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イノベーションのジレンマ〜今まさに起きている電気自動車への転換シフトについて

イノベーションのジレンマとは

イノベーションのジレンマとは巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論。クレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した。

一つ前の会社を作った頃に読んで、非常に納得したことは今でも記憶に新しい。本書は巨大優良企業が革新的なイノベーションを起こすことが非常に難しい、ということを非常に論理的に解説してくれている。(論理とはこういうことだ、ということを見るためにもぜひ読むべき良書)

その中に”破壊的イノベーション”という言葉出てくるのだが、

破壊的イノベーションとは、既存事業のルールを破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーションモデルのこと。

例えば、コンピュータです。元々、高価で非常に大きいためコンピュータは企業だけが使うことのできる産業用でした。これがPCすなわちパーソナルコンピュータに置き換わっていきます。これこそが破壊的イノベーションで、その果実を取ったのがビルゲイツでありマイクロソフトでした。

そしてこの破壊的イノベーションの一番おいしいところを取ることができるのは新興企業であり既存の巨大優良企業ではない、というところにイノベーションのジレンマがあるのです。

本来、お金も人材も顧客でさえ抱えている巨大企業が新しいイノベーションを起こすのには圧倒的に有利なはずです。しかし、例の多少はあれど多くのケースで新興企業が勝ち、そして新しいルールが作られてきたのです。

例えばPCで破壊的イノベーションの果実を受け取ったマイクロソフトに対してGoogleはPCからブラウザを通じたクラウドへの転換という分野で破壊的イノベーションを起こしています。(クラウドという考え方はGoogleが世に広めたものだと僕は解釈しています)

いつもながら前置きが長いのですが、次からが本章です。

電気自動車というイノベーションのジレンマ

現在起こりつつある破壊的イノベーションに電気自動車という分野があります。図式的にはイーロン・マスク率いるテスラVS既存自動車企業という形です。(ただ、現在はこれに中国のニーオなんかも出てきているので最終的にはどうなるかは予断を許さないのですが)

結論から申し上げると、過去の歴史的事例からもこの戦いにはテスラが勝利するだろう、と。そしてこの未来はとても多くの人が予測していて、何も僕が優れた預言者であるからではありません。

テスラの時価総額は8000億ドル(約83兆円)に達し、この数字は、2位以下の大手自動車メーカー8社の時価総額の合計に等しい。

そう、株式市場は既にテスラが覇権を握ることを予想しているのです。

ちなみにテスラは2003年創業でまだ20年も経っていません。

その企業が株式市場的には既に覇権を築いています。

では、なぜこういうことが起きるのか。

電気自動車へのスタンスの差が運命を分けた!?

その大きな理由が電気自動車に対するスタンスの差だと思っています。

既存の自動車メーカーは電気自動車をあくまで自動車の代替物と捉えていたと思います。

そこではガソリン車という彼らにとってのドル箱があるわけで、彼らに取っては電気自動車は自動車分野の中の one of them に過ぎませんでした。

技術革新をしていく上でガソリン車の向上をしていかなければならず、燃費をいかによくするか、またHVハイブリッドエンジンの開発などもそこに含まれると思います。

主要テーマ的にはどれだけエコに近づけられるかが重要だったと思います。(今なおそうだと言っても過言ではないかもしれません)

しかし、それはあくまで既存の自動車産業の改善に過ぎず、そこにイノベーションはありません。

イーロン・マスクの目的と野望

対するテスラ、というかここからは敢えてイーロン・マスクといいましょう。なぜなら彼の構想こそがその差を作っているからで、マスクは確かなカリスマです。(カリスマ経営者とは言いません。経営者としてではなく、人としてのカリスマだと思うからです)

実はイーロン・マスクも電気自動車を one of them としか考えていません。そう、彼にとっての最終目標、エネルギーの転換を起こすための手段としての one of them なのです。

そういう意味ではテスラを自動車産業の企業と捉えるのが間違っていて、テスラをエネルギー企業と捉えるのが正確かもしれません。

実は電気自動車での覇権争いではない?

そういう観点からいくと、既存自動車メーカーは電気自動車でも一定のシェアを取りたい。これが彼らを突き動かす強烈なモチベーションでしょう。これから来る電気自動車の時代に乗り遅れたくない。そう、産業用コンピュータからPCへの転換に似てますね。ガソリン車産業という産業は破壊されることがほぼ確定したと言えるでしょう。

対してテスラはエネルギーには興味があっても電気自動車のシェアにはあまり興味がないのかもしれません。ちょうど2020年の決算説明の際にマスクが言っています。

テスラの目標は、始めから持続可能なエネルギーの普及を加速させることなんです。

マスクは持続可能なエネルギーとしての電気・そしてそれを実現させるためのロードマップの中に電気自動車を置いているのだと思います。

なので、彼の目標として他社が電気自動車を多く作っていくことは歓迎すべきことであり、目標の実現を早めることになるのだと思います。

イーロン・マスクの仕掛けた破壊的イノベーションの正体

では、今回のイノベーションの正体とはなんだったのか?

それは

持続可能なエネルギーへの転換のために、まずは化石燃料の消費の代表格としての自動車産業の電気への転換を促すこと

だったのではないかと思います。

次に起こるべきイノベーション分野としては船、そして飛行機もしくはドローンとなると思います。

ちなみにイーロンマスクは次にソーラーパネルで革命を起こそうとしています。本当はアベンジャーズのアイアンマンが手にした半永久の発電機関があればいいのですが、その実現はまだまだ先でしょうから、しょうがないからマスクは太陽から動力を得ることを構想し、ソーラーエネルギーへの注力を表明しています。

彼の持つもう一つの企業スペースXが飛ばしたロケットが宇宙に太陽光発電ステーションを建設する日が来るのはそう遠くない未来のことかもしれません。

最後に

本来、既存企業側の視点からなぜイノベーションを起こせないのかというところを書きたいなと思っていたのが、マスクの魅力に抗えずついついテスラ視点の物言いになってしましました。

最後に付け加えるなら自動車メーカーの動きは非常に合理的だということです。合理的であるからこそ破壊的イノベーションを作ることができない。いや、作るべきではないという判断になるのです。

おそらく自動車メーカーはこれから苦しい(というか日本以外のメーカーは近年ずっと苦しんでましたね)とても苦しい産業となっていきます。

技術の粋を凝らして作り上げられてきたものが普遍化し陳腐化していきます。そのスピードは10年単位から年単位へと早まりつつあります。

実はトヨタの豊田章男社長はこれにかなりの危機感を持っているんだろうな、と感じています。最近のCM含めたメッセージには強い危機感と使命感を感じます。

自動車を産業の頂点に置くのではなく、エネルギーを頂点においたマスク。今こそ自動車メーカーからの脱却を図るべき時期なのは間違いありません。

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