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アメリカからみたSTAP細胞

[この文章は2016年3月に書きました。時事性はもはやありませんが備忘録ということで]
 2016年2月29日号のThe New YorkerのSTAP細胞の記事。おぼチャンに集中していた日本の報道だが、ここではアメリカ留学中の受け入れ先のハーヴァードのヴァカンティについて詳しく書いてある。ストレスを与えて再生細胞を作ることを着想したのは彼でそれを生化学的に洗練したのがおぼチャンのようだったみたい。

 STAP細胞-この名前はおぼチャンじゃなく彼女の後見人の立場にいた笹井さんがつけたものとニューヨーカーでは言っている―とはヴァカンティ曰く、通常怪我をした時ほとんどの細胞は死ぬが中には別の細胞を作る幹細胞があり、それを人為的に同じようなストレスを与えて作ったものであるそうだ。

 ヴァカンティはこの記事によると天性の修繕屋で壊れた車やバイクを乗れる様にするのが趣味で、秀才の家庭で一人除いて兄弟全員が医者だそうだ。その一人がダウン症で、ヴァカンティは発達不全の脳細胞を再生細胞で補えばダウン症も治るのではないか、と着想してほかの兄弟と研究を始めたそうだ。

 彼らは微細なピペットなどを通し物理的に細胞にストレスを与えて、再生細胞を作ることに何度か成功したが学会は認めなかった。生物学に素人である彼―彼自身は麻酔医である—は限界を感じ、それで留学してきた、生化学に精通しているおぼチャンに白羽の矢が当たり、彼女が化学的ストレスを与える手法で研究を始めたそうだ。

 日本では純粋な科学者で通っている若山さんが妙に生臭く描かれているのも面白い。理研の10年任期が切れる目前で、大学教授職を欲していた彼にとっておぼチャンに協力することは願ってもないチャンスで、彼の力で権威ある雑誌natureに論文を載せるのに自信を持っていたという。

 大雑把に言うと幹細胞ができるストレス環境を〔安定的に〕人為的に作ることがミソなのだが、生化学に素人な麻酔医(ヴァカンティ)、博士号取り立ての未経験者(おぼチャン)、粗忽な秀才(笹井)、融通の利かないが野心家の職人学者(若山)は、どっかでそれぞれが他のメンバー頼みで詰めが甘かったのだろう。まぁおぼチャンの発光マーカーによる剽窃は論外だが。

 なお別の剽窃、即ちおぼチャンの博士論文の序文で米国立衛生研究所(NIH)のウェブサイトからのコピペは、彼女曰く本論文ではなく草稿を誤って提出したからと、それでも剽窃を正当化できない不思議な言い訳を言っていたが、ヴァカンティに対しては早稲田では博論なんて誰も読まないのでコピペは当たり前に行われていた(だからやった)、と答えたとニューヨーカーのこの記事には書いてあるが、これちょっとまずいんじゃないの、おぼチャンそしてあと早稲田?!


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