No.6 学生を続ける
都子ちゃんとは、大学3回生の頃からの友人で、
その頃から、国内外関係なく、「食」に関して自分の心が動く場所を見つけては”体験する”ということを繰り返していました。
そんな彼女は、今、栄養学校に。
学生の頃からのアグレッシブさや、就職ではなく学生を続ける選択をした彼女の目の前には、どのような世界が広がっているのでしょうか。
中島都子(なかじまみやこ)
関西の大学在学中に、「食」を軸に様々な体験をする。
ゴミレストラン(食料廃棄啓蒙活動) / 薬膳花嫁修行 / ケニアの企業アルファジリでインターン(貧困農家の自立をサポートするソーシャルビジネス) / ピグミー族と狩猟採集生活 など。
関西の大学を卒業後、栄養士の専門学校に通う。2年制、2021年3月に卒業予定。現在は発酵食堂カモシカでアルバイト中。
______ 大学卒業後、今は何をしているのですか?
栄養学校に通いながら、発酵食堂カモシカというお店でアルバイトをしています。どちらも、食を通して病気を防ぐ/健康というところを学ぶためにやっています。
アルバイトって時給を気にして選ぶ人が多いけど、発酵食堂カモシカのビジョンに共感していて、自分の目指しているところに時間を投資しています。ここは食堂だけでなく、物販のお店があったり、通販があったり、ワークショップをしたり。色々やっているので挑戦する幅も広くて楽しいです。人数も少ないですし。
______ 卒業後の進路は、「栄養学校」以外に、何か迷った道はありましたか?
大学の4回生の初めには、他の道を考えていましたよ。就活もしていたし、みんなも就活し始めている時期だったから。受けたといっても数社だけど。
でも、就活初めてすぐ「ちゃうな〜」ってなりました(笑)。
もともと”食と持続可能性”というテーマで活動してきて、その軸で行きたいなと思ってたけど、「食」っていろんな切り込み方があるなと思っていて。
生産、流通、小売、途上国の食もそうだし、色々あります。でもその中で自分が1番パッション湧くのって、なんなんだろうというのが決まっていなかったんですよね。だから、4回生は就活をせずに、ケニアとか、静岡行ったり、薬膳をやってみたり、学生の自由な時間を自分のやってみたいことに費やしました。その中で最終的に「健康」が1番パッション湧くことに気づきましたね。
ただ、「食×健康」といっても、宗教的なこと、価値観だったり、いろんな考え方があります。企業に入ったら、その企業の視点・目指す方向性に偏ってしまうと思っていて。だからこそ「健康」を自分なりに捉える時間が必要だと思って、栄養学校にいくことにしました。
______ 「ちゃうな〜」と思っても、周りが就活している状況で踏み止まるのって勇気がいることかなと思うのですが。その点はどうでしたか?
「行きたい!!」って思える企業がなかったのと、とはいえ、多分その時にしっかりその企業を知ろうとしていたら出会っていたかもしれないです。
...そもそも「今の就活システムって自分には全然あってない!」と思っていました。単なる反抗期だったと思います。
「就活をして出会う」というよりも、「自分でいろんな活動をしている中で出会う」企業が自分に合っていると思っていたというのもあります。というか、そういう出会い方がしたかったんですかね。
______ 就活をせずにやってみたいことに時間を使うと決めて、その後も、就職せず学生を続けるという選択をしている。その過程で、全く”不安”がなさそうに見えますね。
確かに、不安は全然持っていないですね。今も、4回生のときも。典型的な楽観的思考です(笑)。でも、裏を返すとリスク管理とかがゆるゆるで、ここはいいところでもあり、悪いところでもあります。でもやっぱり私は、自分の気持ちに素直に生きることを大切にしたいと思っています。自分が感じる違和感に蓋をすることはできないんです。
そういう考えになれたのは、大学時代に、「自分にとっての幸せとは何か」を考える体験を何度も何度もしながら、探ってきたからだと思います。自分がどんなことに幸せを感じて、どんな価値観を持っていて、どんなことを大切にして生きていきたいのか。それを分かっている方こそ、自分でした選択は、自分を幸せにしてくれると信じれている。
高校生くらいまでは、優等生タイプで、世の中的にいいとされていることがいい、それ以外はだめ、という考え方でした。それが幸せと思ってたけど、今考えると、周りと比べて感じる幸せでした。
それが、大学1回生の時に、ある旅人のブログをみて。「会社辞めて、旅して、島暮らししてます」という人で、いろんなことに対する価値観(お金、時間、etc...)を発信している内容でした。
それを読んで、これまでの価値観がガラガラと崩れていく感じでしたね。「人生って正解はないんや...」と衝撃を受けました。それから、じゃあ、自分はどんな風にいきていきたいんだろう、というのを体験しながら見つけていきました。これまで、相対的な幸せを自分の幸せだと思っていました。誰かと比べていい暮らしをしてるとか、優れているとか。でもその欲望には限りはないし、外部条件によって左右されてしまうから、永遠に満足できないと思うんです。
だから「ただ自分はこれが好き」っていう絶対的な幸せを少しずつ見つけていきました。そうやっていくうちに、自分の選択を信じてあげられるようになりましたね。
______ 自分の選択を信じられるようになる過程って、行き先不透明で難しいイメージですが...
ひたすら興味のある機会に飛び込んで、自分はそれのどこに惹かれてるのか、なんで好きなのかを探っていきました。例えば、廃棄食材だけを使ってレストランをしたり、感銘を受けた本の著者に会いに行ったり、映画バイオハザードで見た様な強くてかっこいい女性に憧れて、カンフーを習ってみたり(笑)。
でも、初めから自分を知ることって上手く出来なくて、とにかく周りに聞いてもらっていました。世の中にめっちゃ質問上手い人いるじゃないですか(笑)、そういう人に聞いてもらってましたよ。
”自分に向き合う”って、よく言われる言葉だけど、めちゃ難しいことやと思っていて。だから私は、質の良い問いかけをしてもらうことで、自分が知らなかった自分の良さを言語化して理解することができました。そんな過去があるからこそ、今はコーチングを学びたいと思ってるんです。最終的にやりたいことは、心と身体の健康ですね。
自分にとっての健康とは、というのを深堀すると、1番下の土台が「身体的な健康」、次に「自己理解と自己受容」に目を向けられる、最終的には「人生の目的に向かって生きる」ということでした。
______ 今の生活はどうしてますか?学費とかかかると思いますが。
学費は正直なところ、親に払ってもらっています。将来のことを話したら応援してくれて、「お父さん、頑張るわ」と、学費を払ってくれることになりました。(素敵なお父さん......)
学費に関してはめちゃくちゃ感謝していて、ただ企業の選択軸っていう話でいうと、若いうちはお金に関してはあんまり重要視していないですね。今はお金ではなくて経験の方が大事やと思っているので。
あとは、生活のことも考えて、栄養学校を選ぶときは実家から通える範囲を条件として探しました。栄養学校ってカリキュラムがほとんど一緒なので。
______ 栄養学校ってどんな人たちがいるのですか?
私が今通っているところは、基本的に高校を卒業して通っている人がほとんどですけど、学年に1つだけ社会人クラスがあるんです。社会人経験がある人や、大学卒業した人などいろんな人がいます。18歳から45歳のおじさんまでいますよ。
学校って”学ばされている”感があったけど、ここには”自ら学びにきている”人しかいないから全然雰囲気が違います。
______ 何をするときも、考えて、納得して、行動する、そんなプロセスを丁寧に辿っている印象です。次に進もう、というときにやっていることはありますか?
試行錯誤ですけど....あ、でも、一般的に「こうだよね」って言われるようなことは、一切考えずに、全部取っ払って、自分の思っていることとか考えていることを書き出すことはやっています。自分で書いたものを客観的に自分でみる。「なるほど、自分はこういうことを思っているのね」と眺めてみたりします。
栄養学校に行ってみて、やっと「自分の選択を正解にする」っていう感覚がわかった気がします。いろんな選択肢が見えているからこそ、迷う部分は今でもあります。「栄養学校にいく」と選択して、最初のうちは「それが正解やったんかな〜」と心の隅っこの方にはありました。でも、今は、人生の分かれ目にきた時に、どっちを選んだらいいやろうではなくて、「選んだ方を正解にする」覚悟ができた気がしますね。
決断した今も、結局何が正解かなんてわからないので。
【編集後記】
学生の頃から数々の体験と内省を繰り返し、今となっては「自分の幸せ」に対する感性が育まれた都子ちゃん。
「自分の幸せ」と聞くと、一般的には一つの正解が見つかるイメージがありますが、都子ちゃんのお話から「こちらには進みたくないという感覚に正直になる」ということなんだと気づきました。
「進んでもいいかも!」と思う道に、たくさん選択肢が残ったら、その先は自分の選んだ道を正解にする、と言えるような気がします。
”自分を知る”時間は、どうしても一人で殻に閉じこもりそうになりますが、私も今後、質問が上手な人にしっかり頼ってみようと思います。一人で考える時間も、私にとってすごく大切なので、その時間も大切にしつつ。
栄養学校を卒業した都子ちゃんが、次どのような道に進むのか、とても楽しみです♪
【ライター】
篠原 七子(しのはら ななこ)
神戸市出身、福岡市在住の26歳(2021年時点)。自然と調和した暮らしづくりを目指し、コンポストの研究製造販売をする会社でCS/広報として働く。本メディア発起人(経緯はこちら)。
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