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ほぼ毎日ほぼ500字短編:その32「王冠」

「お前さん、この王冠が気になるのかい?」

「そうかい、そうかい。この王冠は、はるか昔……何世紀だったか。まぁ、そんなことはもうよい。とにかく、今よりもはるか昔に栄えた国の、王様がかぶっていたものだよ。その国は『統一国』と呼ばれてね。陸地にあるすべての国を治めておった。それほどの国の王様だ。金をベースとして、ルビー・サファイア・エメラルドが散りばめられた、この王冠をかぶるのにふさわしかったのさ」

「だがある日、反乱が起きた。きっかけは、誰も覚えちゃいない。ただ、たしかだったのは、その反乱が『統一国』を今の『分裂国』にするほどの勢いだったってことさ。軍隊を持っていなかった『統一国』は、脆くも滅び去り、王を失った国は、それぞれが新たな王を作り、分裂していったんだ」

「なぁに、悲しいことじゃないさね。国が分裂したことで、それぞれの特色が発揮されているからねぇ。それでも、私も時々思うんだよ。誰もが平和に暮らしていた時代が懐かしい……とね」

「どうしてそう思うのか? ふぁっふぁ。私もはるか昔に『統一国』に住んでいたからだよ」

2024年12月7日 pixiv創作アイディアより

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