もっと強く 茨木のり子 7 天栖土食虫 2024年5月5日 13:25 もっと強く願っていいのだわたしたちは明石の鯛がたべたいともっと強く願っていいのだわたしたちは幾種類ものジャムがいつも食卓にあるようにともっと強く願っていいのだわたしたちは朝日の射すあかるい台所がほしいとすりきれた靴はあっさりとすてキュッと鳴る新しい靴の感触をもっとしばしば味わいたいと秋 旅に出たひとがあればウィンクで送ってやればいいのだなぜだろう 萎縮することが生活なのだとおもいこんでしまった村と町家々のひさしは上目づかいのまぶたおーい 小さな時計屋さん猫背をのばし あなたは叫んでいいのだ今年もついに土用の鰻と会わなかったとおーい 小さな釣道具屋さんあなたは叫んでいいのだ俺はまだ伊勢の海もみていないと女がほしければ奪うのもいいのだ男がほしければ奪うのもいいのだああ わたしたちがもっともっと貪婪にならないかぎりなにごとも始まりはしないのだ。茨木のり子『対話』1955年「明石の鯛がたべたいと」で、にやり。今蒸篭がほしい。それで蒸し野菜を作ってもりもり食べたい。2024/05/05古本 天栖土食虫 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #茨木のり子 #天栖土食虫 #もっと強く 7