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ほぼ毎日ほぼ500字短編:その66「和服」

「ノリヒコ、待った?」
「いや、俺も今終わったとこ」

今日はノリヒコと京都に来ている。

「おー。似合うな、着物」
「ノリヒコこそ。袴姿って新鮮」

お互いの格好を見合う。袴姿のノリヒコは初めて見る。いつもは、ほぼスーツ姿だから、和服を着るイメージが湧いていなかったのだ。

「さすがにちょっと動きづらいかなぁ」
「着物だとそうだよな。でも、俺の方はまだ動きやすいからフォローするよ」
「ありがと。それじゃあ行こうか?」
「あぁ」

私達はそろって歩き出す。向かうのは清水寺の有名な、あの舞台の上だ。

「それにしても、依頼人が俺達にも和服を強要するとは……。変わった人だよな」
「そうだね。なんでも『京都の雰囲気を心から楽しみたい』ってご所望だったらしいよ」
「まったく。金持ちの考えることは、俺には理解不能だよ」
「そう言いつつ、仕事はこなすから偉いよねー」
「仕事は別だ。依頼人の命がかかっているからな」

私はそっと、帯の中に携帯した護身用の銃に触る。

「それじゃ、気を引き締めていきますか」
「おう」

私達は「特務専属護衛隊」。
通称「特別SP」。
特殊な状態の依頼人を守る、精鋭部隊に所属している。
どんな状態でも依頼人を守る。それが私達の使命なのだ。

2025年1月10日 pixiv創作アイディアより

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