見出し画像

Vol.24 風土改革もビジョンドリブンでうまくいく!

経営陣が風土改革を推し進めようとしても、なかなか現場は変わりません。結局現場は忙しくて変える余裕がないのです。
改革が必要な会社ほど、結局のところ末端組織に課題が集まり、自転車操業になっています。今やっていることで手いっぱいで、別のことに取り組む時間はとれません。
そんな状況で仕組みを次々と導入して変えようとしても、空回りし、遠回りし、場合によっては逆効果になります。

そうならないためには、取り組みを絞り、一点突破するのがベストです。そして、それがビジョンドリブンです。あるいはバックキャスト思考という方がご存じの方が多いかもしれません。


ビジョン経営

近年、ビジョンドリブンな経営を意識する会社が増えています。
分かりやすい事例として、自動車メーカのホンダが挙げられます。ホンダは2021年4月に「2050年に全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する交通死者ゼロを目指す」と表明しました。
このようなビジョンに対し、現状とのギャップを理解し、それを埋める活動を進めるのがビジョン経営です。

このビジョン経営は、奥が深い思想です。
ホンダのビジョンは、自動車メーカとしての使命、将来のありたい姿を示しています。どの業種にも当てはまる台詞ではないし、もちろん売上○兆円という売り上げ至上主義でもありません。
また、必ずしも到達可能である必要はなく、「事故をゼロにする」というのは見方によっては不可能な目標です。でも、あえてその不可能かもしれないレベルの目標を掲げることで、非連続な進化も含めた経営を目指していると言えます。

キャリアビジョン型人材育成

人材育成も同じく、まず将来の自分のありたい姿(キャリアビジョン)を描き、次に現状とのギャップを分析し、それを埋める手段をリストアップし、実行に移すという手法がトレンドになってきています。

このありたい姿は、マルチ人間になるような将来像ではありません。
必達しなければならない目標でもありません。
自分らしさを重視し、自分の職能やスキル、強みの先にある理想の姿です。
理想なので、不可能と思える姿であっても全く問題ありません。
その理想に向かって、一歩一歩進んでいくのです。

風土改革の課題

上述の通り、ビジョンドリブンは経営や人材育成で活用され、成果を上げ始めています。

ところが風土改革においては、相変わらず次々と仕組みが取り入れられるばかりです。360度評価、EOS、モチベーションクラウドなどなど、現場はやることが増えるだけで、ストレスが増す一方です。
これらの手法は対症療法的で、以下の課題があり、効果が表れるのにかなり時間がかかります。

・現状把握と課題の改善が基本パターンで、目指すところが曖昧
・直接社員の主体的な行動につながるイメージがない

こうした課題を解決するのがビジョンドリブンな風土改革です。

ビジョンドリブン風土改革

ビジョンドリブンで最初に取り組むのは、どんな部門でありたいのかを徹底的に議論することです。どういう状態であれば、メンバー全員がハッピーなのかという理想像です。

まずは現状がどうこうではなく、その部門の役割を踏まえて、部門や人員にとって、考えうる理想状態を探ります。
扱う商品や体制などにも依存するでしょうし、営業、マーケ、HW開発、SW開発など職種ごとに特有のことがたくさんあります。

また、とても無理と思えることでも全く問題ありません。むしろ、現状に引っ張られて無理だと感じているだけで、実際にはできることに気づくケースも多々あります。

これができれば、あとは経営や人材育成と同じやり方で進めるだけです。

自然治癒力の誕生

ビジョンドリブンにより、自発的に変わる力が働き出します。
実際、部門の開発効率向上を目指すプロジェクトで、この手法を用いて取り組んだことがあります。

まず、すぐに同じ志を持つメンバーの手が挙がりました。約30人の組織で3人です。どの組織にも、10人に1人ぐらいはそういう人がいると思います。この初期の活動メンバーでWGを作りました。

同時に、賛同者が多数見つかりました。この人数は、WG活動の開始にあたりアンケートを取り、すぐに把握できました。ただしこの時点では「同じ気持ちです。頑張ってください。」という人たちです。

その後、少しずつ賛同者が活動メンバーに変わっていきます。おそらく最初は漠然とした賛同だったのが、具体的に自分は何ができるとか、何がしたいとか、そういう気持ちに変わっていくのだと思います。

こうなると、あとは自然に動き出します。自然治癒力です。風土改革にとって最も欲しい力です。従来のような対症療法ではなく、根本治療です。

また、最初に描いた理想像は強力な収束力になります。
おかげでベクトルが大きく狂うことはありません。
むしろ、理想に向けて高いと思っていた壁を一気に打開しようとする猛者も現れました。ビジョンドリブンならではの効果です。

本格的な変革はまだこれからですが、非常に楽しみな状態になっています。

フラクタル経営(造語)

フラクタルという幾何学の概念があります。
マクロとミクロで同じ構造をとる、つまり自己相似性を持つパターンです。
経営も同じで、マクロな経営とミクロな組織運営が同じ構造になっていることが理想です。

経営と人材育成はビジョンドリブンで、風土改革は課題改善的で、というようにさまざまな手法があるから面倒なのです。困るのです。
経営、人材育成、風土改革だけでなく、全ての活動をビジョンドリブンにすればよいのです。
少なくともビジョン経営を取り入れている会社は、それがベストだと考えているはずです。ならば全てを同じ思考回路で進めればよいのです。
会社全体に一貫性が生まれるし、その方が良いに決まっています

でもそれを人材育成で実現しようとすると失敗します。
人材育成だと課長研修や主任研修などのカリキュラムに組み込まれ、一部の人しか受けないことが多いです。
なので、ものすごく良い思想を学ぶのに、現場に戻るとそんなことはどこ吹く風の人ばかりです。実践してもなかなか嚙み合わず、結果として習慣にならず、実践することをやめてしまいます。
本当に勿体ない話です。

そんな回りくどいことを考えず、とにかくビジョンドリブンのセミナーを全社員に行い、全ての活動にビジョンドリブンを取り入れる、それだけに集中すればよいのです。
そうすれば、そういう風に会社が変わってきたんだと実感するし、仕事の仕方そのものが、全てビジョンドリブンに変わっていきます。
名付けて「フラクタル経営」です。

また、これぞ本ブログの背骨でもある、ビジョンも本気、事業活動も本気の「本気と本気の経営」です。

まとめ

コンサバで変わろうとしない風土は、大企業病の典型的な症状です。
そういう部門をよくよく観察してみると、かなり異状な状況にあるにもかかわらず、そんなに悪い状態ではないと思っています。古参メンバーであるほどそう思っています。

単に長年の習慣を変えたくないというのではなく、理想状態がイメージできていないために、異状であることに気づけていないのです。
つまり風土改革が進まない根本原因は「想像力の欠如」だと言えます。

最初にありたい姿を徹底的に描くビジョンドリブンは、このような凝り固まった組織を「想像力が働く組織」に変える手段とも言えます。

次回以降、「想像力の欠如」の事例や、どのようにビジョンを描けばよいかといったことを書こうと思います。これにより少しでも理解を深めていただけたらありがたいです。

おまけ

以前「Vol.9 風土改革は「心理的安全性の確保」で一点突破」という投稿を書きましたが、今回は「風土変革もビジョンドリブンで!」だと、どっちやねん、とセルフ突っ込みをしてしまいました。
そこで改めて考えてみたのですが、心理的安全性の確保といっても、その結果、将来どんな状態にしたいかというビジョンが描けていないとうまくいきません。
一方で、組織のビジョンは上から押しつけではなく、全員が意見を出し尽くして納得したビジョンであるべきで、そのためには心理的安全性の確保が必要です。
このように互いを補完する関係ですが、あえて順番をつけるとしたら、以下のようになるのかなと思います。いかがでしょうか。
 ①心理的安全性の基礎を理解
 ➁ビジョンドリブンを実践しながら心理的安全性を醸成


いいなと思ったら応援しよう!