読書メモ20年29
概要
(題):ファイナンス思考――日本企業を蝕む病と、再生の戦略論
(著):朝倉 祐介
おすすめ度
★★★☆☆
サマリ
目先の売上、利益を最大化するPL脳に陥らず、価値・長期・未来志向であるファイナンス思考を身につける、その必要性と考え方のエッセンスをまとめた本。陥りやすい難所を自身の事業に当てはめ、また成功している企業のエッセンスを吸収することで事業開発の能力を引き上げる助けになる
抜粋
PL脳の行動パターン
① 黒字事業の売却をためらう
② 時間的価値を加味しない
③ 資本コストを無視する
④ 事業特有の時間感覚を勘案しない
⑤ 事業特有のリスクを勘案しない
現在黒字でも将来の収益減少が見込まれる場合、高い状態で売る必要がある、また高い金利で借金し低い利回りで事業運営している可能性もあるため、ROIC>WACCが必須
ファイナンス思考の特徴
評価・・・生み出されるキャッシュフローの最大化に貢献するか
時間軸・・・長期的であり自発的
経営アプローチ・・・管理、調整ではなく戦略的で逆算型
ファイナンスの4つの側面
A:外部からの資金調達
B:資金の創出
C:資産の最適配分
D:ステークホルダー・コミュニケーション
アマゾン:赤字、無配続きでも、積極投資を可能にしたIR
資金調達の絶妙な使い分け
CCCの工夫で手元のキャッシュを最大化
果敢な投資実績
リクルート:得意分野に特化し、M&Aで海外市場を開拓
海外展開を見すえ、ガバナンスを改革
過去には失敗も多かったM&A歴
目利き力と長期的な視点で、実現したインディード買収
カニバリズムを恐れぬ姿勢
ユニット経営を買収先にも活用
JT:ジリ貧の危機感から、グローバル化へ一直線
M&A、成長投資で海外事業も順調に拡大
資源配分や管理手法も見直し
事業の合理化も断行
関西ペイント:資本力と地道なIRで、自動車1本足打法から脱却
BtoBとBtoC両立への挑戦
コニカミノルタ:背伸びせず、事業ポートフォリオ経営を徹底
脱フィルム事業の苦難
日立製作所:"ラストマン"の下、不退転の構造改革を断行
グループ経営最適化を模索してきた歴史
史上最大の赤字から、聖域なき改革へ
バトンタッチした中西社長が進めたグループ内外の再編
なぜPL脳に陥ってしまうのか
1 高度経済成長期の成功体験が染みついている
ネズミ講に似た日本的経営
2 日本の会社でますます進む役員の高齢化
3 間接金融中心の金融システム
銀行内審査ではいまだに最終損益が重視される
バブル崩壊で迎えた行き詰まり
4 PLのシンプルなわかりやすさ
5 企業情報の開示ルール
6 メディアがあおる影響