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naga_hiro783
ほぼ毎日ほぼ500字短編:その84「コーヒー」
「あれ、コーヒー買わないの?」
インスタントコーヒーの袋に伸ばした手を引っ込める。その様子を、買い忘れたみりんを持ってきたハヤトに見られてしまった。
「うん、高いから」
「え、でもサヨミ『毎朝のコーヒーが至福』って言っていたのに」
ハヤトがみりんを籠に入れながら心配そうな顔をする。
「いろいろ値上げだからさ。私も節約しようかなーなんて」
心にもないことを言う。本当はインスタントでもいいからコーヒーは毎朝飲みたいのに。
それを我慢させるほど、昨今の値上げラッシュは痛いものなのだ。
「うーん、それじゃ」
ハヤトがそう言い、私が手を伸ばしたインスタントコーヒーを手に取り、籠に入れた。
「え!? ちょっとハヤト」
「サヨミのためじゃないよー。俺が飲みたいんだよー」
ハヤト、本当はコーヒーが嫌いなはずなのに――。
下手なごまかし方に、思わず吹き出す。
「わかったよ、ありがとハヤト」
「……へへ、どういたしまして。俺だって牛乳で割れば、コーヒーは飲めるんだよ」
「そうなの? 知らなかった」
2人で談笑しながら、次の食品コーナーへ足を進めた。
2025年1月28日 pixiv創作アイディアより