狂言『二人袴』は聟入りのお話、さて室町時代の聟入りとは
和ろうてござるか〜
わたくしは十八年前の二〇〇四年に結婚いたいてござる
結婚の前にはお妻様の御両親に挨拶に伺うてござるが
狂言の中では結婚した男は、結婚した後、日を改めて
妻の父親の元へ挨拶に向かうようでござる
すなわち義理の親の顔もまたお家の様子も知らず
新婚生活を始めているようにござる
聟入りとは妻の家に養子になることにあらず
つまとなる娘の親から見た夫を婿(むこ)と申すが現世の通例でござるが
狂言では‘聟’という字を遣うてムコでござる
また聟に入るとは、妻の家に婿養子となる、と思われるところでござるが
狂言の聟入りと申すは結婚後初めて、妻の父親に挨拶に赴くことなのでござる
聟入り狂言はおめでたさとばかばかしさの調和
『二人袴』は聟狂言の一つ聟入り物でござる
さて最初に揚幕をくぐり橋掛かりを渡って参るは
シテ(主役)の聟が迎えた妻の父
すなわち舅殿と、その後ろに使用人たる太郎冠者でござる
舅は本舞台に入ってすぐ、客席から見て左奥の常座にて
名乗りをいたしまする
太郎冠者はいったん舅の左後ろに座ってござる
舅がまずは状況説明
「こんにった最上吉日でござるによって聟殿の見ゆるはずでござる
まず太郎冠者を呼び出しそのよし申し付けようと存ずる
ヤイヤイ太郎冠者!おるかやい!」と云うて脇座へ移動
太郎冠者はこの呼び声に呼応して立ち
長い返事をしながら今舅が居た常座に進み出まする
「は〜〜〜〜〜〜〜ア⤴︎」最後のアが少し高くなるように発声しまする
そして太郎冠者に聟が来る旨説明し
掃除など準備怠りないよう
また来たならばこちらへ知らせるようにと
この二人のやりとりは
ちゃんとしたモノでござる
さて舅と太郎冠者はいったん下に居り
続いて聟、ではなくその兄が着流しに侍烏帽子と云う出立ちで登場でござるが