見出し画像

安定志向型の新卒コンサルはなぜスタートアップに転職したか?

Ubie株式会社の製薬事業部門であるUbie Phama Consulting(UPC)でAccount Principalとして働いている榊原です。
(ご参考:会社ページ症状検索エンジン「ユビー」)

私は2022年5月にUbieに入社し、それまでは新卒から一貫してコンサルティングファームで働いていました。
業界的に非常に好調・堅調な成長をみせ、もはや安定とも言えるコンサル業界から、一見すると高リスクと思われるスタートアップへの転職をしたわけですが、なぜそのような意思決定を行ったのか/行えたのかについて、執筆してみたいと思います。


自己紹介

私は国内の大学院を卒業後、新卒でコンサルティングファームに入社し、転職はしたものの一貫してコンサルティングファームで働き、最終的にはマネジャー職に就いていました。

主にM&AやSCMといったファンクション機能のチームに所属し、各専門領域の案件、新規事業立案、組織設計などの一般的には戦略と呼ばれるような上流領域に関わる案件を経験してきました。

また、性格的な観点に言及すれば、過去に一緒に仕事をしたパートナーからは「石橋を叩きすぎて、渡らずに壊す」といわれるほどのリスク回避・安定志向型の人間です。

そんな私がスタートアップに転職したことを伝えると、コンサルタント時代の同僚のほとんどの人は非常に驚きます。

自分でもまさかスタートアップに転職することになるとは思っていなかったのですが、だからこそ、私自身がスタートアップに転職した理由を記すことで、コンサルタントの方々のキャリア構築の一助になるのではと思い、筆をとることにしました。

ここでは、私が転職に至った経緯や思いについて時系列に沿って記載できればと思います。

1.コンサルタントとしての自信の芽生え

コンサルタントのキャリアを振り返ってみれば、比較的順調な方であったといえるでしょう。

コンサルタントらしい少し無茶な働き方も経験しながら、20代後半でマネジャーに上がることができ、比較的順調なプロモーションを果たしている方だったと思います。

論点設計・調査/分析・示唆抽出といったプロジェクト運営に必要なノウハウや、営業職としてのクライアントとのリレーション構築などを一通り経験することができ、コンサルタントとしての自信が芽生えだしてきていました。

(もちろんコンサルタントとして一人前になれたかというとそうではありません。責任の重さや価値の出し方などを考えれば、パートナーになって一人前という業界です。)

また、マネジャーになると自身の成長曲線に陰りが見えだす、という方もいるかと思いますが、私の場合は今までの飛び地だった経験が有機的に結び付き出し、自分なりの示唆や価値を提供できるようになってきており、「コンサルタントとして」できることは加速度的に増えている、と感じていたタイミングでした。

2.キャリアへの不安

しかし、コンサルタントとしての先のキャリアがなんとなく見えてきたことで、逆に不安が湧いてきたことも事実でした。

これまでは暗中模索で目の前のことだけに集中していればよかったのが、先の道が見えだしたことで不安になったというか、、、。

そんなときにあるシニアパートナーの方の話がとても印象的だったのをはっきりと覚えています。

コンサルタントのキャリアは、大なり小なり変動要素はあるものの、これをやればこうなる、ということが見えやすい。いい面でもあるが、逆にいえばそれがつまらないと感じる。
また、見えやすいからこそ、コンサルタントを一度離れてもキャリアを積みなおすことはできる。

また、やはりコンサルタントはクライアントにとっての部外者であり、どこまでいっても主体者にはなれないままであるということに改めて気づきました。
マネジャー職になってより強くそれを実感する場面があり、それに自分の人生を賭す価値があるのかということをふと思ってしまったのです。

俯瞰的にみれば少し早めの中年の危機にあたる事象であり、時間が経てば自ずと落ち着くものであると思っていました。

しかし、当時の年齢とマネジャーという職位を踏まえると、Postコンサルとして最も多くの選択肢を持てるタイミングではないかとも思います。

なので、せっかくの機会ですし、約1年間を自分探しの期間として位置づけ、「何をやりたいのか?」を自分自身に腹落ちさせるよう徹底的に考えてみることにしました。(もちろん、働きながらですよ)

3.何をやりたいのか?

約1年の間に、自分探しと称して色々な人からお話を伺うことができ、非常に興味深いお話を頂くこともありました。

そのようなお話を頂いたことで整理できた「自分のやりたいこと」と、それに紐づく仕事への要件は以下の4点に集約されます;

  • ①家族との時間を大事にする → 事業主体者として裁量のある役割

  • ②社会にインパクトを与える → 社会課題を解消しうるビジネス

  • ③成長にフルコミットする → スタートアップ > 大企業

  • ④組織を科学する → 組織を見渡せる立場での参画

また、これに「できること」視点で、コンサル経験からダイナミクスを理解しているB2Bビジネスである、ということも必須の要件になります。

①家族との時間を大事にする → 事業主体者として裁量のある役割

中年の危機が発生する最大の要因の一つとしてライフステージの変化が挙げられます。私もその類に漏れず、子供を持ったことがそもそもの今回の葛藤のきっかけだったと思います。

色々な家族の形があると思いますが、私個人としては、毎日きちんと育児に関わり、子供の成長を一瞬も見過ごしたくないという想いがありました。

正直、それを叶える上ではコンサルタントという仕事は非常にハードルが高いと感じます。それは、よく言われるような単純な仕事量という観点ではなく、プロフェッショナルとしてクライアントファーストを貫く上でどうしてもどこまでいっても他者依存の動きにならざるを得ない、という観点です。
(もちろん、個人レベルでみればコンサルでもうまくコントロールされている方もいらっしゃいます)

マネージャーとなったことでプロジェクト自体のコントロールは比較的可能になったものの、一方で、嬉しいことに多数の提案機会を頂くようになりました。コンサルタントとしては自分の実力が認められつつあるということであり、とても幸せなことです。

しかし、日中はデリバリーの作業に充てなければならないため、夕方から夜にかけての家族のゴールデンタイムを仕事に取られてしまうことが多くなっていました。

そのような現状から、コンサルという仕事に就き続ける限界を感じると共に、事業運営の主体者として、また、裁量のある立場での仕事を行うことで働くことが望ましいのではないか、という結論に落ち着きました。

②社会に良いインパクトを与える → 社会課題を解消しうるビジネス

次に考えたのは、そもそも就活時になぜコンサルタントを選んだのか、という観点です。

当時の私は特段やりたいことがあったわけではなかったのですが、漠然と大企業の意思決定に関わることで社会にインパクトを与えられる仕事ができたら面白いのではないか、という理由でコンサルティングファームを選びました。

実際に、自分の関わる案件がメディアに取り上げられているのを見ると本当に大きなモチベーションアップにつながります。(もちろん、私がやりました、とは言えませんが)

上述したように、新卒での就活時には大企業でやれる大きなことが社会にインパクトを与えることだと考えていましたが、コンサルティング業務を通じて様々なビジネス・ステークホルダーに触れたことでその考えは大きく変わりました。

現時点での私の「社会にインパクトを与える」の解釈を別の言葉で言語化するならば、「社会や産業が抱えている構造的な課題を解消する」ということであると考えます。

したがって、もしコンサルを辞めるのであれば、産業や社会が抱えている構造的な課題を解決できるような仕事に就くことが、自分にとってのやりたいことであると結論付けました。

③成長にフルコミットする → スタートアップ>大企業

また、自分にとってどういう瞬間が一番楽しかったか・興奮したか、という観点でも振り返りを行いました。

自分にとってエキサイティングな仕事とは、安定した仕事・業務を正確に回すことよりも、不透明な状況ながらも成長や変革を推し進め、それに全力を注いでフルコミットするということです。

一方で、コンサルティングという仕事の性質上、成長や変革に「関わる」ことはできても実際に「フルコミットする」ことはどこまでいってもできないと感じていました。

誤解して欲しくはないですが、個人単位でみればコンサルタントは案件およびクライアントの成長にフルコミットし、全力を尽くします。
しかし、個人としてどれだけコミットしようが会社対会社の関係であることは変わらず、クライアントのコスト環境が厳しくなれば削減対象になる存在です。
コンサルタントがそのような仕事である以上、長期的な成長・変革の絵を当事者意識をもって描くことはできても、本当の意味でのコミットし、推し進めることはできないでしょう。

また、できるだけ他責にできない環境に身を置いてみることもフルコミットする上で重要だと考えました。

大きな組織になればなるほど、既存の仕組みや多数のステークホルダーに囲まれることになりますが、そのような環境ではどうしても他責思考に流れがちです。
それでは本当の意味で成長や変革にフルコミットしているとは言い切れず、せっかく転職をするのであれば、そのようなしがらみを極力受けない環境に身を置きたいと考えるに至りました。

以上の点を踏まえると、コンサルタントを辞めた後の選択肢としては、大企業よりもスタートアップという選択肢が実は適しているのではないか、という結論にたどり着いたのです。

④組織を科学する → 組織を見渡せる立場での参画

最後に、「どのような組織が良い組織なのか」を分析し、体系化して後世に伝えるということを常々やってみたいと考えていました。
すなわち、良い組織≒成長する組織において、どのようなタイミング/フェーズで、どのような要件が求められるのかを特定し、どうやればそれが実装できるのか、という論点に自分なりの解を出すということです。

仮にスタートアップとして入ったとしても、単なる営業の一要員では何が成長を促進したのか/阻害したのかを大局的に観察し、分析し、整理することは難しいでしょう。

すなわち、仮にスタートアップで入るにしても、組織開発においてある程度は網羅的に見渡せる立場でのポジションで入ることが要件の一つとして追加されました。

4."Ubie”という選択、
”Ubie Phama Consulting”という選択

以上の4つの「やりたいこと」および「ビジネスの要件」に適合する会社・組織としてフィットしたのが、UbieおよびUbie Phama Consulting(UPC)でした。

私がUbieのメンバーから話を聞いたのは、ちょうどUPCを立ち上げる直前の時期です。

まず、Ubieという会社のプロダクトや将来像について話を聞いたときに、本当に社会課題を解消しうるものだと感じました。
また、それは日本だけではなく、グローバルでも同様の課題を解消しうるものであり、非常に大きな社会的インパクトを与えられるのではないかと期待できました。(②社会に良いインパクトを与える)

また、UPCというB2B向けの事業を立ち上げる段階であり、その成長に責任を持ち、一定の裁量の下で自分が必要だと思ったことをまっすぐに試せることができるフェーズであるということも非常に魅力的でした。
(③成長にフルコミットする、④組織を科学する)

最後に、スタートアップですのでやることは無限にある一方で、裁量を持って動けるという点や、既存のUbieメンバーの人となりや労働環境を話を聞いて、十分に自分でコントロール可能であると結論づけました。
(①家族との時間を大事にする)

以上の観点から、当時の私には、UbieのUPCが最も最適な決断であると考えるに至りました。

補足:コンサルからスタートアップへの転職リスク

ただ、スタートアップおよびUbie/UPCがやりたいことにフィットしているとは理解しつつも、決してリスクを考えなかったわけではありません。
具体的には、以下の二つの観点のリスク;

  • 金銭面でのリスク

  • 順調なコンサルタントのキャリアを捨てるリスク

まず、金銭面でいえば、コンサルタント時代からは給与は減少したのは事実です。
しかし、UPCにおいては業績連動でのインセンティブがあり、アップサイドのボラティリティがかなり大きいため、自分の頑張りが給与にダイレクトに響くという意味でもふんぎりがつきました。
また、ストックオプションも含めたUbieで得られる報酬の期待値とコンサルタントを続けた場合の給与を天秤にかけることで、金銭的なリスクについては自分の中で納得させることもできました。

また、二点目のコンサルタントのキャリアを捨てる、という観点ではスタートアップのキャリアが決してマイナスに働くことはないと考えました。
万が一、Ubieにフィットしない、Ubieの成長に陰りが見えだす、といった状況でもスタートアップでの事業成長・組織開発の主体者としての経験はそのままコンサルタントの業務にレバーすることが可能であり、出戻りが普通であるコンサルティング業界においてはむしろプラスの経験ではないかと結論付けました。

スタートアップに入社する人が熱狂だけで入る人もいますが、このような打算的な側面を持って入社することが大半です。
少なくとも自分と同じようなキャリアを歩んでいる方は、過度に心配することはないのではないでしょうか。
(と、転職した今なら簡単に言うことができます)

最後に

ここまで自分がどういう人間で、なぜUbieに入社したかを可能な限り言語化してみました。読者の方に当てはまるもの、当てはまらないもの、双方あったかと思いますが、少しでも悩めるコンサルタントのキャリア検討の一助となれば幸いです。

本記事を執筆しているタイミングではUbieで働き出して1か月程度になりますが、少なくとも上に書いたような「自分がやりたいこと」は実現できそうですし、コンサルで培った「できること」は事業運営においても非常に有用であると実感しています。

長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

UPCではともに製薬事業の変革を目指す仲間を募集しています。
ご興味を持たれた方はこちらからどうぞ


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?