「このピザ大好き!」と「このピザおいしいから食べてみて!」の違い
『熱中すること』と『その熱中を他者に伝えること』は、全くの別物だなあと感じるきょうこのごろ。
キーワードは『絶対化』と『相対化』だ。
結論からいうと、『熱中する』には『絶対化』だけでいい、というか『相対化』はむしろ邪魔になることもあるのだけど、『その熱中を他者に伝える』ときには『絶対化』と『相対化』の絶妙なバランス感が求められる。
例えば『ポッキーに熱中している』という状況があったとする。
それに必要なのは『ぼくはポッキーが大好きだ!!!』という絶対的な感情である。
もちろん、熱中する前の段階として『チョコが他のお菓子よりも甘い』とか『棒状で食べやすい』とか、相対的な評価を経ることはある。
ただ、ポッキーが好きであることの理由が存在することは、同時にポッキーを好きじゃなくなる理由を作っていることでもある。
なぜなら、ポッキーよりも甘いチョコを使ったお菓子が販売されたら、その新商品のことを好きになるかもしれないし、棒状よりもせんべいみたいな平べったい形のほうが食べやすいと思ったら、別の平べったいお菓子に気持ちが乗り移るかもしれないから。
つまり『熱中すること』とは『ぼくはポッキー(という存在自体)が好きなのだ!!!』というある種の思考停止に他ならない。
ただ、この『ぼくはポッキーが大好きだ!!!』と『ポッキー最高!他の人にもぜひポッキーを食べてもらいたい!』は、まったく別の話だ。
他の人にポッキーの魅力をプレゼンするときには、相対的な視点が必要になる。
『このポッキーおいしいから!一回だまされたと思って食べてみて!』というゴリ押しでは、なかなか相手の気持ちを動かせない。
『なんで分かっててだまされないといけないんだよ』である。
まだ相手は熱中する前のフェーズなのだから、『ポッキーに使われているチョコは他のお菓子よりも甘くて』や『棒状で食べやすいよ』といった相対的な加点ポイントを付与しなければいけない。
ただ、ここで難しいのは『自分はその相対的な状態を脱してしまっていること』だ。
つまり熱中してしまうと、それを相対的な目で見たときに、ついつい『そういや、ぼくってなんでポッキーのことだ好きなんだっけ?』となってしまう。
そして、もっと難しいのは『じゃあ一旦相対的な観点でポッキーを考えてみうよう!』とするのはいいけれど、いざ実際にプレゼンするときにはそこから導き出された『好きな理由』とともに、もともと持っていた『理屈を超えた好き』も溢れ出ている必要があることだ。
淡々と好きな理由を列挙されただけのプレゼンに、聞き手の心は動かされない。
『絶対的な感情で相対的な話をする』ことが求められる。
以上、『熱中すること』と『その熱中を他者に伝えること』は、全くの別物だなあという話。
ちなみに、ぼくが今日この話を書いたのは、このあとにプレゼンするから。
20~30人の前で10分もプレゼンするのはけっこう久しぶりなので、頭のなかがそのプレゼンに対する楽しみとドキドキでいっぱいなのだ。