見出し画像

【5月1日】毎日強引に小説を書く企画


TITLE:名もなき国の生徒たち


「日本人に化けるためには、和の心を理解せねばならぬ。」

教壇で老人の講師が放った言葉を、生徒たちは懸命に聞いている。

ここは、どこの世界地図にも載っていない国。
この国に生まれた子どもは、世界で活躍する一流のスパイとして
英才教育を受けさせられるのだ。
そして、様々な国のスパイとして活躍できる能力を身に付けたら、
秘密組織のメンバーとして各国へ派遣されることになっている。

「和の心を理解するためには、まず茶道を究めるのが良いだろう。」
老人はそう言って、
緑茶の入れ方や扇の使い方、懐紙を使った菓子の食べ方など、
ひと通りを生徒の前でやってみせた。

しかし、実は何一つ正しいやり方ではなかった。
茶は高いところから注ぎ、扇は開いて振り回す。
懐紙に至っては、ぐしゃぐしゃにして使っていた。

おかげで、老人の周りの汚れはひどい有様であった。
さらに、生徒も真似をするものだから目も当てられない。

しかし、生徒の中に一人だけ完璧に茶道をやってのける青年がいた。
「おい、お前だけやり方が違うぞ。きちんとしろ。」
老人は青年に向かって声をあげた。

「いいえ、これが日本の正しい茶道です。僕は日本のスパイです。」
そういって少年は、瞬時に老人を拳で沈めた。

周りの生徒は誰も助けに来ない。
というのも、他の生徒たちも全員他国のスパイだったからだ。

200501_毎日小説_改-03


ーーーーー
5月1日は、
扇の日
緑茶の日

よろしければTwitterフォローお願いいたします!
twitterでは、画像で見れる小説を作っています!
https://twitter.com/UGA_OKAMOTO