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「分からない」という諸刃の剣

YouTubeをPCで見ていたら、画面の右下に『広告まであと◯秒』という表示が出るようになった。

ずっと前からの仕様だったら、ただのぼくの見落としなのだけど。


以前はどうだったのかというと、動画の残り時間を示している、画面下部についていてる横棒に、黄色い縦線が入っている仕様だった。(伝えづらい)

しかも、その黄色い縦線の意味は『この位置まで再生されたら広告が流れるかもしれないし、流れないかもしれない』というもの。


これがけっこうストレスだった。

動画を見つつも、やっぱり画面の下側に視線がいってしまって『おー、もうそろそろ黄色いラインの位置だ。広告が来るのか!?来ないのか!?』と、なかなか動画自体に集中できなかった。


それが新しいPCでの広告予告方法『広告表示まであと◯秒』だと、分かりやすくて良い。

(スマホは画面の大きさの関係か、引き続き黄色い線タイプ)

以前の黄色い縦線が動画下から消えたから(消えたはず)、ひとまず動画に集中できるようになった。

そして、それでいきなり広告が表示されるのではなくて、事前にカウントダウンしてくれるので、ぼくも心の準備ができる。


自分のなかのその『安心感』に気づいたとき、改めて『あっ、人間てわからないことが最大のストレスなんだな』と思った。


『広告が表示される』という事象自体は、結局同じなわけだ。

違うのは、表示されるまでの過程。


よくマーケティングの話などで『いまのユーザーは広告が嫌い』みたいなことが言われるけど、たぶん嫌悪感の本質は『広告そのもの』ではなくて、広告が出てくるかどうかが『分からない』ことだ。


広告が嫌なのではなくて、記事を読んでたらいきなり飛び出してくれる動画広告や、SNSを眺めてたらいきなり友だちのタイムラインに混じっている不自然な投稿に、ぼくたちはストレスを感じている。


ただ逆に、ここからは少し話を大きくして『分からないから』こそ、快感が大きいときもあって。

とある心理学の実験では、とある行動がしたら絶対にもらえる報酬よりも、その行動をして報酬がもらえるかどうかわからないけど(ランダムなんだけど)、その状況でもらう報酬が一番快感が大きい、みたいなものがある。


結局、広告の話の場合は分からない状態から『広告』という、ぼくたちがマイナスなものに触れてるからストレスが最大化されて、そこから『報酬』を受け取ると快感が最大化されるという話で。


『分からない』ということが、人間にとっての一番のリスクなんだろうなあと。

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藤本 健太郎 / 編集者
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