[すこし散文詩的なものを] 0004
指
椅子に座り、モニターに向かってキーボードを叩く。
自分の指の動きを見ながら、昔よりシワが増えたような気がした。
そりゃそうだ。
もう40の中年だ。人生だって半分は終わった。
若くはない。
これから、どんな時間が流れるのか。
この指だっていずれ動かなくなるだろう。
なんの変哲のない指だ。
いつだったか。ある女性にこんなことを言われたことを思い出した。
「あなたの指って、きれいでも汚くもないけど、わたしを撫でてくれるには、最高の指ね。だから大好きよ」
あの時は、なんのことだかわからなかった。
今でもわからない。
「大好きよ」の言葉だけが僕を喜ばせた。
そんな思い出。
別にたいしたことではないけれど、指を褒められるのは、悪くなかった。
彼女の髪を撫でたあと、自分の指を見るのが癖になった。
キーボードを叩きながら、また指に目をやる。
やはり、何が最高なのかはわからなかった。
たぶんこの先もわからないだろう。