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「牛窓えいとう市」記録
今年最も長い時間をかけて向き合った記録が「牛窓えいとう市」でした。
イベント自体は今年で3年目。牛窓にかつて存在した「えいと」という盆踊りを復活させようという有志団体の活動の記録です。
7月に出張で地域の施設へ出向き、
12月にマルシェ形式での本祭を開催しました。
この活動を地道に続けてきた影響か、
8月には本町主催の「えいと」が復活を遂げ、
老若男女、町を超えての盆踊りが数十年ぶりに実現しました。
そんな奇跡のような連続を記録していきながら感じたことを、
今日は振り返りたいと思います。
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出前えいとう
7月にあじさいのおか牛窓にて行った「出前えいとう」では、施設の方々と牛窓在住の方々が交流を深め、みんなでえいとうを歌って踊りました。
僕はこのイベントで初めて「えいと」を目にしました。
進まない踊りと、47番まである歌。
心地いいリズムと軽快な合いの手で、
踊るうちに自然と一体感が増してゆきました。
80代や90代のお年寄りでも知らない人もいる、本家えいと。取材の牛窓話茶会えいとう市実行委員は、本家をオマージュする形でアーティストの演奏や企画を寄せ集めて、リスペクトを持って復活させようということであえて「えいとう」と名乗っています。
これまでもこれからも
今回僕が担当したのは主に「ポスターデザイン」と「映像制作」です。
ポスターは実行委員のメンバーと話し合いながら何度も修正をかけて出来上がりました。
かっこよすぎず、ありきたりでなく、わかりやすく、情報整理をしていく。
初めてのイベントポスターのデザインで課題点も多くありましたが、多くの人に「良い」と気に入っていただけてとてもやりがいを感じました。
中央のぐるぐるは赤と青の2色にしていて、老いも若きもを現しています。
ぐるぐるにした理由は、えいとが櫓を囲んで踊る盆踊りであることと、進まない踊りであることに由来しています。
eitouやEITOUの中に実は隠れて「EITO」がいます。
参加する多くの若者やよそ者にとっては「えいとう」ですが、
ずっと牛窓に住んでいて子どもの頃「えいと」を踊っていたおじいちゃんおばあちゃんにとっては、これまでもこれからもずっと「えいと」であることを示しています。
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映像制作は、「出前えいとう」と本祭の「牛窓えいとう市」の2本を撮影・編集しました。また、その前後のご挨拶/練り歩き、お餅つき会/お披露目会などの様子も写真に収めながら、少しずつ牛窓の皆さんと交流を深めています。
出前えいとうは、「牛窓えいとう市」につながるようにドラマチックなシーンを集めて短編で。
本番の「牛窓えいとう市」の映像は長めに尺をとって、47番まであるえいとの長さとリンクさせながら、段々と息が合って演奏も高まってくる様子をそのままにお届けすることを意識しました。
「進まない」「終わらない」という一見するとネガティブな要素が、
えいとうにおいてはポジティブに作用します。
映像も終わったと見せかけて、終わらない。
まるでえいとうのような映像を目指しています。
えいと自体は実際に踊ってみると振り付けは簡単で、合いの手も入れやすく、何十人で踊っても息を合わせるのに時間はかかりません。
シンプルで誰でもできるからこそ楽しい。
それが盆踊りの良さなんだと実感しました。
奇跡を奇跡として伝えること
僕はこの映像を編集しながら何度となく泣きそうになりました。
老若男女、立場も経験もすべてが関係なくこの場所に集い、
踊り、笑い、歌うさまがあまりにも美しかったのです。
撮影中も一体感があって、ふわふわとした不思議な感覚でした。
まるで湯船に浸かっているような感じでしょうか。
こんな経験をこの令和の時代にできていることに感動しているし、
この文化がなくなることなく続いてほしいと思いました。
この映像は、そんな僕の祈りの結晶です。
僕がえいとう市を続けるためにできることは、記録すること。
それを皆さんに届けること。
話茶会の皆さんが日々牛窓に通って地元の人たちと重ねた小さな奇跡を、
僕はできるだけ記録して伝えていくことが必要だと思っています。
奇跡を奇跡として、きちんと表沙汰にすること。
それが僕の役目だと思っています。
来年で4年目になる「牛窓えいとう市」。
一体どんなドラマが待ち受けているのか、これからが楽しみです。
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