります。
そして、物体は落下しながら、重力により加速します。
ただし、
「空気抵抗」は「落下速度に比例」して、大きくなります。
(実際には、速度が遅い限られた条件のみでしか比例しません)
しかし、ある程度の速度に達した後、速度が上がらなくなります。
そして、その物体は一定の速度で落ちていきます。その速度を「終端速度」といいます。
この「終端速度」は、軽くて、大きなものを落下させると、その現象を簡単に見ることができます。
「終端速度」を体感する方法はあるでしょか。
それは、「スカイダイビング」でしょう。
一般的に、スカイダイビングの終端速度は、200km/h程度(両手両足を開いてうつ伏せの状態)と言われています。
しかし、スカイダイビングはハードルが高いですね。
ほかに「終端速度」を簡単に体験できる方法はないでしょうか。
それは「プールの中」です。
「自分の体」=「落下しているボール」
「前に進む(歩いている)力」=「重力により落下する力」
「水」=「空気」
だと仮定してください。
「プール」の中を「ゆっくり」と歩きます。何とか前に進めます。
しかし、徐々に速度を上げていくと、ある時点で、それ以上は早く歩けなくなります。
それが「終端速度」です。
それでは、「空気抵抗」は、どの様に計算するのでしょう。
「空気抵抗」は「物体の速度に比例する」ので、
空気抵抗: f
物体の速度: v
空気抵抗係数 : k
とした場合、
f = k v
と表されます。
それでは、単位を見てみましょう。
「f」の単位は「N」つまり「kg・m/s^2」
「v」の単位は「m/s」
そうなると、
「k」の単位は「kg/s」
ということになります。
この「空気抵抗係数」の単位を見ても、しっくりこない人がほとんどだと思います。
ここでは、
「空気抵抗係数は、物体によって異なり、実験によって、求められるものだ。それは、質量によって影響を受けるんだな」
という程度の認識で問題ありません。
さらに、
落下している物体の質量: m
落下している最中の加速度: a
とすると
ma = mg - kv
つまり、
「物体が鉛直下向きに加速する力」=「物体が重力に引っ張られる力」ー「空気抵抗」
ということになります。
時間経過ごとに図示すると、以下のようになります。
物体が加速していき、
「物体が重力に引っ張られる力」=「空気抵抗」
となった時、
それ以上加速しなくなります。
ma = mg - kv
= 0
再度記載しますが、
この「空気抵抗」の計算は、限られた条件のもとでの計算です。
そして、高校物理では、ここまでです。
実際の「空気抵抗」の計算は、形状が複雑になり、速度が早くなると、計算の複雑さが増します。
コンピュータを使って、解析する必要が出てきます。
この解析を専門にしているエンジニアがいるくらいです。どれだけ複雑かは、想像できると思います。