読書メモ20年28

概要

(題):成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法
(著):加藤洋平

おすすめ度

★★★☆☆

サマリ

カート・フィッシャーの「ダイナミックスキル理論」をベースとしながらも、理論をどう実践に結びつけるかという観点について説明した本
多くの人が求める「成長」を様々な要素に分解し体系立ててくれ、具体的にどう成長を実現していくのかまで言及してくれている

抜粋

知性発達科学とは、私達が持っている様々な知性や能力が、どのようなメカニズムで成長し、どのようなプロセスを辿りながら成長していくのいかを解明する学問。

■ ダイナミックスキル理論について
私たちの能力は課題依存性という特徴を持つ。課題の種類や性質が変わると、発揮する能力の種類やレベルが変わる。
私たちの能力は変動性を持っている。変動性とは、能力の種類やレベルのばらつきの事。変動性は置かれている状況や取り組む課題のみならず、私たち自身の感情状態や身体状態などによってもたらされる。

■ 能力の5つの成長法則
統合化、、複数の能力が結びつき、新たなレベル(点→線→面→立体)に移行する質的成長。長大な時間を要する。
複合化、、複数の能力が組み合わさってより高度な能力(点、線、面、立体の数が増える)になる量的成長
焦点化、、ある課題をこなす為に必要となる能力を即座に選び抜く。
代用化、、培った能力を他の状況や課題に対して応用させる。
差異化、、生物の細胞分裂。差異化と統合化は同時に起こる。能力が分化する事で質的に新しい能力が生み出される。

■ 能力の5階層
・反射階層(レベル0~レベル2)…幼児が積み木を見て口に入れてしまうような、無意識な反応を生み出す。
・感覚運動階層(レベル3~レベル5)…言葉を用いることなく、身体的な動作を生み出す。
・表象階層(レベル6~レベル8)…個別具体的なものが目の前になくても、言葉によってそれをイメージできる。
・抽象階層(レベル9~レベル11)…目に見えない抽象的な事柄を言葉によって扱うことができる。
・原理階層(レベル12)…抽象的な様々な概念をさらに高度な概念や理論にまとめ上げて発揮できる。

■ フィッシャーの能力レベル
レベル6の回答では、「お母さんは人です。」
レベル9の回答では、事物の抽象的な1つの側面を捉え、「人は人間と言い換えることができます。赤ん坊を除き、人間は考えることができます。」
レベル11の回答では、事物の抽象的な特徴を複数捉えながら、それぞれを関連づけることができる。「人は非常に複雑な存在です。各人様々な価値体系を持っており、異なる知識と経験を持っています。固有の価値体系は、新たに独自の知識や経験を生み出します。そして、固有の知識と経験は、新たな価値体系を構築していくことにつながります。つまり、価値体系と知識と経験は相互作用をし、それが人間を複雑な存在にしているのです。」
レベル12の回答では、レベル11で作った事物の複数の抽象的特徴のまとまりをさらに複数作り、それらを関連づけ、一段高次元の概念の中で、それらをまとめることができる。「人というのは、『動的な要素非還元的存在』です。つまり、各人固有の意味構築システムと社会の文化的・制度的なシステムが相互作用することによって、全体としての1人の存在を形作っている、ということです。具体的には、人はそれぞれ、各人固有の認識世界を持っており、現象に対する意味づけの仕方が異なります。こうした意味づけの方法は、置かれている文化や制度による影響を強く受けます。また、私たちの意味づけの方法が変われば、社会の文化や制度に対して影響を与えることになります。このように、私たち人間は、絶えず自己と社会との相互作用によって変化する生き物であり、特定の要素に還元することができないため、『動的な要素非還元的存在』だといえるでしょう。」

■ 既存の能力開発の考え方や方法に潜んでいる問題点
・変動性の無視、、、意味の不明瞭な単調な実践はモチベーションを下げるだけでなく、能力開発にほぼ意味がない。
・生態学的妥当性の無視、、、生態学妥当性とは、練習と実際の現場の乖離具合。研修が実際の現場とどのような繋がりを持っているのかを絶えず考え、妥当性の高い研修を提供する事。
・各々には、多様な能力領域があり、それぞれに独自のレベルが存在し、それらは多様なプロセスを経て成長していくという考え方が浸透していない事。客観的なアセスメントが必要であり、その結果に基づいた、さらなる成長を支援するプログラムが必要。

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