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ケモノ着ぐるみ「さかみね」制作記録


はじめに

 ととやまです。ケモノ着ぐるみの世界には全く触れていないので、たぶん知らない人しかいない思います。
 正確には風景写真やアウトドア、VRでは学術界隈の人なのですが、最近はVRでアバターやワールドを趣味でのんびり作っています。かといって有名でもなければ極めてもいないので、下手の横好き一般ユーザーです。

 今回、創作ジャンルの中でも「着ぐるみ(Fursuit)」というものに挑戦してみました。ケモノ系デザインのヒトが着れる着ぐるみのことです。
 2024年1月12日にデザインを着手し始め、空き時間にチマチマ進めながら、2025年1月3日に完成しました。そして、1月10-12日に愛知県で開催したケモノコンベンションJMoF 2025に着ぐるみの姿で参加しました。

この姿で参加していました。

 で、本来の界隈的に「取り組んだことは成果発表し、社会(?)に貢献する」ことは重要であると考えているので、今回noteにその過程を記すことにしました。といっても初作なので、そんなに参考にならないと思います。(正確にはアバター作る以前にやってみようかなとほんの少し手を付けてみましたが、すぐ挫折しました。)

 制作過程はTwitter(https://x.com/ketowatary_alt)に全部書いてます。このアカウント自体、様々なリファレンスを取り、途中経過を記すために作りました。

 ちなみに、だいたい初作というのは満足する結果にならないので、無理に高望みせずに進めていきました。

VRの現在の姿。大幅な改良もカウントすれば3作目。
初作はいっぱい時間かけても大体こんなものである。


個人的に自作で気をつけていることが幾つかあります。
(あくまで自分だけなので、ああしろこうしろではないです。こういうものは人それぞれなので!)

「モチベーションは自己満足」
 現在はアバターも着ぐるみも制作を請け負ってくれる個人・グループが多くあります。自作、特に初制作ではそれらの洗練された外見に敵いません。技術が不足している初作は本当に満足いかないと思います。
 それでも「完成させたのでヨシ!」ができる人なら適しているかなと思います。逆に他者依存の承認欲求でやろうとするのは個人的にオススメしません。せっかく完成しても心折れます。

「トモダチはいっぱい作る」
 制作、イベント、モチベーションありとあらゆる場面で絶対に助けになります。VR畑の人なので着ぐるみ関連の知り合いはほぼ皆無でしたが、制作でわからないことを質問したり、デザインやバランスのフィードバックを受け取ったり、最終的にはVRのフレンドにアテンドをお願いしたり、本当に様々な人に助けられました。とにかく作業を進めるためにVR入ってフレンドと話しながらミシンで布を縫ってました。トモダチが少ない人はVRChatを始めてください(宣伝)

「完成させる」
 
アバターでもそうですが、技術不足から途中で萎えることが多々あります。大抵1作目は失敗するものです。失敗しなくても満足いかないと思います。私も満足していません。それでも完成させることに意味があるので、途中途中萎えはありつつも完成を目指しました。
 リファレンスを探す中で見つけた10年以上前の資料ですが、「1回目は必ず失敗します。」という言葉は身に沁みます。

 ちなみに制作者はケモノ世界にそこまで詳しくないので、制作開始時には着ぐるみを着たこともなければ、実物もほぼ見たことありませんでした。なので、ほぼ写真上のものをリファレンスの物量で実体化させました。着ぐるみイベント行ってたり、着ぐるみ体験したことがあるだけでめちゃくちゃアドバンテージです。

 制作期間はズルズル先延ばしすると一生完成しないので、ケモノコンベンションJMoF 2025までには完成することを目標に取り組みました。

デザイン

キャラクターを決める

 デザインはVRでも使っている「さかみね」にしました。ここで普通にそのまま作るという選択もありましたが、ちょっとデザインを変えたいなと思って、「さかみね」ではあるものの違うユニバースの姿にしました。

 ※「さかみね」は昔から使っている実質的な代理キャラで、アカウントごとに姿と人格が違います。今回のJMoFの「Everything Everywhere All at Once」に通じるものがあってちょっと興奮しました。

「さかみね(現実世界の人格)」
黙々と自分のやりたいことをし、行きたいことに行くタイプ。
アウトドア・カメラ・バイオロジー担当
本体はきつね型獣人。服はネイビー色パーカーで、尻尾はパーカーに縫い付けた装飾品。
2Dで表現される。
一番の古参なのに、全体像がまだ定まっていない。
「さかみね(仮想世界の人格)」
賑やかなところが好きで、あれこれ積極的に交流するタイプ。
モデリング・ガジェット担当
本体はきつね、尻尾はシャチをベースにしたキメラ獣人。服は水族館おみやげパーカー。
3Dで表現される。
「さかみね(あちら側の人格)」
人との交流が苦手な硬い性格。親しくなると結構しゃべる。
水産担当
本体はきつね、尻尾はシャチをベースにしたキメラ獣人。服は海洋民族系。

 デザインとにかく自分の好きなものを詰め込みました。あまり妥協するとモチベーションが維持できなくなるかも。絵に自信がない人は、AIに絵を出力させる手段もあります。私は衣装のデザインがなかなか決まらなかったので、色彩図鑑と民族衣装事典とにらめっこしつつ、Copilotに出力させてしっくりくる方向性を模索していました。

三面図を作る

 デザインが決まったら、そのままでは骨格的に難しい部分があるのと、横・後ろのデザインが不明なので、三面図で「着ぐるみ化」させてデザインを固めました。
 この工程にあたって、「この着ぐるみみたいな方向性のを作りたい!」を定めておくといいかもしれません。この工程の少し前からTwitterアカウント(現: ketowatary_alt)を作成し、片っ端から国内・海外の着ぐるみのデザインを確認しました。特に横顔写真がかなり少ないので、リファレンス取るのが大変でした。

 三面図を作るにあたって以下のテンプレートを使用しました

version 3 fursuitの意。
AlternatiiveなWellermanデザインということで、AltWellerって副名もあります。

 ただここで気をつけるべきこと…特に初作では「なるべく作業量を増やさない・複雑化させない」ことだと思います。
 「ジグザグ」「文字・記号」といったものは型作りや縫うときにかなり大変です。私は「細かいジグザグ」の部分をいくつか作ってましたが、ファーで見えにくく、結局作業量が増えただけでした。なるべく大きく大胆な感じにすると良いと思います。


着ぐるみ本体制作

 制作の流れはちょっと時系列が前後したりしています。たまにフレンドが手伝ってくれていますが、型取り以外は基本的に直接製作には手をつけない、他者目線からのバランス確認やアドバイスなどが主です。

参考資料

 身近な人に着ぐるみの制作者がいて、手取り足取りすべてを側で教えてくれる…なんてことはあったらいいのですが、もちろんそんな人も一握りです。なので、自分一人だけでも作れるように、作り方が解説されている資料を用意しました。

 以下は制作するにあたって特に利用した資料です。

① ケモノ着ぐるみの作り方講座【ユピテルファクトリー】

 着ぐるみ制作にあたってのベースとして使用しました。何が必要か、どのように作るかの全てを動画で解説してくれています。初作の挫折率がかなり低くなると思います。

② ケモノ着ぐるみ超大全 作り方のすべてがわかる

 どんな作り方があるのか、どのように縫えばいいか、どうイベントに行けばいいか、どのように洗濯すればいいか、あらゆることを一纏めにしてくれています。基本的にわからないことを検索するための辞典やマニュアルとして使用しました。最初から最後まで使うことになりました。

③ 初心者が1からケモ着ぐるみ作る本

 実際に初心者が1から作るとき、どのような感じで作ったのかを知るために使用しました。作り方に関しては作り手がなにを選ぶかで千差万別なので、可能な限りリファレンスを取り、自分にあった方法を選ぶといいと思います。(選択肢が多すぎると選べなくなる人は、コレと決めた作り方に徹すると良いと思います。)

道具類に関する特筆事項

 道具類は概ね「ユピテルファクトリー」か「着ぐるみ超大全」を参考に用意しました。以下は気にした部分です。
接着剤:Gクリアを使用しています。より強力とされるG17は酢酸系のキツイにおいがするので、制作にあたって忌避しました。
ミシン&バリカン:後半で使用しますので、制作しながらセール待ちするといいです。

型取り

 一番の最難関だと思います。ダクトテープダミーを作って一人で型取りをする方法もありますが、私は三面図を用意してVRChatのフレンドに型取りをお願いしました。本当に感謝しかないです。

さすがに一人では難しい…

ヘッドベース制作

 「ユピテルファクトリー第4回~第6回」に相当します。これといって脱線するようなことはせず、動画に従って制作しました。
 注意点として、筒をつくる際にサイズをミスるとわりと後に引けません。頭の採寸がアバウトすぎたため、小さすぎ大きすぎを往復することになり、修正がかなり面倒になりました。

筒を作ったところ
マズル部を接着したところ

 ここからは削っていきます。そして盛ります。理想の形にするために、ひたすらこれを繰り返します。

ひたすら削る
削り過ぎたら盛る
3Dモデルと見比べたり
上から線を書いてイメージをしてみたり
最終的にこうなりました

目の制作

 「ユピテルファクトリー第6回」に相当します。プラ半球を利用した制作方法がありますが、私はトラディショナルなアルミパンチ単体式にしました。

 最初は一部フェルトで作ろうとしましたが、あまりしっくりこないので、全てラッカースプレーで塗装して制作することにしました。

 マスキングテープをデザインナイフで切って剥がせるようにして、色を塗装したら剥がしたり、再度貼ったりするような感じで作りました。塗装の上からマスキングテープを貼ると一部剥がれるので、その場合はプラ容器に吹いたラッカーを面相筆でとり、絵の具のようにして剥がれた部分に塗りました。

試作のフェルト版。色部分はラッカースプレー。
黒・白・スカイブルー・仕上げのクリアはダイソー。ネイビーはタミヤ製。
枠はコーヨーソフトボード

ヘッドの型取り

 「ユピテルファクトリー第7回」に相当します。動画通りにヘッドの型紙を作っていきます。

どこのパーツが何とつながってるかを示す線(写真の赤線)はめちゃくちゃ重要。
忘れると型紙をパズルのように復元する作業が発生します。
ばらばら。

 型紙からファーを切り出し、それらを縫い合わせていきます。曲線や細かい部分が多いので、基本的に手縫いです。
 ある程度縫っていくと、ようやく「着ぐるみ」感が出てきます。

型紙から布を切り出したところ。
ひたすら縫っていく
縫い終わり。ボワッ。たぶん萎えポイント。

ヘッドの毛刈り

 布をヘッドベースに固定させてバリカンで剃ると、一気にイメージが変わります。

キャラクターっぽくなりました。一番の苦労達成ポイント。
調子に乗って刈りすぎると下地が見えるので注意。徐々に短くしていきましょう。

 ちなみにバリカンは以下のものを使っています。結構バリカンの選び方も人によってはこだわりがあるみたいですが、これでも十分に刈ることができます。

ボディ制作

 「ユピテルファクトリー第8回」に相当します。今まで部屋の場所を取っていたボディの型紙がいよいよ活躍です。
 ここに関してはファーを型紙から切り出し、縫い合わせる感じです。ここでも何のパーツがどこと繋がっているのかちゃんと目印をつけましょう。
 それらを完成させるとこのようになりました。

ボディ完成。ファスナーやバイアステープはまだ。

 ボディが完成しても型紙は捨てない方が良いです。のちのち修正や他のパーツを作る時に必要になる場合があります。
 ちなみに縫うときはミシンがあるとめちゃくちゃ楽です。ミシンは以下のを使用しました。

層状の髪の制作(ファーの両面化)

 さて今まで「ユピテルファクトリー」をなぞれば作れましたが、いよいよそこには書いていないものが出てきました。髪の制作方法は「着ぐるみ超大全」にも載っていますが、目指す髪は層状のものです。そのような髪は中国系着ぐるみに多いのですが、これをどう作っているかはあまり明記されておらず、海外サイトを中心に調べました。

 すると、以下の制作方法がTikTokに記載されていました。

 これだ!ということで、この「ファーの裏面をブラッシングして両面化させる」という方法で層状の髪を作りました。なんでこうなるかの原理はわかりませんが、ファーが抜けていくといったことはなさそうです。

鼻の制作

 鼻はオーブン粘土を塗装して作りました。雑に塗装したためザラザラ感が出ていますが、逆にそれが良かったかも。
 ファーになるべく糊を使いたくなかったため、後ろにネジをグルーガンで埋め込んで、ヘッドに差し込んでいます。
 ネジ1本だけではクルクル回ってしまうため、あとからリューターで下鼻付近に穴をつくり、そこに長めのクギを埋め込んで、2点で固定させるようにしています。

歯の制作(クラフト布化)

 歯はモデリングの経験をもとに、一枚板で作ることにしました。
 変形が少なく、軽量で、作るのが簡単な方法として、「クラフト布」という方法を採用しました。これはボンドと水の混合液体に布を浸し、乾燥させることで、かなり硬めの布を作り出すことができます。

 袋にボンドと水を規定の量入れて、切り出した布を入れてある程度漬ける。取り出したら任意の形に整形して乾かします。
 かなり硬いので、口に縫い付けるときには目打ちを利用して歯の基部に穴を開けてます。


手の制作

 結構シンプルな作りにしました。表裏を型紙から切り出して、それらを縫い付けるだけです。肉球部はフレンドのアドバイスをもとに「ぬいクロスボア」を使用しました。

こんな感じ

足の制作

 足はダイソーのマットを底地にして、中にクロックスもどきを入れています。クロックスもどきはいつでも取り出せるようにしたかったので、かかとは削らず、糊付けもしていません。
 概ね動画など資料通りに作っています。Gクリアはわりと無理してくっつけようとしても時間経過でちゃんとくっつくので、乾燥中はクリップなどで留めて剥がれないようにしています。

白いウレタンは余りのもの。
布を被せたところ。
布をつけたところ。左は毛刈り済み。
一般的な着ぐるみと違って、長靴のように脚を中にいれるタイプです。

 足裏はダイソーマットにダイソーのレザー調シートを貼ったボードを、マジックテープで貼り付けています。一応交換可能です。自身はあまり足裏の造形にこだわっていないので、簡易性と利便性を重視しました。

イベント後の足裏。擦れることなく健在。

舌の制作

 「ぬいクロスボア」で作りました。着脱できるようにしています。
 クロスボアによって口に手を突っ込むとふんわり感が出るようにしていますが、歯が固くて痛すぎるので活用できていません。

実にシンプル。

首布の制作

 これが一番困りました。わりと首布は「適当」に作るらしいんですが、もちろん本当に適当に作ると肩幅が足りなくなったり、頭が入らなくなったりします。
 自身はユピテルファクトリーの形を大きめに切り出し、あとからフレンドに見てもらってどこまで切り詰められるか見てもらって、目印にクリップを付けてもらうという流れを取りました。BIG感謝。

首布を切り詰めていないときの写真。

ヘッドギアの制作(スポンジ利用)

 このツイートの方法と全く同じです。ヘルメットの中身かスポーツ用のヘッドギアかを考えていたところ、目から鱗が落ちるほどかなり参考になりました。

着ぐるみ本体完成

 ファスナーの取り付け、バイアステープの取り付けを終了させ、調整など細かいことをあれこれ進めていくと、いよいよ完成です。

完成!

オプション

サンダルの制作

 一応足裏を取り外せますが、着ぐるみ用のサンダルも作りました。
 足底は2重のダイソーマット。脚の部分はベルトを1周して固定し、指はT字に固定しています。かかとがずり落ちないように、布も被せ、足底に念のため滑り止めを接着しています。
 これでもJMoFで動き回れますが、ちょっとかかとの固定が弱いかなと思うので、まだ試行錯誤段階です。

完成品の写真。
後ろ。サンダル足底はまだ削っていないとき。

尻尾カバーの制作

 尻尾を引きずっても問題ないように、カバーを作りました。前日に急いで作ったので、リファレンスはありません。
 素材はダイソーのテーブルクロス。それを切り出してダイソー綾テープで縁取りしています。
 本番では念のため、切り欠き部を安全ピンで固定しました。短時間・低予算で作れるので、我ながらGoodだと思います。

歩き回っても穴は空きませんでした。

さいごに

 はっきり言って課題だらけ!今まで他の着ぐるみ構造を見たことがなかったので、エアフローは全く考慮されず、相対的な身体のサイズも最適化されていない、リファレンスがほぼない着るあんこ計画は未完了だし、ファスナーはファーが噛みまくって一人では上がらない!目は作り直したいし、耳はもっと尖らせたい。口の開閉機構は未完成、目も装換可能にしてるが使いにくい。そもそもデザインが計画と離れてないか?ありとあらゆる部分でまだまだ満足していないです。

 そういう満足しない部分を含めて、自作って楽しい!!!

 こういう試行錯誤を含めて自作って楽しいんですよね。ここが気に食わないから直して、あそこが難しいから簡易化して…といった試行錯誤が楽しい。そして完成したときの達成感は感無量です。そういうのをアバター制作で経験したからこそ、着ぐるみも挑戦してみたんだなぁと振り返れば思っています。

 まだまだ満足していないので、大幅な作り直しや2作目も挑戦してみたいですが、Blenderと違って着ぐるみ制作は有料!しばらくはさらなる作り込み、全くステ振りゼロの動きや運用、制作手法のお勉強の期間です。

JMoF VRChatユーザー着ぐるみ自作勢の集合写真

 本当の最後の最後に、最初に型取りしてくれたフレンド、あらゆる質問に答えてくれたフレンド達、バランス調整など手伝ってくれたフレンド達、そしてJMoFでキャラクターを出すにあたって手伝ってくれたフレンド達にBIG感謝を申し上げます。

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