太郎冠者最後の言い訳 狂言柑子 弍
和ろうてござるか〜
狂言柑子を紹介してござる
冒頭から中段まではこちらにござる
最後に残った一つの柑子を出せと云われた太郎冠者
ここに哀れな物語があるので語って聴かせましょう、と申し
ここからは語りが始まりまする
ここで語りまするは能にもござる俊寛僧都の流刑の物語
平相國の治世
丹波の少将成経、平判官入道康頼、俊寛僧都
彼ら三人は鬼界ヶ島に流されてござる
さりながら、成経と康頼の二人は赦免され戻れたが
俊寛ただ一人鬼界ヶ島に残されてござる
この物語の如く
三つ成りの柑子も
♪一つはホゾ抜け、一つは潰れ、一つは残る
人と柑子の違いはあれど
思いは同じ涙の物語でござる♪
さいごの三行は謡調子となり
感極まった太郎冠者は泣くのでござる
主人は再度残った柑子を出せと催促しまするが
太郎冠者はただいまの物語の内に入っていると答えてござる
納得できない主人
太郎冠者は自身の腹を指し
「太郎冠者の六波羅に、とおど納まってござる」
うっかり食べた太郎冠者最後の言い訳は
平家物語になぞらえてござるが
結局全部食べてしまった太郎冠者は
主人に叱られて仕舞いと成る叱り留めでござる
短い狂言ながら語りと謡いがあり
楽しい狂言かと存じてござる
この狂言noteはけんすけ福のかみが
大蔵流茂山千五郎家 島田洋海社中にて
狂言を学んだことをモトに
実際に狂言を(できれば生で)観て
和らいでもらいたいと願うて描いてござる🖋
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