諺とブランディング (その1)
僕は「諺(ことわざ)」にはブランディングのエッセンスをふんだんに含んだものが少なくないと思ってます。
(正確には、諺ではないものも入っていますが、そこはご愛嬌!)
essence(エッセンス)とは
本質的なもの。最も大切な要素。精髄。
前職スターブランド退職後の講演やセミナーでは孔子の『論語』や今日のテーマの『諺』とブランディングの話をすることが多いのですが
(#スタブラの世界観とは合わないので寝かせておいた)
話を始めるとオーディエンスは、
「え、論語?え、コトワザ?」
「つまらない話が始まるの?」
という怪訝な反応を瞬間的に示すのですが、
(#よっぽど義務教育時の授業がつまらなかったんだな)
終了後に感想をいただくと、
「目から鱗だった」
「論語や諺って結構おもしろい」
という意見が沢山の人から出てきます(笑)
たまに学生向けの講演やセミナーを行いますが、決まって言われるのは「学校の授業もこんなにわかりやすくて面白ければ、もっと勉強するんだけどな〜」というとても素直な意見(笑)
さて、話を本題に戻しますが、
このブランディングと諺(その1)では、
『足許を見る』
次にブランディングと諺(その2)では、
『馬子にも衣装』
で、ひとまず話を進めていきます。
『足許を見る』
この言葉の意味は、
「人の立場上の弱みに付け込むさま」
この意味の由来は、
「昔の宿場で旅人によって値段を変えた」
旅人が泊まる街道筋の宿場では、
草履番(履物を預かる人)が旅人の足元を見て
疲れ具合を見抜き、その疲れ具合につけ込んで、
高い値段を要求していた。
法外な値段であっても、疲れていれば客は
その金額で了承してしまう。
このことから、相手の弱みにつけこむことを「足元を見る」や「足元に付け込む」と言うようになった。
そしてこれは現代でも、その人の収入ランクを「値踏み」されています。
高級ホテルをはじめとして、特にアッパークラスを相手にしているところではこの「値踏み」は普通に行われていると思います。
(靴に限らず、スーツや時計や鞄でも)
一流を目指すなら、
一流になる前から靴と鞄はいいものを持ちなさい。
…というのは色々な本などにも書かれていますが、
(#自分の価値化をしていく上では基本中の基本)
ここで僕が提案したいのは、『自分が身につけているものすべてが、”自分”を現していると思いなさい』ということです。
それは、必ずしも高級なものや一流のものということではなく、「なぜ、それを身につけているのか?」に意味があり、それをしっかり語れるかということです。
言い換えると、
・足元で自分を語れるか?
・時計で自分を語れるか?
・鞄で自分を語れるか?
ということです。
“あなたが纏っているものが、あなたを物語っている”
例えば有名な話ですが、元リッツ・カールトン日本支社長の高野登さん。
その姿はいつも必ずスーツに「リュック」でした。
これほどの社会的地位や収入の方であれば、普通に考えたら一流ブランドの手提鞄を持っている(または秘書やお付きの方が持つ)感じだと思いますが
必ず「リュック」なのです。その姿を見るとみんな驚くのですが、もちろんそこには「意味」があります。
リッツ・カールトンのトップといったら、「ホスピタリティの神様」的な存在です。自分のその”役割責任”としていつでも、どこでも、困った人がいたら「すぐに」手を差し伸べられないといけない。
鞄を持っていたら「すぐに」手を差し伸べられないので、いつでも必ず両手をフリーな状態にしておくべきだ。…という想いを「可視化」したのがリュックという選択。
その想いがない他の人(同じくらいの社会的ランク)は、きっとヴィトンの20~30万の鞄を持っているでしょう。
もうひとつ例を挙げると、最近あらためて観たNETFLIX作品『Followers』の主人公。
写真家&映画監督の蜷川実花さんの自伝的な作品と言われていますが、中谷美紀さん演じる主人公リミが駆け出しの20代に「撮影現場にルブタンのピンヒールで現れる」「これが私の戦闘スタイルなの」というシーンがすごく好きです。
単に「ルブタンの靴が好きだから」ではなく、男尊女卑の古い業界でひとり争うときでさえ「どんな時もエレガントで美しくいたい」というリミの「意志」の象徴的アイテムになっています。
個人のブランディングとは、「自分の強み」を高め(価値化)て身にまとう(可視化)ことです。
だからこそ、
・適当(悪い意味で)なものを身につけてはいけない。
・自分の意志に通じないものを身につけてはいけない。
・「好きだから」という理由”だけ”で着てはいけない。
・「ラクだから」という理由”だけ”で着てはいけない。
自分ブランドを高めるために必要な外見戦略は、
「お洒落になる」ことではなく、
「高級なものを持つ」ことでもなく、
自分の意志(ビジョン)を纏うことです。
「どういう人に見られたいのか」ということを徹底的に考え抜き、それを自分の強みとして内面的にも高めていく(価値化)そしてそれを言葉にしなくても伝わるように外見に反映させていく(可視化)こと。
単に「好きだから」という理由だけで着るもの持つものを決めるのは学生の時だけ。社会人には「自分の価値を上げ、上手に伝えていく」戦略が必要です。
例えば、営業マンにとって革靴は消耗品だから「高い靴を履くなんてアホだ」といって4,980円の革靴もどきを履く人。
(#一般的な営業マンに多い)
そして、それなりの人を顧客にするには、「スーツと靴と鞄に投資しないといけない」と考えて10万円の革靴を大事に履く人。
(#外資系の生保営業マンに多い)
この価値観の違いが、年収の違いにも出ているのではないでしょうか?
足元はいつも見られている。
足元はどこでも見られている。
初対面の男性のどこをチェックしている?という質問に対して「靴が綺麗がどうか」という女性も少なくないですね。
“あなたが纏っているものが、あなたを物語っている”