読書メモ20年26
概要
(題):知略の本質 戦史に学ぶ逆転と勝利
(著):野中郁次郎, 戸部良一, 河野仁, 麻田雅文
おすすめ度
★★☆☆☆
サマリ
日本の戦争を題材にした「失敗の本質」シリーズの最終巻
4つの戦争独ソ戦・英独戦・インドシナ戦・米イラク戦が扱われている
当初は劣勢だったのが逆転して最後は勝利を収めたこのプロセスにフォーカス。「機動戦と消耗戦」といった二項を対立する概念ととらえず、相互に影響しあうものすなわち「二項動態」ととらえ、その中で最適なコントロールをしつつ事態を進めていくのが「知略の戦略」である
抜粋
・知略とは、知的機動力で賢く戦う哲学であり、過去、現在、未来の時間軸で共通善のために、何を保守し何を変革するかの動的バランスを取りつつ、常に組織的な本質直観を共創しながら行動をし続ける戦い方を指す。
ここでいう知的機動力とは、共通善に向かって実践知を俊敏かつダイナミックに創造、共有、練磨する能力。
・知略は矛盾解消の弁証法でもある。流動する関係性のなかから、生み出される矛盾を二者択一によって解決するのではなく、どちらも真理だが、どちらも半面の真理でしかないと認め、中庸を探る。中庸とは、矛盾する両極の中間ではない。完全な調和はないと知りつつ、情況に応じてより良い均衡に向かって矛盾を高次のレベルに止揚することを意味する。
・組織的知識創造プロセスは、SEKIモデルと呼ばれている。 OODループが基本的には個人レベルの適応モデルであるのに対して、SECIモデルは、個人・集団・組織の間の暗黙知と形式知の相互作用・相互変換を示す組織的知識創造モデルである。
(S共同化、E表出化、C連結化、I内面化)
・知略では、SECIプロセスのスパイラルアップを通じて、危機的状況で直面した矛盾の克服が二項動態的に行われていく。この暗黙知と形式知の相互変換プロセスを加速させるのが実践知(フロネシス)である。
・実践知リーダーの共通する能力とは、
①善い目的を創る能力
②ありのままの現実を直観する能力
③場をタイムリーに創る能力
④直観した本質を物語化する能力
⑤物語を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
・知略は個別具体的な文脈に沿った実践。だからこそ、知略を機能させるためには、時事刻々と変化する「いま・ここ」のただなかで、本質直観することが重要。普遍的な法則やセオリーに従って戦略が導かれるのではなく、個別具体的な問題に対処していくなかで現実を洞察し、本質を直観・実践することで戦略は創発する。
さらに知略は各々主観を有する人間によって組織的に立案・実行される。一人ひとり異なる主観を持つ構成員が共感を通じてわれわれの主観を共有することで、知略にコミットした実践が自律分散的に促進される。リーダーや構成員の思いや価値観を集約しなが、予測不可能な情況でも共通善の実現に向かって努力し続けることが未来を創造する。
二項対立をうまくコントロールを可能にするリーダーシップの資質を4つあげている
「①共通善ー何のために戦うか」
「②共感(相互主観性)」
「③本質直観」
「④自律分散系ー実践知の組織化」
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