【危機に直面した時の上司・部下の在り方】後藤田正晴・元内閣官房長官の「後藤田五訓」

もう後藤田正晴氏のことを知っている人は少なくなったのでしょうか。
カミソリ後藤田と異名を持つ後藤田氏は、中曽根内閣で官房長官でその手腕をふるっていました。
そして国家の危機管理に対処するために、1986年後藤田正晴氏は新たに内閣五室をつくったのです。
その時の式典で後藤田氏は各省から派遣された30年の職歴をもつベテラン官僚に訓示をしています。そこには国家の危機管理を所管する後藤田氏が部下に求める行動指針が明示されて、これは「後藤田五訓」として語り継がれています。

1.省益を忘れ、国益を想え
2.悪い、本当の事実を報告せよ
3.勇気を以て、意見具申せよ
4.自分の仕事でないという勿れ
5.決定が下ったら従い、命令は実行せよ


総理府一階の大会議室で催された内閣五室制度発足の式典における後藤正晴官房長官の初訓示は、圧巻だった。
「……以後、諸君は大蔵省出身だろうが、外務、警察出身だろうが出身省庁の省益を図るなかれ、『省益ヲ忘レ、国益ヲ想エ』。省益を図ったものは即刻更迭する。
次に、私が聞きたくもないような、『悪イ、本当ノ事実ヲ報告セヨ』。
第三に『勇気ヲ以テ意見具申セヨ』。『こういうことが起きました、総理、官房長官、どうしましょう』などというな。そんなこと、いわれても神様ではない我々、何していいかわからん。そんな時は『私が総理なら、官房長官ならこうします』と対策を進言せよ。そのためにきみら三十年選手を補佐官にしたのだ。地獄の底までついてくる覚悟で意見具申せよ。
第四に『自分ノ仕事デナイトイウ勿レ』。オレの仕事だ、オレの仕事だといって争え(積極的権限争議)、領空侵犯をし合え、(テキサスヒットを打たれないよう)お互いにカバーし合え。
第五に、『決定ガ下ッタラ従イ、命令ハ実行セヨ』大いに意見はいえ、しかし一旦決定が下ったらとやかくいうな。そしてワシがやれというたら来週やれということやないぞ、いますぐやれというとるんじゃ、ええか」
出所 『わが上司 後藤田正晴』佐々淳行著 文藝春秋刊

この五訓、危機管理における上司・部下の在り方、行動指針となっています。私は危機管理研修のテキストを作る時、この五訓をコラムとして入れています。


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