読書メモ20年16
概要
(題):世界標準の経営理論
(著):入山 章栄
おすすめ度
★★★☆☆
サマリ
早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山教授が、複雑なビジネス・経営・組織のメカニズムを解き明かすために発展してきた「経営理論」を、可能なかぎり網羅・体系的にまとめた本。いわゆる論文の内容を説明されており、世の中にある経営本・組織戦略本のベースとなる考え方が身につく。情報量が多いので、経営本を読んだ時の参考辞書としの活用方法が良いのではないか
抜粋
・SCP理論
産業が儲かる構造になっているのかのメカニズムを体系化
完全競争と完全独占で、完全独占が儲かる
・RBV
経営資源に経済価値、希少性、模倣困難性、代替性があることは持続的な競争優位になる
・情報の経済学
情報の非対称性は、ビジネスチャンスを生む
・エージェンシー理論
人は合理的だからこそ組織の問題が起きる。例えば、車保険に入っていない安全運転していた人を評価し、保険を安く出すと結果安全運転しなくなり破綻するという話
・取引費用理論
バリューチェーンの機能を市場取引にするか企業の内部化を行うか
・ゲーム理論
相手の行動を合理的に予測しながら、お互いの意思決定・行動の相互依存関係メカニズムとその帰結を分析するもの
・リアル-オプション理論
当初計画よりも小さな費用を投資し、結果をみて再投資判断するメカニズム
・知の探索、知の深化
新しい知を求める、今持っている知をそのまま活用する
オープン・イノベーション戦略、CVC投資、ダイバーシティがこれに当たる
・SECIモデル
暗黙知を形式知化する知のプロセスを説明
・ダイナミック-ケイパビリティ理論
企業の環境に合わせて変化する力を説明しようとする理論
ティース型(事業機会・脅威を感知する力センシングと実際に投資をして捉えるサイジング)とアイゼンハート型(組織ルーティン化できる)が存在する
・リーダーシップ理論
時代と共に、個性⇒行動⇒個性や行動の成立条件⇒リーダーと部下の心理的な交換・契約関係⇒シェアード・リーダーシップと理論の中心が変わってきた
・モチベーション理論
時代と共に、ニーズ(exマズローの五大欲求)⇒職務特性(内的動機を上げるような多様性やアイデンティティフィードバック等の基準)⇒期待(成果と見返り)⇒ゴール設定(目的達成)⇒社会認知(自己効力感)⇒プロソーシャル・モチベーション(社会貢献、顧客視点に立つ)と変わった
・認知バイアスの理論
収集した情報を認知のフィルターで取捨選択してしまうことでときに悲惨な結果を招いてしまう。ハロー効果や利用可能性バイアス等
・意思決定の理論
模範的意思決定論(リスク回避と効用関数で表現、人はリスクを恐れる)
行動意思決定論(投資成果にどの程度効用を持つかは人が持つリファレンス・ポイントからの乖離で判断する)
・感情の理論
個人レベルの分離感情、帰属感情、チームレベルのムードの3つに分かれる
感情が人や組織に与える複雑な効果を説明
・センスメイキング理論
「腹落ち」の理論、情報を感知し、解釈・意味付けし、行動・行為を行い納得する、思い込むことで実現させる力が人間にはある
・弱いつながりの強さ理論
弱いつながりこそが、探索を加速させイノベーションを起こす
・ストラクチャル-ホール理論
クラスターをつなぐ唯一のブローカーが大事
・エコロジーベースの進化理論
生態学で組織を語る。VSRS(多様性、選択、維持、苦闘)
・レッドクイーン理論
企業の共進化メカニズムを解き明かす。生存戦略が共進化をもたらす
例えば、キツネはうさぎを捕まえるよう足が速くなり、うさぎは捕まらないよう足が速くなるがずっと続くことで互いに成長するが企業でも起きる