「コンサルタント」と「アドバイザー」は別物
『採用基準』という本を読みました。
ぼくはいま大学3年生なんですが、「キャリア」や「就活」といった言葉にイマイチ関心がもてず、これまでそういった類の本とは縁がありませんでした。
ただ、新卒カードが切れるのは一生のうちにいましかなく、せっかくなのでこのタイミングで一冊なにか読もうということで、キャリア形成コンサルタントとして活動されている、伊賀泰代(いが やすよ)さんの本を手に取った次第です。
いざ読んでみると、「採用やキャリアについて書かれているのかな?」という予想とは、良い意味で違ったことが書かれていました。
というか、もう本の冒頭で伊賀さんが以下のように宣言しています。
本書で目指したのは、「これからの時代にグローバルビジネスの前線で求められるのは、どのような資質をもった人なのか」という点、ならびに、「日本ではなぜそれらの資質が正しく理解されていないのか」という根本的な原因を究明することです。
さらに、「それらの資質やスキルを身につけることによって、世の中はどう変わるのか」という社会的な側面と、「それらを身につければ、個々人の働き方やキャリア形成はどの変わるのか、どのような人生を歩むことが可能になるのか」という個人についての意味合いを明らかにすることです。
(※太字と改行はぼくがしました)
就活や採用といった、近視眼的な内容を主軸に据えたものではなく、「これからの世界で求められる資質はなにか?」「その資質を身につけることに先には、どういった世界が待っているのか?」といった、もっとおおきな視点からの話に重きが置かれています。
ただもちろん、「就活」や「採用」といった観点から勉強になる内容もたくさんあったので、何回かに分けて今日から書いていこうと思います。
ということで前置きが長くなりました、第1回のテーマは「『コンサルタント』と『アドバイザー』は別物」です。
いま世の中には「コンサルタント」が溢れかえっている
この本の著者である伊賀さんは、以前マッキンゼーという外資系コンサル企業に勤めていた経験があり、そしてマッキンゼーを退職されたいまは、「キャリア形成コンサルタント」として、活動しています。
つまり、伊賀さんは正真正銘の「コンサルタント」です。
そんな伊賀さんが、本のなかでコンサルタントの仕事について、このように述べています。
コンサルティング業務の根幹は、企業経営者向けのサービス業です。
「企業経営者向け」のところは、toCになれば「フリーランス向け」になるなどのちょっとした注意点はありますが、大事なのはコンサルティング業務の根幹が「サービス業」であるということです。
そして、本中ではコンサルティング業務を、3つのプロセスに分解しています。
①経営課題の相談を受ける
②問題の解決方法を見つける
③問題を解決する
つまり、本来のコンサルティング業務というのは、「サービス業」という名の通り、クライアント企業(の経営者)と向き合って、問題の根幹を発見し、解決法を考え、そしてそれを伴走して実行にまで落とし込んでいくという、とても地道で泥臭いものなのです。
ところが、最近世の中で「コンサルティング」と呼ばれているものは、どうも本のなかで伊賀さんがこれまでやってきたようなコンサルティングとは、ぼくは少し違うような気がするのです。
解決法を出すまでなら、それは「アドバイザー」
いま、本業で結果を出して信用度や影響力を獲得した、いわゆる「インフルエンサー(あんまりこの言葉を使いたくないけどゴメンナサイ!)」の方々が、その片手間として「コンサルティング業務」をする風景をよく見かけます。
SNSコンサルや、WEBコンサル、経営コンサルなどがその例です。
でも(本当のところはわからないのでなんとも言えませんが!)、その様子をタイムラインなどで見る限り、どうもやってるのは「案出し」にとどまっているように見受けられるのです。
つまり、さっきのコンサルのプロセスでいうと、「②問題の解決方法を見つける」までですね。
ぼくは、この本を読んで、いま世間で表に出ているコンサルは、実は「アドバイザー」と読んだほうが、ニュアンスとして近いのではないかと思いました。(あくまでもぼくの推測です!裏でこっそり③までやってたらゴメンナサイ!)
コンサルティングを本業として取り組んでいるひとたちは、ここまで泥臭くやっています。
顧客の企業価値向上を実現するには、解決策を検討する段階から組織の中に入り込んで現場スタッフの信頼を獲得し、最終的な提案内容についても、さまざまな部署と調整しながら、組織のルーチンに落とし込んでいく必要があります。
コンサルプロセスでいちばん大事なのは「③問題を解決する」
「アイデア自体に価値はない」という言説が普及しはじめてから、しばらくたちます。
インターネットによって情報自体はたくさん共有されるようになり、秘密のアイデア!みたいなものが通用しづらくなりました。
最後にカギを握るのは、そのアイデアをいかに実行するか、です。
すこしまえに読んだnoteの、とある一節が、ぼくはすごく頭に残っています。
いうは易し、行うは難し。は本当で、聞くだけで状況を理解するらしい頭のいい人たちがいう「正しいアイデア」がすぐに機能するのを私は起業して一度も見たことがない。
私たち現場にいる起業家が知りたいのは「解決のための施策」ではなくて、その「施策が機能するにはどうコミュニケーションをとり続ければ良いのか」だ。
(※改行はぼくがしました。引用元記事はこちら)
仮にここまでぼくがしてきた話をふまえて、「コンサルタント」と「アドバイザー」を明確に区別したとします。
その関与するプロセスはひとつしか違わないんですが、その②と③のプロセスの間には、とても厚くて高い壁があるのです。
このnoteは学生向け
で、ここまでコンサルとアドバイザーの違いを熱弁してきて、だからなんなんだという話です。
仮に、いま目立っている方たちのやっているコンサルティング業務が、ぼくの定義でいうアドバイザー業務だったとして、だからなんなんだと。
その方たちが奇抜なアイデアなどで、クライアントに価値を提供していることに変わりはないので、そこの名称にこだわる本質的な意味は、どこにもないだろうと。
その通りです。
じゃあぼくはなんでこのnoteで長ったらしく「コンサルタント」と「アドバイザー」を明確に線引きしようとしているかというと、これから本格的にキャリアを考える学生たちのためです。
というより、この本を読むまで2つを混同していた自分自身に向けての、備忘録みたいなものです。
企業としてコンサルティング業務をやっているひとは、いまいちSNSパワーが弱いので、目立つのは個人として活動しているインフルエンサーの方たちです。
彼ら彼女らのコンサルティング風景を見て、「へえ、コンサルティング業務って、なにか良いアイデアをひねり出すことなのか」と、誤った認識をもって、本業として本当のコンサルティング業務をやってる企業を志望すると、必ずそこのギャップでやられます。
えっ、コンサルティングってこんなに泥臭くて地味なものなのか、と。
そして、みんなが見ているインフルエンサーの方々が、アドバイザーとして半端ないお金をもらってるのは、本業で圧倒的な結果を残して、業界の最先端を走り続けているからこそなのです。
そこで得た膨大な知見や、実績による信用があるからこそ、アドバイザーとしても価値を提供できるのです。
つまり、いきなり最初からアイデアマン(でしかも、それを本業として)飯を食っていこうとするのは、すごい無理ゲーだよということです。
就活とかキャリアについて考えてる学生の方などの、なにかしらの参考になれば幸いです。
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