コソボを出発したバスはアルバニアを経由して真夜中のモンテネグロに到着した
3月に入りました。そろそろ日本では暖かくなってきた地域もあるかと思います。
僕がいたコソボはまだまだ寒く、春の訪れを感じるのはまだ先になりそうでした。
ジョージアから始まったこの旅も2週間が経過し、だいぶ「旅慣れ」してきました。
乗ったバスは10回、通過した国境は5つ、移動距離は、、わかりません。
特にバルカン半島特有の事情というか、システムみたいなものを理解してきて、徐々に余裕を持てるようにもなってきました。
昨日は、滞在していたコソボの首都プリシュティナからバスに乗ってモンテネグロの首都ポドゴリツァ(Podgorica)に向かいました。
しかし、途中でアルバニアを通過したり、バスの乗り換えがあったり、最後は極寒のバスターミナルで夜を明かしたり、旅慣れしてきた自分にとっても、なかなかの刺激的な体験でした。
今回はその様子を書き留めようと思います。
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プリシュティナの一日
コソボのプリシュティナは特に何か有名な観光地だとか、面白いスポットがあるわけではありません。中心地は栄えていて、アジアの新興国にあるような都会ではあるものの、夜はお店が早く閉まります。
しかし、人々は温かく、居心地は良いものでした。
そんな魅力あるプリシュティナの最終日は、泊まっていた宿のオーナー夫婦とランチに行き、トルコ料理を食べました。
僕はトルコ料理が世界三大料理になっていることにずっと疑問を持っていました(中国とフランスはなんとなくわかる)が、徐々にその理由がわかってきました。
バルカン半島一帯はかつて、オスマン帝国(現在のトルコ)の一部であり、その時代からの名残でトルコの食文化は今も残っています。この周辺国は、どこに行ってもケバブやキョフテなどのトルコ料理(またはそれを元にした料理)を食べられます。
ギリシャ料理の筆頭格・ギロス(ギロピタ)もよく見てみると、元はケバブであることがわかります。
これだけ広大な範囲にトルコ料理が定着していることを考えれば、トルコ料理が世界三大料理になっていることに納得できます。
宿のオーナーはトルコ人でした。彼らと共に、プリシュティナでも人気のあるトルコ料理屋に行きました。彼らのイチオシのお店でもあります。そこでキョフテを注文しました。
ハンバーグに似たキョフテはとてもジューシーで美味しいものです。
トルコ料理はどれを食べても味のレベルは高く、それゆえバルカン半島一帯も食に困ることはありません。
この旅ではどこに行っても似たような食事が多いものの、総じてレベルは高いため、概ね満足しています。
彼らがなぜコソボを拠点としているか聞いたところ、人がゴミゴミしていなく、食文化が共通しているからだそうです。コソボは、トルコ人にとってビザが取りやすいため人気ある移住先となっているそうです。
そんなコソボ事情を知り、より一層この国に対する興味が湧きました。
まだまだ独立問題に揺れており、安心できる国ではないけれど、またいつか訪れたい気持ちが強くなりました。
リラックスできた一日を過ごし、夕方には荷物をまとめてバスターミナルに向かいました。
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プリシュティナ出発
出発を控え、事前にオンラインでチケットを購入していました。
コソボとモンテネグロは隣国です。どちらも旧ユーゴスラビア構成国であり、どちらもユーゴスラビアの最主要国であるセルビアからの独立を果たした国です(コソボの独立事情については割愛)。
しかしながら、交流は薄いそうです。
バスの本数も非常に少なく、このような変な時間の出発となってしまいました。
出発15分前、プリシュティナ・バスターミナルに到着しました。このバスターミナルは比較的大きく、国内外いろんな方向に向かうバスが停車しています。
スタッフにeチケットを見せ、乗り場を教えてもらい、バスを探します。
乗り場には一台のバスが停車していました。バス会社はチケットと同じ名前。しかし、行き先が「BUDVA」。これはどこなのだろう?
この国で使えるSIMカードを持っていないし、ここはWi-Fiも繋がらないので調べられずにいました。
運転手にeチケットを見せたら、合っているそうなので、そのままスーツケースを預けて車内に乗り込みました。
バスはいつもの大型バス。Wi-Fiも電源もありません。そして他の乗客にアジア人は見当たりません。
運転手からは「アジア!」と呼ばれました。もはやジャポン(ジャパン)やチナ(チャイナ)ですらない。それだけ日頃、アジア人はいないのでしょう。
バスは定刻に出発し、コソボの大地を進みます。
今の時期、17時を過ぎると暗くなり始めるため、すぐに辺りは真っ暗になりました。
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アルバニア入国
バスの車内では、スマホでKindleを読みつつ、気づいたら寝ていました。
海外にいると、電子書籍のありがたさをひしひしと感じますが、加えて暗いバスの中でも本を読めるのは相当なメリットだと気づき始めました。積ん読を消化できる海外旅行って良いですね。
一度、コソボ国内のサービスエリアで休憩に入りましたが、トイレに行くだけで特に何も買いませんでした。最近気づきましたが、バスに乗っていると胃の中のものががぐるぐる動くのか、あまり食欲が湧きません。
出発前に歯を磨いていたし、今日も夜ご飯は食べないで終わるだろうと思いました。
そんな時、ふとGoogleマップを見てみると、プリシュティナから南西の方向に進んでいました。
これはもしや。。
そのうち、バスは国境に差し掛かります。
ここでは、添乗員にパスポートを渡すのみでした。他の乗客はIDカードのようなものを渡していました。添乗員が全員分の出国検査をまとめて対応します。これはギリシャの出国でも同様でした。
すぐに添乗員が戻ってきて、パスポートを渡されます。
コソボは入国時にスタンプを押されましたが、出国時には押されませんでした。ギリシャと北マケドニアも同様だったので、このあたりではこれが普通なのでしょうか。
バスは再び出発します。
出発してしばらく経ってから気づきましたが、すでに町の中を走っていました。
あれ、入国検査は?
Googleマップを開くと驚きがありました。
すでに国境を離れて町にいること。そして、ここがアルバニアであるということ。
コソボからモンテネグロに向かいたい僕は、アルバニアにいました。
やはり。。
だから南西の方角を目指していたのです。悪い予想は当たってしまいました。
しかし、動揺はありません。
僕は、つい1週間半前、トルコのイスタンブールからギリシャのテッサロニキに向かう時に、ブルガリアのソフィアで何時間も待ちぼうけを食らったため、こういったトラブルに対する免疫ができていました。
ただ、コソボの出国検査とアルバニアの入国検査が同じ場所で同じ人によって行われるとは。
友好国とはいえ、そのスムーズさには大きな驚きがありました。
国境を跨ぐだけでいろんな発見や気づきがあります。それも海外を旅する上での楽しさだと思いました。
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モンテネグロ入国
バスの車内は終始謎の音楽(この地域のポップミュージックだと思われる)が流れています。電気は消えているため寝てほしいのでしょうが、この騒がしさがあります。
どこでも寝られる僕は、そんな状況でも気づいたら眠りについていました。
途中、サービスエリアに寄ったので降りてみました。アルバニアに入国してしまったので、この国の商品を見てみましたが、コソボや北マケドニアとはあまり変わりませんでした。
売っているお菓子や飲み物はどこも同じもの。ただし、通貨が違います。
ここではレク(Lek)と呼ばれる独自の使用しています。
今後、アルバニア入国を控えているため、その通貨のことは知っていましたが、価値の相場はわかっていません。しかし、僕は瞬時にレクの価値を見抜きました。
これは間違いない。1レク=1円だ。(実際、後で調べてみたら、1レク=1.2円でした)
そんな発見があり、嬉しくなりました。
とはいえ、何も食べる気が起きないので、今回も素通りです。
再びバスに乗り込んで、眠りにつきました。
しばらくしてバスは停車して、添乗員が叫びます。
「ポドゴリツァ!アジアボーイ!」
突然起こされるその声に動揺してしまいました。
時計をみたら22:00。まだポドゴリツァではないはず。
訳もわからぬまま起こされたと思ったら、荷物を持って外に出るように言われます。
急いで荷物をまとめてバスを降りてみると、目の前に小さめのバンが1台停車していました。僕のスーツケースは既にそのバンの荷台に置かれていました。
どうやら乗り換える必要があったそうです。
確かにこのバスの行き先はポドゴリツァではなくBUDVA(ブドゥヴァ?)。
ここからはこのバンに乗ってポドゴリツァを目指すのだと理解しました。
乗客は3人。他の2人はおそらく現地人のおじさん。運転手と3人で仲良く話していました。
バンはすぐに出発しました。寒くて乗り心地の悪いバンは、真っ暗闇の中ハイビームを照らしてポドゴリツァを目指します。再び睡眠に入ります。
それから1時間経った23:00、国境に到着しました。
先ほどと同様、運転手にパスポートを渡します。他の2人はIDカードを渡していました。手続きを終えて、すぐに帰ってきました。
パスポートには何もスタンプは押されていません。アルバニアは出国も入国もスタンプがありませんでした。
そして少し進んだ先にあるモンテネグロに入国検査に進みます。ここでは通常の国境同様に個別対応になります。
検査官は若い女性でした。今まで通ってきたイミグレの検査官は全員男性だったため、女性がいることに驚きました。しかもこんな真夜中の時間に。
パスポートを渡すと、電子で何かをチェックするわけでもなく、手元の紙にパスポートの情報を記入していきます。現代にこんなアナログな記帳なんてあるのか。。
最後にスタンプを押されて終了。無事にモンテネグロに入国できました。
これでこの旅を始めてからこれで7ヶ国目です。ずいぶんいろんな国を転々としたものです。
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ポドゴリツァ到着
モンテネグロに入国してから30分程度でポドゴリツァのバスターミナルに到着しました。
時刻はてっぺん00:00。
外は雨が降っていました。この旅を始めてから初めての本格的な雨です。今までは天気によく恵まれていたものです。
今晩は宿を押さえていないため、このバスターミナルの待合室で夜を明かします。
次の宿には10時から荷物を置けると聞いていたので、これからおよそ10時間の待機となります。待合室は外と気温が変わらないくらい寒く、息も白くなりました。
まだまだモンテネグロは冬です。
厳しい環境だったものの、ここで時間を過ごすしかなく、空いているベンチに座って寝ることにしました。
近くに横になって寝ている人がいたので、僕も真似することにしました。寒かったから靴を履いたまま、リュックを枕にして横になります。
足元が特に冷えていたため、寝巻きのパーカーを掛け布団代わりにします。寝心地は最悪だったものの、気づいたら寝ていました。
夜中に何度か目が覚めたものの、最後に起きたのは6時。なんとか睡眠を取れて、夜を越せました。
リュックもスーツケースも財布もスマホもパスポートも全て無事。
朝だ!!
カチコチになった身体を起き上がらせ、外に出てみると、明るい光景が広がっていました。雨も止んでいました。爽快感を感じます。
バスターミナルに隣接したカフェがオープンしていたのでコーヒーを飲みます。
あったかぁぁぁい!!
生きている実感が湧いてきました。
この一瞬の快楽だけで、それまでの苦労(?)すべてが報われた気持ちになります。
現在はこのカフェでことの顛末をまとめています。
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まとめ
まだ見ぬ国への旅はつらいことが多いけれど、こうして刺激的な体験をすることで、楽しさも多く感じます。
まさかのアルバニア入国、まさかのバス乗り換え、寒すぎるバスターミナルでの宿泊。
できればこんなつらいことをしないで人生やっていくのがいいのでしょう。
しかし、僕は旅が好き。気づいたらこんなことをやっていました。それでもなお旅が好き。
こういった経験を通して僕自身が強くなっていっているし、だから旅をやめられないと思っています。
今日は、ポドゴリツァでゆっくり過ごし、明日は景勝地コトルに向かう予定です。
まだまだ旅は続いていきます。
旅の様子はこちらにまとめています。
僕のことは以下の記事で紹介しています。
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それでは、また明日お会いしましょう!
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