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ほぼ毎日ほぼ500字短編:その68「ぴえん」

「ハルユキって、自分に自信ないだろ?」

すすっていた紙パックのジュースを吹き出しそうになり、慌てて飲み込む。

「どうした、急に?」
「見ろよ、これ」

マサトが差し出したのは、メッセージアプリのトーク画面。

「お前『ぴえん』のマーク、使いすぎなんだよ」

マサトのスマホ画面を右手でスクロールする。俺の返信には、ほぼ必ず「ぴえん」マークの絵文字があった。

「……本当だ」
「無意識かよ。余計にたちが悪い」

マサトがスマホを引っ込める。

「本当に無意識だったんだよ。でも自分に自信がないわけじゃない」
「本当かぁ? そうだとしたら、相手の良心に付け込もうとしているのか?」

今日のマサトは、妙に棘がある。

「マサト、どうした? 今日やけに機嫌悪くないか?」
「……さっきのトーク画面で気づかないか?」

俺は急いで、自分のスマホを取り出してトーク画面を開く。少し遡ると、俺がマサトの誕生日にプレゼントを贈る約束をしていた。
そして誕生日は昨日。

「……あ」
「『あ』じゃねぇよ! 本当に忘れていたなんて」
「ごめん、普通に忘れてた」

顔の前で両手を合わせ、謝罪する。

「お詫びに、今夜は俺の奢りでコンビニパーティーしないか?」
「まぁ、今回はそれで良しとしようかな。ハルユキのぴえん顔に免じて」

2025年1月12日 pixiv創作アイディアより

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