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文化をアーカイブするキャラクターアート――藤城嘘個展「Eyes over the horizon」展

 新年あけましておめでとうございます。Miaki Galleryでは、2025年最初の展覧会として、藤城嘘(Fujishiro Uso)さんの個展「Eyes over the horizon」を開催いたします。最近インフルにやられてあまり設営に参加できなかったのですが、完成した展示を見た感想を少しお話しできればと思っています。

「Eyes over the horizon」展 展示風景

 実は私自身、アートに限らず“ちょっとマイナー”なものが好きで、何かが主流になると急に興味を失ってしまうという、ちょっとひねくれたところがあります。東京のアートフェアを見に行ったときも「キャラクターアートがむしろメジャーになってきてるんじゃないか」と感じてから、正直なところ前ほどの関心が持てなくなっていました。でも、藤城さんの作品を見て、「あれ、私の視野ってちょっと狭くなってない?」って気づかされました。

「絵画のなかに、「アニメアイ」が描かれる。するとキャンバスそのものが、キャラクターになったかのように思えてくる。次に、「アニメアイ」の下に、一本の水平線が書かれる。それだけで突然そこに、大きなスケールの風景も、輪郭を得たひとつの顔も、同時に見えてくる。さらに複数の水平線が引かれるとき、あるいは「アニメアイ」が分裂と増殖をはじめるとき、「キャラクターの存在は不確かだ」という感覚と、「キャラクターたちはすぐそこに潜んでいる」という感覚が、まぜこぜになって押し寄せる。」 By 藤城嘘

 初めて作品を拝見した際、まず圧倒されたのは、その「情報量」でした。ご本人から制作について伺ったところ、アニメやマンガといった文脈を、作品という壮大な「キャンバス」に再構築するようなスタイルで制作されているという印象でした。それはまるで、高次元の情報を、次元を落としながら展開していくような試みだと感じました。だからこそ、作品には膨大な情報が凝縮されているのだと思います。

他のキャラクターアートではあまり見られない情報量

 キャラクターアートといえば、作家の内面や感情をキャラクターに投影したり、社会批評的な側面を持たせたりと、すでに確立された「観る角度」が色々あります。でも嘘さんの場合はまた新しい視点で、インターネットやVTuberやボーカロイドといった現代のカルチャー、ひいては現代社会そのものを、ある種の"記録"として残そうとしているように感じます。それは、まるで現代を描いた壁画のようにも見えます。この作品が2000年後に発掘されたとしたら、未来の人々はどのように分析するのでしょうか。そんな想像が膨らむばかりです。

黒板やコンクリートのような下地表現

 さらに、アメリカのグラフィティや抽象表現主義の影響が感じられるところも興味深いんですよね。日本だとグラフィティがまだ自由に発展しづらい面があると思いますが、今回の新作で嘘さんは新しい絵の具を使ったりして、黒板やコンクリートみたいな下地を表現しています。まるで、街の壁に描かれた落書きをそのままギャラリーに運びこんだかのようで、そういう点にも惹かれています。

「Eyes over the horizon」展 展示風景

 2025年の幕開けに、この「Eyes over the horizon」展を皆さんにご覧いただけるのを、本当に楽しみにしています。私自身も、藤城さんの作品を通じて、改めてキャラクターアートを再認識・再探索しているところです。ぜひ、みなさんにもこの独特の世界を体験していただきたいです。ご来廊を心よりお待ちしております。

【展示情報】

藤城嘘 個展「Eyes over the horizon」

会期:2025年1月18日(土)〜2月8日(土)

開廊曜日と時間:
 水・木 / 予約制 13:00-19:00
 金 / 13:00-20:00
 土 / 11:00-18:00
 日・月・火 / 休廊

※水/木の来場予約はフォームにて受付:https://miakigallery.jp/contact

レセプション:2025年1月25日(土)17:00〜20:00

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