ほぼ毎日ほぼ500字短編:その51「黒」
「そういえばルウナって、黒い服が好きだよね」
マモル君が目線で、私の全身を舐めとる。
「……うん。黒い服着ていると、なんだか落ち着くから」
「そうなんだ。似合っている。俺も、黒い色見ていると落ち着くよ」
それは……私の服だけが対象?
それとも、黒い服を着こなしている私も対象?
「マモル君は、好きな色はあるの?」
紫芋のソフトクリームを頬張っていたマモル君は「んー」と思案する。
「そうだなぁ。白かな。服のコーディネートもしやすいから」
黒とは対極の色。少しだけ気落ちした。
「そっか……」
「だけど、好きな色と人は関係ないよ。俺はそのままのルウナが好きだよ」
私の心を見透かしたような言葉。だからマモル君が好き。
「ありがとう……」
「ほら、ソフトクリームが溶けるぞ。早く食べないと」
慌てて、黒ごまのソフトクリームを口に含む。口の中が黒ごまの風味と甘ったるさでいっぱいになった。
マモル君も紫色のソフトクリームに口をつけている。自然と口元に目がいってしまう。
マモル君を私だけのものにしたい。他の女には渡したくない。
こんなふうに思ってしまう私の心も、真っ黒に染まっているのかもしれない。
2024年12月26日 pixiv創作アイディアより