石に立つ矢
必死になってやれば、いかなることも不可能ではない。
このたとえは、中国人の好むもので、いろいろな物語となって伝えられている。
韓詩外伝の物語るところは、次のようなものである。
「昔、蘇の国の熊渠子という武将が、閨夜に歩いてると、大きな虎が伏してこちらを窺っているのに気付いた。
熊渠子は、一心をこらして、ねらいを定め、渾身の力で矢を放ったところ、見事、その虎をしとめたように見えた。
しかし、近づいて良く見ると、それは虎ではなく、虎に似た岩石であった。
しかも矢じりだけでなく、矢羽根までも岩にめり込んでいた」というのである。
この寓話のおもしろいところは、はじめから岩であれば、これを射ることもなく、
もちろん、不可能を可能にするように努力することもないのであるが、一念をこらすことで、自分の力を最大に生かすことができることを例示しているところである。
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