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ironman Philippines 2024
またこの大会に来てしまった。
ironman Philippines at Subic bay
6年前、24才の時に人生2回目のアイアンマンで出場した大会。その時はとにかく暑く、でも意外と良いタイムと順位でゴールできてこの大会には良い印象が残っていた。
今回、僕がここに来た目的はただ一つ
もう一度、アイアンマン世界選手権(通称コナ ハワイ島のコナで行われるため)に出るため。2年前、念願のコナに出れたにも関わらず、直前で風邪を引き完走出来なかった。あの日から一度もあの悔しさを忘れた日はなく、四六時中コナのことばかり考えている。
まるでコナに取り憑かれている。
しかしその挑戦も今年で最後にしようと思っている。今年30歳になり、トライアスロンも9年目。
そろそろ本気でトライアスロンに打ち込むのが時間的にも、そして将来のことを考えると厳しくなってきた。いつまでも漠然と夢を追い続けるのも良くないから、今年で最後の挑戦にしようと心に決めている。寂しいけど、むしろ9年間も色々なレースに出れて幸せだと思うべきもしれない。
そんなわけで、フィリピンはヨーロッパに比べて全体的なレベルは低く、コナの切符を取りやすいから選んだ。
コナの条件は年代別(30-34歳の部)で2位以上が必須。過去のリザルトを見ると自分にも行けそうなタイムだ。しかし今年は自分と同じことを考えてるのか、強い選手がヨーロッパからも沢山集まった。
とりあえず現地に着き、念入りに下準備をした。
人混みが多いところは必ずマスクをして、食べ物は半分は日本から持ってきたアルファ米。飲み物も、うがいや口をゆすぐ時も市販の水でしていた。宮古島トライアスロンの時みたいに脱水症状にならないように毎日4L水を飲んでいた。
もうこれでもかと徹底していた。
前日に走った感じも悪くなかった。
完璧にコンディションが整ったと思った。
日本でのトレーニングもしっかり出来て自信も付いていたから、レース前夜は楽しみでなかなか寝付けなかった。
何がなんでもコナゲットするぞ、と。
そして、当日。
5時間ぐらいしか寝れなかったが脳は覚醒していた。でも心は落ち着いていて、すごい良い感じ。
そして、いよいよレース開始。
まずはスイム3.8km。
海に飛んでいく。
そして泳ぎ出し始める。
が、どうも腕の調子がおかしい。
全然力が入らない。どうしたどうした、と動揺する。泳ぎ始めなのに、まるでもうすでに5キロぐらい泳いだぐらいの疲労感のある腕。
うそやろ?絶不調?!と絶望感をおぼえる。
そうこうしてるうちに後からスタートした人たちにも抜かれる。悔しくてたまらない。あんなに練習したのに。スイムは1.9kmを二周するので、とりあえずなんとか一周目を終えて、浜に上がる。
もう倦怠感がすごかった。
そして脚もバキバキに攣っていた。
ここで脱水症状に似てると感じ始めた。
いやでも今日まで水をしっかり飲んでたし、朝も600mlぐらいは飲んだ。脱水はないはず。
じゃあなぜ、、
もしかしたら逆に水飲みすぎた?
低ナトリウム症(水中毒)?
水を飲み過ぎたら逆にミネラルが体から過剰に放出されて、脱水症状に似た状況になる。
そう、先程書いたように、熱中症・脱水予防で現地に着いてから毎日4L以上の水を飲んでて、レースまでの4日間で17L飲んでいた。
これしかないと思った。
つまり、脱水症状のようなとんでもないディスアドバンテージを抱えながらアイアンマンレースを開始してしまったのだ!
たまに海水を飲んだ時にこれで塩分補強になるかな?とバカなことを考える。
仕舞いには、左腕に激痛と走ったと思ったらクラゲに刺される。顔の左側もピリピリしている。
もうとんでもない仕打ちを受けながら、なんとかスイムフィニッシュ。タイムは1時間18分。
遅い!過去ワーストタイム。
なんとか得意のバイクで追い上げたい。
頼むから脚動いてくれと願う。
しかし、その願いとは裏腹に、やはり脚も動かない。パワーがいつも6割ぐらい出ない。
『あぁ、長い1日になるな』とここで覚悟を決める。
とりあえず塩分タブレットを持参してたからひたすら食べる。ミネラルバランスをすぐにでも整えたい。
最初の30kmは何とか乗り越えたが、それ以降は次第にパワーが尽きてくる。塩分タブレットの効果もあんまり効いてる気がしない。まだあと150kmぐらい残ってる。もうここで色々ネガティブなことを考え始める。
『なんでまたこんな運命に』『あんなにトレーニングしたのに』『せっかくフィリピンまで来たのに』もう脚には力が湧いてこない。もうここで僕のレースは終わったと感じ始める。
そして60km地点。もうただのサイクリングになってるので、リタイアが頭の片隅によぎる。
お腹の出た太っちょな人やビギナーっぽい女性にも抜かれる。あぁ、惨めやな。恥ずかしい。
もうコナもダメや。あかんかったんや。もうバイクもここに捨てて帰りたい。いや、応援してくれてる人に合わす顔がないから、フィリピンにずっといたい。
そんなことを考えながら、絶望感に浸りながらも
トボトボ90km地点ぐらいまで来た。
せっかくフィリピンまで補給食もいっぱい持ってきたから全部食べよ。と思い全部食べた。
もうリタイアすべきなのか、、スタッフも周りに沢山いたから伝えることは出来た。でもどうしても出来なかった。もうリタイアとか棄権は嫌なのだ。去年散々味わったから、もうこれ以上どん底に落ちたくない。口からこぼれ落ちそうになるリタイアという言葉を抑え、なんとか峠を登りきり、坂を降ると90km以降の周回コースまでと辿り着いた。
残りの90kmは15キロを6周回するコース。
みんな必死に漕いでる。
久しぶりにこんな大勢の人を見た。
ここまでほぼ単独走だったから、ああそうか僕はまだレースに参加してるんかと思い出す。
せっかくここまで来たし1周ぐらいはちゃんと漕いでみようと思い、ペダルを回す。
そしたらどうしたことか、パワーが戻ってる。
フルパワーではないが、残り90kmは漕げそうなパワーまで回復している。
どうやら、補給食をバカ喰いしたことでようやく体が回復したみたいだ。
一気に高揚感が高まる。
来た!この感じ。この力が出る感覚。
待ちに待っていた感覚。
一気にスピードを上げる。今まで抜かされてた人たちを一気に抜き返していく。
みんな『さっきまでこの人こんなに遅かったのに?!』みたいな表情で僕を見返していく。
これが自分のスタイルや!嬉しくて涙が出てくる。
悔しい。でもレースを諦めなかった。リタイアを選ばなかった。
それが嬉しかった。期待してくれてる人を裏切り、こんな結果になってしまった。でも自分は諦めなかった。『不細工でも最後まで諦めなかったらいいやん』って思えた。何か殻を破れた感じが嬉しくて、1周目はずっと泣きながら鼻水垂らしながら走っていた。(リザルトを見てみると、この90km-99km地点のタイムは誰よりも1番速かった)
2週目以降は淡々とマイペースに走り、それでもほとんど抜かされることはなかった。やっと僕のレースが始まった気がした。
残り10km、170km地点まで来て、よくここまで来たなと思い、また涙が止まらなくっていた。
コナはもうダメかもしれない、でも何かそれ以上に大事なものを見つけれていた気がした。
トライアスロンを始める前は色々とすぐ中途半端に諦めらめる癖がいていたが、9年経ってキツくてもこうやって最後まで走り続けている。
その気持ちの成長がただただ嬉しかった。
コナに行けなかったら自分はLoserだと思っていたが、このスポーツの本質はゴールしたら誰でもwinnerだ。そういう大切な気持ちを忘れていた。
そんなことを考えるとても濃い6時間だった。
そしてここから、42kmのマラソン。
脚は軽い。時計を見なかったら、1km4分15秒ぐらいまで上がっていく。なんとか抑えて、42km走れ切れるペースまで落とす。
しかし、10km過ぎてやはり今日の自分にはマラソンを走れる力は残ってないと感じ始める。
やはり最初の脱水がデカかった。
ハーフまでは平均1km5分で来れていたが、ここからは下がっていく一方だった。
でもこのレースには、1人チームメイトの知り合いが出ていて、彼は最年少の年代別(18-24歳の部) でコナを目指している。自分は今回ダメだったが彼にどうしても出てほしい!周回コースだから、何回も彼に会う。その度に、『頑張れ!あと2周回走ったらコナが待ってるよ!』と励ましやハイタッチを送った。まるで何か自分を見ているようで、応援に熱が入った。
最終周、またすれ違い際に『コナ行けそうです!』とハグをして教えてくれた。こっちまでまた泣きそうになった。
ぜひコナを楽しんで来てほしい。
そして彼より一周回遅れている僕は、ラスト10kmはクタクタにながら、ランと徒歩を繰り返しなんとかゴールした。
長い1日が終わった。
合計12時間4分かかった。
もちろん今までで一番遅いタイム。
でも本当に何か、すごい濃い12時間を過ごした感じがして、フィリピンに来て良かったと思えた。
もちろんこのレースでコナを獲得できなくて本当に悔しいが、諦めないで本当に良かった。
僕はこのレースが最後のコナを狙うレースに決めていた。というのも実は8月にアイアンマン・コペンハーゲンをエントリーしている。これは今年でトライアスロンも最後だし、最後に思い出作りに出たいなと思いエントリーしていた。
もちろんこのレースでもコナを狙えるが、なんせヨーロッパだからレベルがかなり高い。だから、フィリピンでコナを狙うのは最後にしていた。コペンハーゲンは楽しんで走ろうと。
でも、無謀にも、ここでもコナを狙ってみようと思う。もしかしたらこれが最後のトライアスロンレースになるかもしれないなら、一か八かやってみよう。
やっぱり最後可能性がわずかに残ってるならコナを諦めきれない。
そのくらいコナに行き、次は必ず完走したい。
残り2ヶ月、一度休憩して、もう一度最後の挑戦に向けてトレーニングしよう。
次の決戦は、8/18 !
行くぞ、コナ!
応援してくれた方、ありがとうございました。
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