
Photo by
ekakinonakagawa
ほぼ毎日ほぼ500字短編:その103「サスペンダー」
「アリナー、お待たせ!」
「ミキ! 私も今来たとこ」
6月の晴れた日。私は駅前でミキと待ち合わせをしていた。
ミキは、涼し気なクリーム色の半袖ブラウスに、黒のパンツ姿……だけど。
「ミキ……その紐は?」
「紐?」
「ほら、肩からパンツにかけて、2本」
「あぁ、これ? サスペンダー」
「さすぺん、だー?」
ミキが噴き出す。
「アリナ、サスペンダー見るの初めて?」
「うん」
「そっか、ごめん。これサスペンダーって言ってね、パンツのずり落ち防止や、ウエストを高い位置で固定するために使うの」
「へー、そんなのあるんだ」
「私も、今日初めて使うんだ。ちょっと慣れてない」
ミキは苦笑いを浮かべる。
「これ、トイレの時はどうするの?」
「クリップを逐一はずすかんじかな。ちょっと手間だけど」
「ふーん」
思わずサスペンダーのクリップに手が伸びる。
「ちょっとアリナ! 今、はずそうとしたでしょ?」
「ふふ、バレた?」
「バレバレ! パンツ、ちょっと緩めだから、いま外されるとマジで困る」
「ごめんね、冗談だよ。とりあえず、目的の映画見よ?」
ミキの警戒心は解かれていないようだったけれど、私は気にせず、ミキの右手を握った。
2025年2月16日 pixiv創作アイディアより