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ほぼ毎日ほぼ500字短編:その117「アイドル」

アイドルって、誰かの希望になれるの。
だから私はアイドルになったんだ――。

「……へぇ、アイドル志望」
「はい!」
中堅の芸能事務所「アウルム」に履歴書を持って訪ねた。アポなしの突撃だったから門前払いされる覚悟だったけれど、たまたま社長の住吉さんが通りかかって、流れで面接をしてもらえることに。
「誰か、憧れのアイドルでもいたの?」
「はい。ここ『アウルム』に所属していた、神薙みほかさんです」
住吉社長の眉毛がかすかに動いた。持参した履歴書から、視線を私に移す。
「……悪いが、帰ってくれ」
「えっ。どうし」
「みほかの結末を、おまえも知っているだろう」
そう問われ、当時のニュース番組が蘇る。

『えー、今入ってきたニュースです。アイドルとして活動していた神薙みほかさんが、休養先で亡くなったとのことです』

私は奥歯を噛みしめる。
「知っています。でも、みほかさんが亡くなったのは不慮の事故です。川で溺れていた女の子を助けようとした。ただそれだけの」
「それだけの行いが、世間にどれだけの衝撃を与えたのか。おまえもわかるだろ」
両手を強く握る。
「それでも、みほかさんは私に希望をくれました。『アイドルは誰かの希望になれる』。みほかさんは、私にそう言ってくれました。だから私も、誰かに希望を与えられる存在になりたいんです!」

私は諦めない。みほかさんが最後まで諦めなかったように――。

2025年3月2日 pixiv創作アイディアより

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