離-ロ-と】狂言『附子』すべては言い訳のためでござる
和ろうてござるか〜
わたくし幼少の頃は泣きムシで
物心ついた頃からはウソ泣きが得意になってござる
いつのまにかそんな癖も無くなってござったが
今はちょっとしたことで涙腺が緩んでしもうてござる
このブログでは狂言好きのわたくしけんすけ福のかみが
もっとも狂言らしい登場人物“太郎冠者”の名を借りて
皆さまを狂言の世界へご案内するつもりで描いてござる。
なにとぞ和らいだお心もちにて読うでくださりませ〜
主人が大切にしている附子(砂糖)を食べ尽くし
主人が大切にしている掛け物をばっさり破り
主人が大切にしている天目茶碗を粉々に割ってしもうた二人冠者
主人が帰ってまいりますると
太郎の提案でもって
泣き出す二人
主人が訳を訊いても
太郎「次郎冠者、申し上げてくれい」
次郎「太郎冠者、申し上げてくれい」
どちらでもいいから早く説明しろと言われ
太郎冠者が勿体つけて云いまするには
お留守番の最中に
眠ったりせぬよう二人で相撲をとっていますれば
次郎が強くて今にも投げられそうになったので
掛け物を掴んだら、
アレ!あの通り
破れました〜!
すかさず次郎は
それをとって返すとて
台天目の上へずでい、と
アレ!あの通り
粉微塵になりました〜!
この状況に対し、怒りに震える主人
己れら生けて置くモノではないぞ!と息巻いてござる
その言葉を受けて
太郎冠者「とても生けてはおかれまするまいと存じ
附子なと食うて、死のうと思うて〜、のう次郎冠者」
次郎冠者「おう!」
ここから謡いが始まってござる
🎵一口食えども死なれもせず♬二口食えどもまだ死なず
三口、四口〜、五口〜十口あまり〜♪
皆になるまで〜食うたれども〜
死なれぬことの〜愛でたさ〜よ♬
あ〜ら〜頭がた、やんにゃ
この浮かれた雰囲気に
怒りも緩んだ主人に追われて逃げる二人
やるまいぞ! 許させられい〜
やるまいぞ! 許させられい〜
とスタンダードな追い込み留めで
仕舞いでござる
振り返って見ますれば
思うまま貴重な砂糖を食べ尽くした言い訳に
掛け軸や天目茶碗を散々にして
好いわけもござらぬが
主人は謡の前の怒りが
後ではすっかり緩んでござる
こうして和み
和らいだ空気を醸すのが
狂言ではないかと
そう思うてござる
これにて附子は仕舞うてござる
またのお話でお目に掛かれましたら嬉しゅうござる🤗
この狂言noteはけんすけ福のかみが大蔵流 茂山千五郎家の狂言を中心に
学んだことや思うことを描いてござる