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「男らしさ、女らしさ」は何のためにある?

『モテる構造:男と女の社会学』を取り上げて、今日で3日目になる。

1日目のnote:男にとっての女、女にとっての男とは?
2日目のnote:男女関係の非対称性について

今日は、「男らしさとは、女らしさとは?」について書いていこうと思う。


「男らしさ、女らしさ」とは?

男性が好きな女性のタイプを挙げる際、「ボーイッシュな女性がいい」ということがある。かと思えば、「あの男は女々しい(めめしい)」なんて表現も聞く。

つまり多くのひとにとって、「男らしさ、女らしさ」と「男性であること、女性であること」は、別次元の話なのだ。男らしい女性もいるし、女らしい男性もいる。


男性であること、女性であること

本noteの主題は「男らしさ、女らしさ」についてなので、最初に「男性であること、女性であること」について触れる。

結論からいうと、本中では「男性か女性か」の最終的な基準として、「外性器の違い」を挙げている。つまり、ペニスとヴァギナだ。

ただ、実は「外性器の性別」にも曖昧な部分、可変的な部分が存在する。主には、半陰陽性同一性障害だ。あまりに深入りすると本筋からそれてしまうので、本中の内容を簡単にまとめる程度でとどめておく。

半陰陽
半陰陽とは、外性器の形状が男性とも女性とも決めかねる状態をいう。ただ、社会的に半陰陽という性別はないので、暫定的にどちらかであると判断する必要がある。
性同一障害
トランスジェンダーともいわれる。自分の身体的性別(性器による性別)とは、反対の性であると自分を認識していること。


「男らしさ、女らしさ」は何のためにある?

上述の性同一性障害の話をみてもわかるように、ぼくたちの社会には、身体的な性差とは別に、「自分が男である、自分は女である」という区別が存在していることがわかる。

自分が自分でそう思っている性別を、本著では「性アイデンティティ(性自認)」と呼ばれていた。

「性アイデンティティ」について、本中では以下のように述べられている。

これ(性アイデンティティ※ぼく注)は、自分が男か、女かという確信をもつことであって、社会生活を送るのに必要な確信である。
つまり、社会が、「男性」「女性」カテゴリーを用意し、人間は、そのどちらかでなければ、社会に受け入れられない。
個人の側から言えば、どちらかという確信をもてなければ社会の中での「居場所がない」ということである。

要約すると、「自分が男か女か」という確信をもつことは、社会的生活を営むにあたっては、ものすごく重要であるということである。

逆にいうと、もしトランスジェンダーのひとが生きづらさを感じる場面があったならば、それは社会がまだまだ「男or女」の2パターンのみを前提した設計をしているからだ。

そして、「自分は男か女か」を判断する際に重要となるのが、「男らしさ、女らしさの規範」なのである。


さっきの話をまとめると、いまの社会は基本的には「男性」「女性」のカテゴリーに基づいていろんな制度が設計されている。

そのため、社会に適応していくならば、「自分は男か女か」ということを明確にする必要がある。

その際に「男らしさ、女らしさの規範」が参照されるということだ。

つまりぼくたちは、「男or女」だから「男らしさor女らしさの規範」に従うのではなく、「自分は男or女か」を確信するため、「自分が男or女か」を周りから認識してもらうために、「男らしさor女らしさの規範」を利用する。ここの順番は、大事だ。


「らしさの規範」は必要か?

...とまあ、ここまで読んでもしかしたら「そんな”らしさ規範”とやらがあるから、性差別なんかもあるんじゃないの?だったら、”らしさ規範”なんていらないんじゃないの?」と思ったひともいるかもしれない。

そこらへんは著者も抜け目なく、そういった主張に対する反論も本のなかで書いている。

本中では数ページにわたって、著者の反論が述べられていたんだけれども、端的には「らしさ規範は、車のようなものだ」と言っていた。

つまり、それによって被害をうけるひとがいるかもしれないけれども、それ以上にもたらしてくれた利益のほうが圧倒的におおきい。

交通事故が起きて、「車をなくせ!」と言うひとはいない。それは、車がそれ以上に「素早い移動」や「荷物の運搬」といった利益をもたらしてくれたからだ。

「らしさ規範」も、たしかにそれによって苦しんでるひとがいるかもしれないけど、それ以上に「スムーズな社会運営」や「娯楽の創出」といった面で、世の中に貢献してきている。

だからこそ筆者は、「らしさ規範」は必要、とまでは言わないけれども、「必要とせざるを得ない」と述べている。

ただ、筆者自身も現状の「らしさ規範」そのままでいいとは言っておらず、改善の余地はある、とも主張している。


明日は、では実際に、「らしさ規範」は社会のなかでどのように機能しているのか?ということについて書こうと思う。


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