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WWOOFのすすめ


WWOOFとは


みなさん、WWOOFという言葉を聞いたことがありますか?

これは、World Wide Opportunities on Organic Farmsの略で、有機農業に興味を持ち、農家のもとで農業やスローライフを体験してみたい人とその農家とを繋ぐNGOのことです。

1971年にイギリスではじまり、その活動が評価され、その後世界各国で発展しました。

オーガニックな思考を持つ農家が、国籍に関係なく、農業に興味を持つ人を受け入れ、その機会を与えているのです。僕たちゲストは、農家で仕事をする代わりに、食事と宿を無料で提供してもらえるのです。

僕は食への興味から、普段食べているものが一体どのように育てられ、収穫し、出荷され、口に入るのか、を自らの目で見て学びたいと思い、大学4年時にWWOOFを体験しました。


Kilbrack Farm


僕が滞在したのは、アイルランド第2の都市Cork、から車で1時間ほどのDoneraileという田舎町、のはずれにあるKilbrack Farmという農家です。


ここはいわゆる中規模農家で、主にオーガニック野菜や果物を作って、高級レストランに卸したり、週末にファーマーズマーケットで売り出したりしています。

僕はここで、いろんな国の若者たち(アイルランド、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、アメリカ)と約2ヶ月間、共同生活をしました。

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それはもう、人生の中でも指折りの良い時間を過ごした2ヶ月となりました。


WWOOFのスケジュールは滞在先によって全然違うのですが、こちらでは平日は7時半〜16時まで仕事(昼休憩1時間)、土日はフリーでした。

仕事内容は冬に滞在していた為、主に、野菜や果物の収穫、水撒き、暖炉用の薪割り、ガチョウや羊と追いかけっこ、ドライフルーツ作り、など。




ここでの1日をざっと説明すると、


朝起きたら、昨日収穫した野菜たちをパンに挟んで食べて

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寒い寒い言いながら鶏小屋に行って

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卵を回収して

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冷え込んだ自然を感じながら野菜の収穫をしたり

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薪を割ったりして

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お昼が近づいたらみんなより早くあがって、規格外の野菜でお昼ご飯作り。

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そしてみんなで食卓を囲んで

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食後にコーヒーを飲んで一息ついて

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仕事に戻って、今度はジャガイモの収穫をしたり

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りんごをひたすらカットしたり

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ドライフルーツ作りをしたり

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ガチョウを追いかけたり

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羊を追いかけたり

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サラダの収穫中に贅沢なつまみ食いしたり

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けどしっかりカゴいっぱいに収穫もしたり

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玉ねぎ頭の坊やを収穫したり

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牛から逃げまわったり

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りんご畑でトラクターを乗りまわしたり

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ツリーハウスをDIYしたり

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日が沈むのを眺めながらビーツの収穫したり

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野菜のパッキングしたりして

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仕事が終わると、日替わりで自分の国の料理教室が始まったり(これはスペインのトルティーヤと、イタリアのフォカッチャ)

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すぐ近くの川に釣りしに行ったり

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ガスが通っていなかったので、暖房&温シャワーのために、暖炉をあっためるのに手間かけたり

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その暖炉の前でギタリストが心地良い音を奏でてくれたり

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町に1つしかないパブに通いつめたり

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やっぱりそこでも良い音を奏でてくれたり

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可愛すぎる犬たちとじゃれ合ったり

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犬たちの闘いを観戦したり

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ヨガマスターによるヨガレッスンがあったり

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みんなでベッドを重ねて映画館作って、クリスマス映画上映会したり

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みんなで火を囲みながら星空を眺めたり

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ギネス飲みながら夜中までボードゲームしたりして

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そして就寝。

という流れ。



休日は完全にフリーで、

Corkまで行きたい人は、ファーマーズマーケット販売組と一緒に街へ出たり

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卸し先のレストランで自分たちが採った野菜たちを味わったり

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近所をお散歩したり

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みんなでヒッチハイクで小旅行したり

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旅先で楽しんだり

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アイリッシュウイスキーの蒸留所に行ったり

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ダブリンまで足を伸ばして、the アイリッシュパブに行ったり

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すぐ近くの別の農家に滞在してる若者たちとパーティーしたり

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その農家にあるお城でキャッスルパーティーしたり

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のんびり過ごしたり、イベント毎があったり、休日はとにかく自由です。


あとは冬に訪れた為、

クリスマスに帰省しない組でイブパーティーしたり

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ホットワインであたたまったり

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教会を訪れて賛美歌を聴いたり

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いつものパブに行って賑わったり

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次の日起きたらサンタさんからのプレゼントが置いてあったり

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農園主さんの親戚が集まって、ホームアローンみたいなクリスマスを過ごしたり

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みんなで年越しうどん作ったり

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教会の屋根裏で年越しの瞬間に鐘鳴らしたり

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またまたいつものパブで賑わったり

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と、アイリッシュなクリスマスや年越しを楽しむことができました。

長くなってしまったけれど、Kilbrack Farmでの生活はだいたいこんな感じです。


ニワトリの鳴き声で起床して、寒い中畑仕事して、自分たちで育てた野菜で料理して、暖まるために薪を割って、夜はギネスを飲みながら暖炉の前でギターを聴く。自然、人間、を存分に感じる生活でした。


豊かさってなんだっけ


Kilbrack Farmでの生活は、温かいシャワーを浴びるためには薪を割るところから始めなくてはいけない、決して便利ではない、むしろ不便ばっかりの毎日でした。

しかし、東京ではなかなか感じられないような豊かさが確実にそこにはありました。

豊かな暮らしってなんなんだろうって、何度も考えました。

まあ豊かさについて考え始めたら、愛とかお金とか健康とかいろんな要素があると思うけど、特に暮らしの豊かさについて考えました。


そして僕はやっぱり自然を感じながら暮らすのが好きだなあと。

外が明るくなったら起きて、寒い中畑仕事をする。日が沈むとともにガチョウを小屋まで追いかける。みんなでご飯を食べてお酒を飲んだら、日を跨ぐ前には眠りにつく。

体のリズムが自然のリズムとシンクロしてきて、本来人間が持っているリズムを五感で感じられるようになってくるのです。これがとっても心地良い。

そして何より自然に囲まれ自然を楽しむ暮らしをしていると、いつも穏やかな気持ちを持てて、心が豊かになってきます。

最初のうちはスローな生活に対して心のどこかで焦りを感じている自分がいたけれど、いつの間にか自然のリズムで自然を感じる時間にこそ豊かさを感じられるようになっていました。

人間は幸せになるために生きているということに異論は無いはずです。志のために頑張ることもとても大切だけれど、必要以上に頑張りすぎて本末転倒してはいけない、豊かに暮らせるよう意識していかないといけない、と心から感じました。




またここには、東京のように便利な生活を送れないからこそ感じられる豊かさがたくさんありました。

ガスが通ってないからこそ、みんな暖炉の周りに集まって会話が生まれる。

WIFIがポンコツだからこそ、みんなで自然や音楽を楽しむ空間が生まれる。

レトルト食品等がないからこそ、みんなで料理をする時間が生まれる。

町にパブが1つしかないからこそ、想い出がたくさん詰まった大好きなパブが生まれる。

お金がないからこそ、ヒッチハイクなどで良い出会いが生まれる。

そもそもお金がないからこそ、Kilbrack Farmでの生活を選んだ。


現代人は忙しく、情報は溢れているし、スケジュールはぎっしりで日々時間に追われがちです。だからこそ、IHだったりコンビニだったり簡易飯だったり、テクノロジーの力で人々が効率的に生活できる環境がどんどん整っています。

けどやっぱり、アナログで不便だからこそ生まれる豊かさ、特に何かしなければいけないわけではない余白の時間の豊かさ、みたいなものも大切にしたいなと僕は思います。

機械化すれば便利になるけど、機械化しないからこそ得られる豊かさもある。

たしかに機械に任せるからこそ、人間の可処分時間が増えて、より効率的に、よりクリエイティブに、より好きなことだけをして生きていけるようになっていきます。僕だってその恩恵を受けたいし、世の中が前進すると思うし、個人も好きなことを突き詰められるようになるし、テクノロジーの発達は間違いなく良いことです。

けれどその中でも好きなことに関しては敢えてアナログで不便な方法も取り入れていく、また空いた時間をどう余白の時間として使っていくか、ということを考えていくのが大事なのかなと思います。


僕に関しては、銭湯だったり、サウナだったり、コーヒーを淹れて飲む時間だったり、料理だったり、音楽を聴くだけの時間だったりで、不便を楽しんだり、余白の時間を作り・使ったりしています。


例えばコーヒーであれば、近年コーヒーメーカーのクオリティはどんどん高まっています。ハンドドリップで淹れたものと味を比べてみても、正直全然劣っていません。むしろ安定していて、手で淹れる以上に美味しいかもしれません。そして手間もかからず効率的です。

けど僕はやっぱり今後もコーヒーは手で淹れていきたいんですよね。
非効率だけれど、コーヒー豆を挽いて、時間をかけてお湯を注いで、っていうあの時間にこそ豊かさを感じるんですよね。



そしてコーヒーを飲んでふぅ〜ってなる時間も。

携帯や新聞で情報を摂取しながらコーヒーを飲みがちだけれど、そうではなくて、ただ寛ぎながらコーヒーを飲むっていう時間こそ大事だと思うんですよね。



不便なことの中や、何を考えてもいい余白の時間の中にこそ、豊かさが隠れているのかなあと。



なんなら週に1回くらいは、コーヒーセレモニーをしてみてもいいかもしれないですね。

コーヒーセレモニーというのは、日本の茶道のようなエチオピアの伝統的な習慣で、コーヒーの生豆が一杯のコーヒーになるまでの過程を複数人で楽しみます。

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これ、かかる時間はなんと2時間ほど。

コーヒーメーカーであれば1分で終わる作業を、のんび〜り2時間かけて行います。


けどこの非効率的であり、余白の生まれる時間が心地良いんです。

コーヒーができる過程を五感で楽しんだり、コーヒーを囲んで会話をしたり、香りにつられて人が集まってきたり、2時間の中に様々な豊かさが詰まってるんです。

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ちなみにこんな子供でもコーヒーをブラックで飲めちゃうんです。

さすがコーヒー王国。



なんだかまとまりがなくなってしまったけれど、とにかく、自然を感じながら、日常の中に非効率なことだったり余白の時間だったりを取り入れていくと、暮らしが豊かになっていくのかなと僕は思いました。



食に触れる


毎日農園で野菜と触れ合っていたため、普段食べている食べ物がどのように作られているのか、新しい発見がたくさんありました。


ビーツってこうやって収穫するんだあ〜。赤とピンクと比べて黄色のビーツは大きいサイズがなかなか無いんだなあ〜。とか。

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ホワイトアスパラガスってこんな格好してるんだあ〜。霜が張っても頑張れるんだあ〜。とか。

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菊芋ってこっちではエルサレムアーティチョークって言うんだあ〜。てかこんなでっかい木の根に生えるんだあ〜。とか。

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野菜って信じられないくらいの種類があるし、身近な野菜も奥が深いし、まだまだ知らないことばっかりだなあと。野菜は宇宙だなあと。



またクリスマスに向けて、毎日仲良く追いかけっこをしていたガチョウを、何十匹も屠殺し捌くという経験もしました。

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普段食べている食べ物がこういう過程を経てる事実を、強烈な実感を伴って学べました。やっぱりネットで情報を得るのと現場を見るのとでは、学びの深さが全然違うなと感じました。

当たり前ですが、僕たちは毎日命をいただいているのです。

こういう経験を多くの人がすれば、食べ残しも減っていくのかなあと。



食卓に食べ物が並ぶまでには様々な過程があります。その過程に触れると、普段の食事の感じ方が少なからず変わると思います。



みんなもKilbrack Farmへ


暮らしについて、食について、一度じっくり考えるきっかけになるWWOOF。

もちろんアイルランドだけじゃなく、日本含め世界中で体験することができます。


みなさんも機会があれば、是非足を運んでみてください。



読んでいただきありがとうございます!サポートしていただいたお金は、今後のガーナでの活動資金に大切に使わせていただきます!