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【4月30日】毎日強引に小説を書く企画


TITLE:常夏の楽園


わたしには、2人の妹と、2人の弟がいる。
いわゆる大家族というやつで、もれなく貧乏だ。

共働きの両親に代わって、
長女の私がいつも妹や弟の面倒を見ているが、
これがなかなか楽しい反面、とても大変だ。

そもそも、わたしだってまだ中学生。
他にやりたいこともたくさんあるのだ。

しかし、夏休みの今なんかはそんなことも言ってられない。
朝早く出ていく両親を見送ったら、急いでを5人分の朝食を作る。
今朝はウインナーと卵焼き、それに昨日の夜の残りの味噌汁だ。

美味しそうにご飯を食べる小学生たちを眺めながら、
わたしは残りを後でゆっくり食べる。
その後、掃除や洗濯をしているとあっという間にお昼の時間だ。

家の窓をすべて開けて、風通しを良くする。
これと扇風機が一台あれば、エアコンは使わずに済む。
お昼は素麺にした。

昼食の分の皿洗いが終わったら、ようやく自分の時間ができる。
下の子たちは、干したての布団でゴロゴロしている。
そこで寝てしまうのも時間の問題だろう。

時計の針は、午後2時を指していた。

額に汗をにじませながら、慌てて自転車に乗る。
向かう先は、近くの市民図書館だ。

夕飯の準備をするために、5時までには帰らなければならないが、
その間はずっと図書館にこもるのが夏休みの日課になっていた。

自動ドアが開いた瞬間に、エアコンの冷気がわたしを包み込む。
自転車でかいた汗が、さっと心地よく引いていく。

受付の人にあいさつをして、昨日読んだ本がある辺りに向かう。

わたしは、本を借りることはしなかった。

涼しい図書館の中で、沢山の本たちに囲まれて本を読む方が
自分が自由であるような気分になるからだ。
第一、家に本を持って帰ってしまうと集中して読める気がしないし、
本を傷つけてしまうかもしれない。

昨日読んだ本を見つけて手に取り、そのまま床に座る。

本の世界に入り込むのに、時間はかからない。

午前中の忙しさで何も考えられていなかった頭が、
たくさんの風景や情報で満たされていく。

周りにも同じようにのんびりと読書をする人たちがいて、
彼らも同じ気持ちなのだろうかと想像すると、より一層この場所が好きになる。

たくさんの知識や物語に囲まれて、
それらが、手を伸ばせばいつでも届く距離にある。
たった数歩歩けば、地球の裏側のことを教えてくれる本に出会えるのだ。

ふと気づくと、もう帰る時間だ。
抱えていた本たちを丁寧に戻し、出口へ向かう。

冷気たちが名残惜しそうに外の熱気に変わる。
セミたちはまだ元気な声をあげている。

やりたいことは沢山あるけれど、
今のうちにやりたいことを沢山見つけておくのだ。

本は、そのきっかけを与えてくれる。

わたしは大きく自転車をこいだ。

200430_毎日小説_改-04

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4月30日は、
図書館記念日

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